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複雑・ファジー小説
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- トーキョー百鬼夜行
- 日時: 2017/01/28 08:46
- 名前: 海面を漂うワカメ (ID: zKALihrN)
「神も仏もないけれど、どうやら妖怪は居るらしい。」
・けっこう暗め
・不定期更新
- Re: トーキョー百鬼夜行 ( No.1 )
- 日時: 2017/01/28 19:22
- 名前: 海面を漂うワカメ (ID: zKALihrN)
鈴谷 影良(すずたに えいら)は辺りを軽く見回すと、スクールバッグの中にCDを忍ばせた。
レジを通るつもりはない。俗にいう万引きである。
影良がこんな行動をとるのは初めてではない。
現在17歳の彼女は、中学三年生の頃から、月に一回のペースで万引きを繰り返している。
捕まったことは何回かある。けれど、行動を反省したり改める気はない。
そうして、何食わぬ顔で店を出た時だった。
「ちょっと、お嬢ちゃん」
ガシッと、後ろから肩を掴まれた。
驚きながら振り返ると、私服であろうパーカーを着た、二十代くらいっぽい男の人。
髪は所々に金色のメッシュの入った茶髪。顔は結構イケメン。
「今、お店の物、お金払わずに持ってったよね」
「…っ」
「そのカバンの中でしょ。…今なら俺が返してくるから、ほら」
「……」
「…あのさ、お嬢ちゃん」
男は影良の目をしっかりと見つめ、真剣な顔で言った。
「君、このままだと良くないよ。全部失う」
「…は?」
「誰も見てないと思うな。【目】が、見てる」
百の目が、と、彼は続けた。
そんな彼の手を振り切って、影良は駆ける。
「あっ、おい!!」
後ろから呼びかけられたけれど、振り返らずに家まで走る。
「……何だったのよ、あいつ」
住んでいるアパートの前に着いた後、影良は息を整える。
_【目】が見てる。百の目が。
「…くだらな」
そう呟いて、アパート前のゴミ捨て場にCDを投げ入れ、影良はアパートへ帰った。
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