複雑・ファジー小説
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- シークレットガーデン-椿の牢獄-[完]
- 日時: 2017/10/13 09:21
- 名前: 姫凛 (ID: nj0cflBm)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16274
▼━━━━−−ご挨拶をば 】
おはこんばんにちは、姫凛(プリン)と申します。
御観覧ありがとうございます(*´ω`*)
この作品は「シークレットガーデン〜小さな箱庭〜」の「第四章 監禁・脱走」を○○さま目線の物語です。
この物語にはあるお方のネタバレ要素が含まれています。お手数ですが本編第三章にある選択肢[後をついて行く]を見てからを強くお勧めします。
※URLをクリックして頂ければ本編に飛べるようになっております。
最初に言っておきます。この物語では人がお亡くなりになります。グロイ描写などがありますので苦手な方はご注意くださいませ。
[ある乙女の淡い恋心にキュンキュンしすぎ要注意!]
▽━━━━−− -椿の牢獄- 】
[登場人物>>01-03]
「prologue>>04
「紅き鎧の騎士の日常>>05」
「メシアの生き残り>>06-08」
「恋愛相談>>09」
「黒い企業>>10-11」
「終焉の刻」>>12-14」
「一気に読みたい人へ>>01-14」
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.5 )
- 日時: 2017/09/12 17:19
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: PCEaloq6)
ドルファフィーリング。我らの王バーナード様が作り上げた企業。
表向きには食品、不動産、旅行サービス、孤児院の経営、地域振興などを行っている総合企業という事になっている。
我もまた表舞台では、極度の人見知りで恥ずかしがりやなムラクモとして、ドルファのぼでぃーがーどなるものをやっている。
具体的には何をする仕事なのか聞かされていないが、重要人物を見張って暗殺者に横取りされないように見張り守ればいいらしい。
裏の仕事。本来の仕事では、殺し屋・暗殺者・始末屋。様々な呼ばれ方をされるが、ようは王にあだなす厄介者をこの世から消す。単純な仕事だ。
今日も新たな獲物を捕まえた。
長年王自ら探し求めていた、メシアと呼ばれる種族の最期の生き残りの一人。ルシアという名の少年だ。
ドルファ主催のぱーてぃなる茶会に誘われ、のこのこやって来たところを睡眠薬入りのじゅーすなる飲み物で眠らせ、ここ椿の牢獄に捕らえておくことになった。
我がそう王に頼んだのだ。此処ならば自身の目でじっくり吟味することが出来るから。
メシアの少年と出会ってから少し調子が悪いのだ。
無意識にため息をつき、胸がもやもやとして気持ちが悪い、食欲があまりなく普段なら十人前なぞ軽く食べれていたのに、最近は一人前を食べるのでやっとだ。こんなことは初めてだ。
…奴に可笑しな病気でもうつされてしまったか。
「起こさんよーに慎重になぁー。ん?どうしたんや、叢ちゃん?」
あまり感じていなかったがどうやら、長い時間考え事をしていたようだ。時計の針が進んでいる。
そして見たくもない眼帯親父の顔が目の前いっぱいに占領されている。相変わらずこの男の顔は、見るに堪えないな。
なんでもないと言ってロックスの横を素通り。
「少し汗をかいた。風呂に入る」
「あっ、そうか。ほんじゃ、こいつはわしらで片づけとくわ」
「あぁ。頼んだ」
メシアの生き残りことはひとまずロックスの奴に任せておくことにしておこう。
煮ても焼いてもくえない奴だが、腐っていても一応は、ここ椿の牢獄の看守長。頼りになるとき…なぞ待ってられん。今すぐにでも役に立ってもらうことにした。
椿の牢獄で用意された自室へと向かう。
そういえば、ここに来る者皆口をそろえて此処は入り組んでいるから迷子になる。嫌いだ。などどぬかしていたな。我からすれば地図を見ればいいだろう、と言いたくなるものだ。
看守長に置かれている椿の牢獄の設計図。あれを見れば一目瞭然というもの。仕組まれているからくり仕掛けも全て記載されているのだから、それを利用すればいいだけの話だ。
敵に利用されたならば終わりだがな。
「着いたか」
考え事というのはいかん。あっという間に時がすぎてしまう。
【ワシと叢ちゃんの愛の巣】などと書かれたプレートをへし折りつつ、指紋認証で鉄の扉を開き中へと入り、王から頂いた。心を鬼にすることが出来る秘密道具、般若をかたどった面を机にそっと置て、そのまま脱衣所に向かい初陣を頑張った褒美にと王から頂いた血で紅黒く染まった鎧を脱ぎすて、しゃわーるーむなどと変な名前の箱型の湯船へ入る。
「そういえば…前にロックスの奴が」
我の自室はシンプルすぎるとやんやん言ってきたのを不意に思い出した。
寝床と獲物(武器)とそれを整備する道具、そして乾かし干物にした肉や魚の携帯用食品と必要最低限着替え。それ以外に何が必要だと言うのだ。逆に聞きたいものだ。
奴の部屋は我の隠し撮り写真で部屋中埋め尽くされている。…あれはさすがに引いた。
全ての写真を無に帰し、奴も無に帰そうかと考えたほどだ。
そうえば他の奴らはどうだっただろうか…一度入った入らなかったかの他の奴らの自室風景を思い出すために施行を巡らせる。
ザンクは確か無数のナイフを置いていた。どれも血がべったりと付き、乾いて錆びていた。ちゃんと整備してない証拠だ。あれではもう使い物にならないだろう。
ユウは本が山になっていた。皮肉で少々子供っぽい性格の奴が広辞苑など分厚い本を沢山持っていて驚いたのを思い出した。あと本の山が崩れて生き埋めになっていたのを。
ナナはよくわからない骨董品などが並べられていた。どこぞの国の国宝だそうだがそういったものに一切興味のない我からすればよくわからない代物だ。
エフォールはテント暮らしだから我とそう変わりはないだろう。
ロザリーはぴんくのふりるとかおひめさまという生き物を模した部屋にしていると本人が熱く語っていた。難解すぎる内容だったため子守歌かわりに聞いていたのを思い出した。
うむ。皆の部屋と我の部屋そう変わりはなにな…と独り、流れ出る滝の如くしゃわーなるものにうたれていると
「叢ちゃ〜ん、ちょっとえぇ〜かぁ〜?」
「ッ!!?」
この気だるく腹が立つような声は…ロックスかっ!?
足音は真っ直ぐしゃわーるーむの方へ向かって来る。我が入浴していると知っていながら、あえて入って来たなっ。
奴は俗に言う変態と呼ばれる種族だ。何度我に肉体関係を迫られたことか……考えただけで吐き気がする。
ロックスを懲らしめるくらいわけない。獲物なし、素手で十分だ。…だが、さすがに今の恰好で戦うのはちょっと…たじろいでしまう。
「叢ちゃ〜ん?」
「な、なんだっ!?」
しゃわーるーむもすぐ外からロックスの声が聞こえる。もうこんな近くまでっ。
どうするっ。ここはもう開き直って、全裸で相手を…
「あ、まだ風呂やったんか?」
なにを白々しい。知ってて入って来たくせに。
まあいい。今の奴はこれ以上、入って来る様子はない。ここはひとまず様子を見る事にするか。
「そうだ。だから帰れっ」
「そない、冷たい事いわんといてな〜。昨晩は一緒に燃えたやないか」
「そんな事実ない。他の女と間違えているのではないか?」
「あっれ〜?」
あれではない。全く、どうして雄はこうも阿呆ばかりなのだ。いや同じ雄でも我が王違う。あの方は気高く高潔なお方、そしてあのルシアと言う少年もまた……
「って、我は何を考えているのだっ!?」
「あ〜? なに〜?」
メシアの生き残り敵だぞ! 今はいいがいずれは殺さなければいけない対象。
え? 殺さなければいけないの…?
「だあああああ!!」
いくらこの先、我を楽しませてくれそうな強者になりそうな逸材であったとしてもだ。我らの王。バーナード様の願いを叶える邪魔になりゆえる芽は早めに刈り取らなければならないのだっ。
「叢ちゃ〜ん?」
しまった! メシアの生き残りのことを考えていたらロックスの声が先程よりもずっと近くに聞こえるぞっ。
「ロックス、貴様それ以上こちらに入ったら殺すぞ!」
「おっと」
足音が離れていく。まったく…油断も隙もならない男だ奴は。
滝のように流れ出るしゃわーを止めて脱衣所に向かうと、ない。ないのだ。大事に脱いで置いておいたはずの、紅い鎧がないのだ。
「あっ、鎧はしまわせてまらったで」
「なにっ!?」
まるでたいみんぐを計ったかのようにロックスが答えた。まさか覗き込んではいないだろうな…?
たとしたら殺す! 二秒で殺す!!
とゆうのは後にするとして、さっきだっての問題は鎧だ。鎧がなくては裸で表に出なくてはいけない。それは……・別の意味で死ぬことになろう。
「安心し、その代わりに洋服置いてるから」
別の服だと? 改めて脱衣所内を探してみると、あった。別の籠の中に表舞台でムラクモとして活躍するときに着ている衣装が綺麗に折りたためられていた。
分からぬ。なぜロックスの奴は鎧を盗み、代わりにこの衣装を置いたのだ? 解せぬ。
「叢ちゃん、イカンよ?」
本当にたいみんぐのいい男だな。
「ずっと重たい、鎧着て気をパッツンパッツンに張っとたら疲れるやろ?
たまにはラフな格好してラクにせな」
鎧を着て疲れたことなど一度もない。むしろ今こうして貴様の相手をしている方が何百倍も疲れる。
逆にそのことについてはどうしてくれようか…。と怒りに震える拳をおさえ、用意された衣装着替え脱衣所を出ると、待ってましたと言わんばかりに縞々とらんくす一丁のロックスが手をわきわきさせながら嬉しそうに
「よしゃ、綺麗になったとこで、ベットイコか!」
と飛び上がり襲い掛かって来たのでここは、先ほどの怒りを思い出し
「行くかーーー!!」
「ムギャーーー!!」
奴の股間をふぐり蹴り飛ばしてやった。股間を抑え、悶え苦しむロックスを部屋に捨て置き後にする。自業自得だ。
自室を出るとすぐにエフォールに呼び止められた。
「……殺殺殺殺」
ザンクとユウとあのメシアの生き残りが運ばれた部屋へ様子を見に行くらしい。きっと話の論点がずれにずれ、最終的に殺し合いに発展するだろうからその審判兼仲裁係りに我も参加しろとの事だ。
いつから我はお子様の世話係となったのだ。今は何も仕事が入っていないことだし、久々お子様たちの顔を見るのも悪くはないだろう。
「わかった。行こう」
「殺殺殺殺殺殺殺殺」
着いて来てというエフォールの後をついて行く。
このままついて行けば、メシアの生き残りが眠っている部屋へ辿り着く。眠っている…寝ているのか…奴の寝顔はどんな顔をしているのだろか。
可愛い系? それとも癒し系だろうか……
「って、だからなにを考えているんだっ我はーーー!!」
「殺?」
メシアの生き残りと出会ってから調子が本当に悪い。特にあの美しい満月の夜を共に過ごした辺りから拍車をかけて……悪くなって……顔が熱い。
やはり一度、医者に診てもらった方がよいのかもしれぬ。可笑しな病気、特に注射針を刺すような事にだけはなりませんように……心から祈ろう。本気で。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.6 )
- 日時: 2017/09/19 17:11
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: eK41k92p)
「アンタも来たんだ?」
エフォールに案内されるまま部屋に入ると最初に聞こえたのは子供の皮肉。声の主は同然ユウだ。
ユウの向かい側には、だいぶ待たせたしまった事が癪に障ったのか、ザンクが苛立ちを露わにして今にも暴れ出しそうな勢いだ。
「待たせてすまない」
対面上謝っておく。詫びの言葉一つとってもいれるか、いれないかで大きな違いがでてくるからな。
そもそも他人なぞに興味がないユウは「あっそ」と軽く受け流す。短期で血の気の多いザンクは
「オレ様は待つのが嫌いなんだ。次遅れたらどうなるかわかってんだろうなぁ?」
と喧嘩を売ってくる。そんなもの買う愚か者が何処にいる。
「なにそれ? 自慢?」
「あぁ?」
此処にいた。案外すぐ傍に居た者だ。愚か者が二人も。
こうなることが解っていた方エフォールも我を呼んだのだ。やめろと愚かな二人に言う。ちっと舌打ちをして二人は背中合わせにし真逆の方向を向き合った。……まったくお子様の相手は疲れるだけだ。
ザンクとユウの二人は顔を合わせるとすぐに喧嘩を始めてしまうところがある。
荒くれ者と皮肉屋。正反対で似た者同士の二人では馬が合わないのだろう。放っておけば勝手に潰し合だろう。だがそれは王の望むところではない。
だから仕方なく我が仲裁する羽目になるのだ。とても面倒くさいことだが、王の為ならば致し方無い。
はぁ…とため息をつき下を向くと、メシアの生き残り寝顔が…綺麗だ。雄に対してこの言葉を使うのはあまり適切ではないのだろうか……でも、とても綺麗な寝顔だ。
「殺?」
「い、いや、なんでもないっ」
い、いかん。エフォールに様子をがおかしい事を勘づかれてしまった。
綺麗な寝顔と言えど、奴は敵! メシアの生き残りは殺す対象!
緊縛とした雰囲気でよからぬことを考えているなど、緊張感が足りぬ証拠だ。我も精進せねばな。
「ギャハハハッ!まさか、こんなに簡単に捕まえられるとわなぁ!!」
嘲るザンク。奴の笑い声は頭の中がキーンとしてとても耳障りな声だ。
「黙れ、ザンク。起きたらどうするつもりだ?」
そうだ、ユウの言う通りだ。こんなに綺麗で素敵な寝顔が見られなくなったらどうしてくれよう……ではなくて、だっ!
メシアの生き残りが起きて、今の我の姿を見られたらどうしてくれようか。正体がばれるようなことになれば、本当に殺さなければいけないことになってしまうではないかっ!
いやいや…そうではなくって王の計画が台無しになってしまうではないか! そう。そうゆことなのだっ。
「あぁ? 起きたなら殺せばいいだけだろぉ!?」
ザンクは高らかに笑う。確かにそうだな。いつもならザンクと同意見だ。だが今回は駄目だ。
メシアの生き残りに限ってはそれは許されないのだ。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.7 )
- 日時: 2017/09/16 13:56
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: yrys6jLW)
「…殺殺殺殺殺」
繰り返し同じ言葉を言うエフォール。我には分かる怒っている。隠す気のない殺気だだだ漏れだ。
もちろんその殺気の矛先は
「あ゛?」
血が足りず喉が渇いた獣。ザンクに対してだ。
イライラとした表情でエフォールを睨み付ける。それに同調しユウもまた
「ホントッ、愚か者が一人いるダケで困るんダケど」
「なんだと…ユウ」
見下したように睨み付け人を小馬鹿にしたような口調でザンクに喧嘩を売った。
短期で単純な奴らだ。喧嘩を売られれば簡単に買い。
場所も時も関係なく喧嘩、いやただの殺し合いを始め潰し合う。
「王に言われているダロ。メシアの生き残りはまだ殺すなと」
「知らねえなー! オレさまはオレの殺したい奴を殺したい殺すだけだぜっギャハハハハッ!!」
愚か者が。
我らの肉体もそれに流れる血も魂も全ては王のもの。バーナード様に捧げた、王に使える駒だ。
それが王の命に背き己の意思で行動するなど笑止千万。
「殺殺殺殺殺殺殺…」
「つーか、エフォール!殺殺うるせぇ!!」
「…殺」
緊迫とした空気、一触即発。誰かが動けば、試合のごんぐが鳴らされるだろう。
我、そして眠るメシアの生き残り、椿の牢獄で働く従業員もろとも塵となるだろう。
「………やめろ」
「「「ッ」」」
貴様らが勝手に潰し合い、殺し合い。誰が巻き込まれ、誰が負け死のうが興味ない。
だがメシアの生き残り。ルシアを巻き込んで行うと言うのならば、我も参戦しよう。主ら全員、天へも地へも行けず永遠に現世を彷徨う生き地獄を味合わせてくれよう。
殺気に満ちた狂気で威圧すると、三人は大人しくなってくれた。そうか、分かればいいのだ。我とて無駄な動力を使いたくはないからな。
空気も鎮まった。ならばここはひとつ話の内容を変えるべきか。昔このようなことが起こった時、紫龍様は話題を変えることで指揮をとられていた。
話題…か。闘いしかしてこなかった我に、この場に適した話題など振れるのか…?
こむ、そうだ。コロシアムの話はどうだろう。ドルファが経営二大娯楽施設のカジノとコロシアム。コロシアムはユウの管理下。そしてザンク、エフォールのお気に入りの場所。うむ、きっとこれが一番の話題と言えよう。
「ユウ」
「ナニ?」
せっかくの殺し合いを邪魔されたことに不機嫌な表情のユウに
「コロシアムの景品はどうなった」
に景品の話を振ってみたのだが
「ちゃんと用意しましたケド」
不機嫌なままだった。なにか間違えたのか。
いや間違えてはいないはずだ。ザンクとエフォールの瞳が輝いている。
景品がなにに決まったのか興味深々と言った顔だ。
「殺殺殺殺殺殺殺」
「誰だって? あの競馬大会で荒稼ぎしてた雌豚だよ」
競馬大会で荒稼ぎしていた雌豚だと……?
なぜ馬のれーす会場で豚が優勝する。いや出来たのだ? 馬ではなく豚のれーすでも行われていたのか? それの優勝者が雌の豚?
もうひとつ気になるのは何故わざわざ雌豚と呼かということだ。豚は豚だろう。雌も雄もいるが所詮豚は豚。
雄でも雌でも食用肉であることに変わりはない。肉に何故一々雄だの雌だのつけて呼ぶのか我には全く理解できないことだった。
「あーーー!! 殺したりねぇーー!! オレ様もコロシアムで殺しまくりたいぜぇ! ギャハハハッ!」
豚のことを考えていると、突然ザンクとが発狂した。
気持ちは分からないでもない。この症状はドラゴンネレイドなら皆起こるもの、無性に血を浴びたくなる時があり、喉が無性に乾いてしかなのない夜が訪れるのだ。。
我はバーナード様が用意してくださった、血液をパックしたものを飲むことで衝動を抑えるようにしている。が、見る限りザンクは欲望のまま狩りとった新鮮な血で喉を潤しているようだがな。
「ふんっ、ボクはアンタみたいに遊びでやっているわけじゃないんだケド」
「殺殺殺」
「あぁ゛? オレ様に命令する気かぁ? 雑魚ふぜいがぁぁぁ!!」
「ボクと殺ろうっての」
「殺!」
またこうなるのか、これで何回目だ貴様ら!
一触即発の空気、三人共いつでも戦闘出来るように身を構えて、今か今かと待ち構えている。
本当に手間のかかる同僚たちだ。血の気が多いことはいいことだと思う。が、多すぎて他人に迷惑をかけるのは好かん。
どうしても戦いたいと言うのならば、我がいつだって相手をしてやると言っているのに……何故誰も我には仕掛けて来ないのだっ!!
と、いかんっ、放しがずれてしまった。まずはこの場を納めなければ…
「…やめろ」
「「「…叢」」」
三人は武器から手を離した。ひと段落か。これで少しは大人しくしておくだろう。
それにしても……と寝具の上に眠るメシアの生き残り、ルシアに視線を向ける。
綺麗な寝顔。見ているだけでこれまでの苦労がすべて水に流されていくような癒され感。こやつの寝顔を見ていると、胸の中にあるざわざわがなくなり心地良い気分になる。
「殺?」
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.8 )
- 日時: 2017/09/19 16:57
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: eK41k92p)
「殺?」
「ああ゛」
「エフォールがナニカを気にするなんて珍しい」
…確かに。いや一緒になって納得している場合ではないっ。
この場に居る誰よりも勘が鋭いエフォールのことだ。我が脱線しているのを見抜いているのだろう。
自分自身でも何を考えているのかよく分からん。仕事に支障をきたすのはよくないと、人に言える立場でないのは我の方であったか。
軽く首を振り頭の中を整理する。
我の仕事はなんだ? 目の前に横たわるメシアの生き残りが逃げないように見張る事。
王にあだなす若葉なら早急に摘み取らねばならぬ。気持ち? 意思など我には存在せぬ。我は叢。
—般若の面をつけた紅き鎧の騎士、叢なのだから。
「…ふぅ」
「殺殺殺殺」
礼を言うぞ、エフォール。貴様のおかげて整理がついた。これでもう大丈夫だ。
三人に顔を向け解散するときに言ういつもの台詞をはく。
「休憩は終わりだ。王の為にその身を粉にして働け」
舌打ちし睨み付け不機嫌極まりないザンクを見てさらに不機嫌そうな顔をするユウとエフォール。
我らの仲は最悪。仲良しこよしなどありえない。だが、戦場の上では背中を任せられる心強き見方だと我は思う。やつらはそうは思っていないようだが…な。
「これで…この部屋にはいる者は……」
我と横たわるメシアの生き残りだけ。
自然と視線は下に向く。
「スー」
何度見ても、見惚れてしまいそうな美しく綺麗な寝顔だ。
「………ッ我は何をしているのだ!?
自分でもはっとする。
気づけばルシアの……いや、メシアの生き残りの頬に手を添えていたのだ。
「……」
よかった…まだ寝ている。起きてはいないようだ。
もし起きていて我の姿を見られていたら……考えただけで不快な気持ちになる。
敵相手に変な感情を起こすなど、何を考えているのだ……やはり変な病気にかかってしまったのだろうか……頭痛がするようだ。
「少し外に出て新鮮な空気でも吸うとするか」
重く痛い頭を抱え、頑丈そうに見えるが経費の都合で張りぼてで作られたドアを開らき、新鮮な空気を求めて部屋の外に出て行った。
—この時、我は知らなかった。まさか、メシアの生き残りがもう目覚めていて我らの会話を盗み聞きしていたとは。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.9 )
- 日時: 2017/09/26 14:48
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: 6/JY12oM)
メシアの生き残りであるルシアを監禁した部屋から出た後、廊下に長椅子が均等に置かれた空間、休憩室とでも言うのか。
そこで腰を下ろし少し休憩していると、懐に入れた手のひらサイズの四角い機械が振動し始めた。
「な、なんだっ!?」
バーナード様から遠くいる相手と音声で連絡が取れる小型の機械だと言われ渡されたこの機械……嫌いだ。
何故連絡を取り合うためだけにこんなものを使わねばならない。連絡を取りたいのなら、伝書鳩で十分ではないかっと昔抗議したことがあったがバッサリと切られたな。
使い方がよく分からないため我がこれを使って連絡をとることはない。いつも特定の人物が嫌がらせの意味を込めてかけてくるのだ。
かけてきた通信相手の名前が表示されているでぃすぷれいにはロザリンドの五文字が。
「明日世界が滅ぶのか」
「なによっ、それーー! !叢笑えない冗談はやめてちょうだいっ!!」
通信に出てみれば、案の定甲高い声が頭の中に鳴り響き痛い。こいつと話すときはいつも頭痛に悩まされるのだ。
五月蠅い蠅だ。
「それで用はなんだ」
「あっ。そうよ、用があって通信したんだった」
「……切るぞ」
「ま、待ちなさいよ!」
本当にこいつは何がしたいのだ。全く理解できない。謎の生命体Rだ。
さっさとこんな不毛な会話切り上げて終いたいのだが、切るなと五月蠅いので仕方なく繋げたままにしておくとする。
「アナタ最近調子に乗ってるでしょっ!?」
「はぁ?」
また何を言い出すのだこのお子様は。
いつ、いかなる時に我が調子に乗ったと言うのだ。ただバーナード様の命に従い任務を着実にこなしているだけだ。それを奴は調子に乗っているとでも言いたいのか。
「とぼけんじゃないわよっ!!」
「どぼけてなどいない。貴様の勘違いだ」
「勘違いなんかじゃないわよ! アナタ。メシアの生き残りっての捕まえて調子に乗ってんのよっ!
だってメシアの生き残りと言えばバーナード様が何百年もかけて探し続けていたものなんだからっ
さてはそれを捉えて、バーナード様の正室になろうって魂胆ね!?」
……こやつの妄想能力は目を見張るものがあるな。
どうしたらそこまで話を大きくすることが出来るのだ。何故我がバーナード様の妻にならなければならない。
あのお方は使えるべき主であり、我のような若輩者がお傍で使えるなどなんで勿体ないことか。
と、いうことをロザリンドに伝えたところ
「そ、そうよね…。そんな姑息なマネを今更しなくても、もうすでにアナタはバーナード様の側室ポジをゲットしている」
まだ何か大きな勘違いをしているように見えるのは我の気のせいだろうか…。嫌な予感しかしないのだが。
通信端末の向こう側から聞こえるロザリンドの声はどんどん小さくなっていき、声が聞こえなくなってきている故障でもしたのか?
五月蠅いからと耳から離していた通信端末を耳へ近づけようとしたその時、
「ムラクモさーん」
不意に誰に後ろから肩を叩かれたのだ。
これは後から気づいたことだが、何かを察したロザリンドがこの時、通信遮断したようだ。本当に勘だけは良い女だ。
「ひゃぁぁぁ!!?」
「わぁっ!?」
不覚にも後ろにいる人物を幽霊だと勘違い…げふんげふんっ。怖がってなどいない。ただもう死んでいる幽霊とやらとはどう戦えばいいのか分からないから警戒していただけだ。
だから後ろにいる幽霊を殺そうと……。あっいや幽霊はもう死んでいるのだった。
ええい八つ裂きにしてくれるわぁぁっ、と驚いたふりをして際に出た二がこの声なのだ。
決して怖がってなどいないのだ、って我は誰に対して弁解しているのだ…?
「…ぁ、あぁ…ルシア様」
良かった…幽霊じゃなかった……って一安心している場合ではなかないっ!?
何故監禁し薬で眠らせていたはずのメシアの生き残りが、今我の目の前に立っているのだっ!!!? しかもちょっと頬を赤らめ嬉しそうな顔でっ。
そんな顔を我に向ける出ないっ馬鹿者がっ!!
「ご、ごめんなさい! 驚かせるつまりはなかったんです。ムラクモさんを見つけたからつい…」
奴の言動を見る限り、どうやら我が叢であるとゆうことはまだ気づかれていないようだ。良かった。本当に純粋で疑う事を知らぬ、愚か者なのだな。敵の領地に捕まっておきながら我を敵だと一切疑わないなど…。
何故だろう。こやつの純粋な瞳を見ていると胸の奥がきゅ〜うと締め付けられるように痛い。やはり何か悪い病気にでもなってしまったのだろうか…。
「…ってまたですねっ」
えへへと照れ笑うルシア。
なんの話だ、と最初はよく分からなかったが思い出した。あの美しい満月の夜の事を言っているのだろう。
あの夜の月は本当に綺麗だった。今まで見た月の中でも一番の月だった。
そしてあの月を見てからだ、我の調子が可笑しくなり始めたのは。
「そ、そうですね。たしか前にもこんなやり取りを…」
ここは相手に合わし適当に受け流しておくとしよう。
頃合いを見てまた気絶なり眠らせるなりして、監禁部屋に連れ戻すとしよう。
「あっ、こんなところで笑っている場合じゃ、なかったんだ!ムラクモさんっ」
「は、はいっ!」
と、考えていたのにこやつはな、なななななっなんなのだぁぁぁ!!!?
いっいきなり我の手をがっちり両手で包み握りしめ、真っ直ぐな瞳がすぐち、近くにっ!!
ま、まままままっ、まさかこのまませ、接吻をしようとでもいうのではないだろうなっ!!
まだ誰ともしたことのない、初めての接吻が……
「ここは危険です。一緒に逃げましょう!」
「へっ?」
思考が一時停止した。
「とにかく、一刻も早くここから逃げましょう!」
今起きているこの状況を理解しようと、何度も思考を巡らせるが一向に理解できそうにない。と、いうより無理だ。我には難問過ぎた。
メシアの生き残りは我の手を固く握りしめたまま、強引に引っ張りどんどん通路の奥へと進んで行く。
あぁ…待て…そっちは貴様を監禁していた部屋ではない。反対だ、戻れ、引き返せと心の中でつぶやくがその声はルシアには届かない。
どうして我は高揚しているのだろう。
何故、ルシアがここから連れ出してくれると思うとこんなにも 胸が高鳴るのだ 何故_?