複雑・ファジー小説

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異能力者を全て消すまでは。
日時: 2017/02/15 19:35
名前: 無田 (ID: CjSVzq4t)


この世界にはいくつもの異能力がある。それを使える者を異能力者という。普通の人間に見えてもソレを使えば普通の人間からすれば〝予測出来ない存在〟〝化け物〟だ。容易にソレを見せず使う者は多くいて使わない者もいる。それ故に彼ら、彼女らを普通の人間で見つけられる者は少ない。このことから、異能力者がいる、ということを信じる者は多くない。

「まぁ、信じてくれない方が異能力者達にとっては都合が良い」

信じてそれらを受け入れる者は少ない。
人間は自らより強いものに恐怖し拒む。

ソレを持っている者が見つかれば世はどうなる?
気にせず日々を過ごせるか、いつも通りの日常をおくることができるか、考えてみるといい。

何もソレを持って産まれてきた彼ら彼女らに幸福があるかどうかは知らないが、普通の人間と普通の暮らしをするのにはソレはきっと邪魔にしかならないだろう。

ソレを持ったが故に幸せではないと感じる彼ら彼女らに、少しでも普通の生活をおくれるようにしてあげるのが俺の役割だ。

さて、そろそろ彼が起きる時間だ。では、また。

Re: 異能力者を全て消すまでは。 ( No.1 )
日時: 2017/02/15 19:56
名前: 無田 (ID: CjSVzq4t)

俺にも能力がある。それは異能を持っている者にしか役にたたないことを知った。このことを知るのにもとんでもない時間をかけたものだ。

普通の人間には効果が無いみたいだし、そんなに不便じゃなかった。

けど、持ってるって知ったらもっと知りたくなった。わかったことはいくつかある。
能力者は自然と集まること。これは面白かった。そういう学校や施設がある訳じゃないのに自然と周りにいたのが能力者だった。

さて、話を戻すと、能力者が集まればどうなるだろう。

俺みたいに普通の人間には効果のない能力があったとしても、効果のある能力なら?全てそれが良い方向に使える能力なのか?攻撃的な能力だとしたら?

俺だって普通の人間と同じだ。怖いものは怖い。でも、殺意は抱かない。ソレを無くせば普通の生活を彼ら彼女らおくれるだろ?一件落着だ。

「申し遅れました。俺の名前は無田むたです。ただいま、有魔ゆまと呼ばれる彼と行動を共にしています」

俺の目標は、この世界から異能力を全て消すこと。
俺の能力は、能力を抹消するというもの。方法は、背中を上から下へ撫でて、心臓の辺りを後ろから平手で思いきり叩くこと。痛いし、正直可哀想ではあるけど、これ以外方法はわからない。

彼なら知ってるかもしれないけど、なかなか教えてくれないからな。
俺の目標を叶えるには少なくとも彼は必要である。そう思った俺は彼と一緒に行動している。

これからは彼の話をしよう。

Re: 異能力者を全て消すまでは。 ( No.2 )
日時: 2017/02/15 20:11
名前: 無田 (ID: CjSVzq4t)

彼も異能力者であり、それを軽快に使いこなして生きている。年齢は分からないが若い青年に見える。

彼の能力は、保管する能力、かもしれない。異能力者が亡くなった後、彼ら彼女らから持っていた能力を奪い取り、別の者へ渡す作業を彼は仕事と言い、毎日それをやっている。
渡すまでは彼が自身に保管しているために、彼自身もそれらを使うことが出来るらしい。多く保管していれば複数の能力を使えると彼は言う。

短めの金髪に大きめのサングラスをかけて、華奢な体で脚力が凄い彼。
能力者が見える能力を預かり、それを使って亡くなる前の彼ら彼女らに一応許可もとるらしい。

意外としっかりした仕事なのかもしれない。それを誰に教わったかは謎だが、もし彼が多くの能力を保管したとして、俺が彼の能力を消せば大幅の能力は消せるかもしれないと俺は単純にそう思った。

その時は俺も彼に能力のことを話さないといけないのかもしれない。

それまでは彼と行動を共にしようではないか。

Re: 異能力者を全て消すまでは。 ( No.3 )
日時: 2017/02/15 20:30
名前: 無田 (ID: CjSVzq4t)

「お前、朝からなに喋ってんの?」

只今午前10時。彼は寝るのが遅い分、朝も起きるのが遅い。彼は寝れれば何処でも良いらしく、今も場所は大人の来る場所であって、寝るためだけにここを借りた。男2人で入るのは流石に、と初めは思っていたが、彼と行動を共にしているうちに慣れた。
彼はここが静かで照明も丁度いい明るさに出来てベッドも心地良いからと色々なラブホと呼ばれる場所を訪れた。共通点もあれば、新しい発見もそこではあったが、女の縁のない俺の人生に必要と言えるものは少なかった。

俺がベッドで喋っていると起きたみたいで隣にいた彼は不快そうに顔を歪めて欠伸をした。

「昨夜は何時に寝た?」

「あー4時」

「それはもう朝だ。まだ寝てろ」

「いや、もう目ェ覚めたから」

そう言って彼は被っていた布団を剥いでベッドから抜け出せばベッドサイドのテーブルから愛着してる鞄を肩から斜め掛けして出掛ける準備が整ったようで、サングラスをかけた。

「今日はどこだ?」

「この近く」

彼がすぐに移動することはこの付き合い三年で分かっている。だから出掛ける準備はいつもしてある。俺に何も言わずに部屋を出ていく彼の後を追い、彼を見失わないように離れ過ぎず歩いて質問をする。彼は彼の仕事のことになると短くしか返さない。

「見つけた」

ビルとビルの間を見つめて足を止めた彼にぶつかりそうになって、ギリギリで止まって1歩下がれば、そんなことも気にせず彼は一言呟く。
彼の視線の先には体格の良い男二人が中学生男子1人をカツアゲしていた。

彼は三人の元へと足を進め、ビルの暗がりへと入って行く。俺も後を追った。

Re: 異能力者を全て消すまでは。 ( No.4 )
日時: 2017/02/17 22:39
名前: 無田 (ID: XWukg9h6)

こういうときって、漫画やドラマとかでは中学生男子1人が彼の目的の人物だと思うが、実際は違うみたいだ。彼は中学生男子1人をカツアゲしていた体格の良い男の1人に声をかけた。

「おにいさん、楽しい?」

「なんだ、このガキィ」

「ああ、安心して?警察に連絡はしないよー?」

「ああ?!」

「おにいさんに、プレゼント!」

彼が声をかければ、男は彼の胸倉を掴んで引き寄せる。顔が怖いのはあるけど、こういうのって距離が近いことに本人達は気づかないのかと俺は疑問に思う。俺はこういう時に間に入ろうとはしない。彼の邪魔は出来ないし、する意味は無い。彼が殴られたとしても俺は彼を庇って自分が傷を負おうとは思わない。俺にとって彼は、ただの道具みたいなものだからな。
俺の目標が達成出来れば彼は抜け殻、用済みでしかない。彼は今のサッパリとした無慈悲な俺を気に入っている。俺はそう思う。俺が着いていても何も言わない。無言は肯定だ。
彼は胸倉を掴んできた男に笑顔で手から花束を出して男の目の前に突き出す。

「ナメてんのか、この野郎!!」

「わあ!おにいさん、すっごーい!」

怒りが増した男は花束を突き出した彼の手を手で叩き払い、彼に殴りかかろうと拳を突き上げれば、男の手が緩んだ隙に抜けたようで、振り降ろされた拳を難なく躱す。男が拳を振り下ろしたと同時に男は着ていた衣装を変えた。
マジシャン、道化師のように。それを見た彼は嘲笑い、それを大袈裟に褒めた。

「おにいさん、そっちの姿の方が似合うよ?」

そこに居た学生も男とつるんでた1人も、当の本人である男でさえ、状況についていけず、目を見開いて驚き固まり、ケラケラ笑う彼を見て困惑しているのがわかる。俺も彼を初めて見た時は、頭のネジの外れたイカれた野郎だと思った。愉しそうに笑う笑い声が響く。それが怖いと思った。怖くて体が動かなかったのも覚えてる。今は大分慣れた。きっと、道化師の能力。そんなのがあるかとか知らないけど、彼が男に渡す前に彼がそれを持っていたのは花束を出した事で証明している。

「じゃあね」

三人に別れを告げた彼は振り返る。俺が彼を見ていたのもあって、彼が俺を見れば自然と目が合う。目が合うと先程まで笑ってた彼は不敵に口元を緩める。目が合ったのは一瞬だったが、何か企む嫌な笑みは変えずに足を進めて俺に近づいてくる。少し小柄な彼の頭を見つめれば、俺の横を通り過ぎる時に彼は立ち止まる。
どうしたのかと、彼をよく見る為に顔を彼へ向ければ右手を掴まれた。正確には握られた。右手の指を交差するようにスルリと彼の指がきて、一瞬でもドキッとする。いきなりされた慣れない行動に彼から離れようとすれば彼は俺の肩に擦り寄り、頭を傾け預けた。驚いて体が固まり、目を見開いて瞬きした。

すると、彼はすぐにスッと俺から離れた。急に淡白になることにも訳が分からず歩みを進める彼に体を向けて声をかけようとすれば、周りの景色が変わっていた。

Re: 異能力者を全て消すまでは。 ( No.5 )
日時: 2017/02/18 12:40
名前: 無田 (ID: XWukg9h6)

先程までは、ビルとビルの間である路地裏のような薄暗い所に居たのに、目の前にはコンクリートジャングルではなく、水平線の見える海が広がっていた。辺りを見回せばビルどころか高い建物が1軒も立っていない太陽の光を浴びて育った草木が高い岩壁を包む様に生えている。
プールなど要らない程綺麗に透き通った海は青くて目を閉じれば波の音が聞こえて、平和だと実感する。

先ほどとは全く違う場所にいることに、彼が何をしたのかはすぐに理解出来た。彼の持っている能力を使ったのだろう。俺にくっつくことで一緒に移動出来たことには感謝するが、俺が着いてきてもいいと言われているようなもので、内心嬉しくもある。心を開いて貰うことと同じなのだから。

海の近くに建つシャワー室のある建物へ足を進める彼の後を慌てて追った。


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