複雑・ファジー小説
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- トビラ。
- 日時: 2017/02/23 18:11
- 名前: 如月 (ID: OakzbDQq)
「っ…ぃや、…やめてよっ!」
「何よ、生意気ね。
貴方が心配だからしてることでしょ?」
「嘘…っ嘘つかないでよっ。」
「貴方…家から追い出されたいの?」
「…っ。」
「だったら生意気言わずに……」
「こんな家…!私からお断り!」
私は“必要な物”を持って勢いよく
家をあとにした。
- トビラ。 ( No.2 )
- 日時: 2019/01/26 11:12
- 名前: 如月 (ID: 6ARtc3ZP)
私の“必要な物”。
それは現金2億。
このお金はもともとおじいちゃんの物だった。
________________
これは私が9歳の頃。
「おじいちゃんっ
このポスターだれー?
かっこいいね!」
「ありがとうねぇ。
それ実はわしなんだよ。」
「えぇ?おじいちゃんテレビに出てたの?」
「そうじゃよ。わしは有名俳優だっだんじゃよ。」
「おじいちゃんすごーぉい!!」
「………。」
「…おじいちゃん?」
「紗菜。わしな…もう命…長くないかも
知れないんじゃよ。」
「…え?
おじいちゃん…死んじゃうって…こと?」
「……そうじゃよ。」
「なんで!!
死んじゃやだよ!!」
「それでな。
紗菜に預けたいものがあるんじゃがな…。」
「…何?」
おじいちゃんはすっかり曲がってしまった
腰をゆっくりとあげて
奥の部屋へと向かった。
「…こっちに来なさい。」
「…う…うん。」
そこはおじいちゃんのポスターが
沢山飾ってある“昔の自分”を閉じ込めた
ような部屋だった。
「…紗菜。
お金は使ったことあるかい?」
「…あるよ!
友達とね!お菓子買いにいったの!!」
「そうかそうか。
わしな、紗菜に2億円を預けようと
思うんじゃが…。」
「2億円!?いいの!?」
おじいちゃんはこくりと頷き
部屋のそれまた奥の部屋に案内してくれた。
「…紗菜。
ここを開けてごらん。」
「…ここ?」
「…そうじゃよ。」
…ギギィ…
「…!!」
言葉を失う。
見たこともない大金だったから。
「紗菜。この大金を紗菜に預けようと
思うんじゃ。紗菜のママには内緒でな。」
「…なんで?」
「紗菜のママはじゃな、お前達の物より
自分の物にお金ばかりかけてな…。
このお金は紗菜のママには何があっても
あずけられんよ。」
「…でも…こんな大金紗菜が隠してられる
かな??」
「この別荘も紗菜にあげようと思うんじゃよ。」
「…ほんと??」
おじいちゃんはゆっくりと頷いた。
「何かあった時はここに来なさい。
わしがこの世を去ったら
この別荘は潰したと言ってもらうからな。」
「…うん…」
「もしここへ来た時には
この人を呼びなさい。」
おじいちゃんは最近かえたスマホを
私に見せてきた。
「お手伝いさんの間さん。
後はな…。」
「…?」
「お前さんの本当のママの…
奈月さん。」
「…え!?」
「…間さんも紗菜の本当のママも
若いからわしが死んでからも
役に立ってくれるじゃろう。」
「…奈月…お母さん?」
「…そうじゃよ。」
「…電話しちゃ…だめ?」
「駄目じゃよ。
わしが死んでからじゃ。」
「……。」
_____________
その3日後。
おじいちゃんはまるで予測していたか
のように体調を急変させ
この世を去った。
その後おじいちゃんからもらった
“本当のママ”に電話をかけようと
したがやめた。
なんか…“今”じゃない気がして…
それに何より勇気が出なかった。
その後私はお母さんにバレることなく
2億円を隠しきった。
- トビラ。 ( No.4 )
- 日時: 2017/02/24 17:49
- 名前: 如月 (ID: OakzbDQq)
私は飛行機の中。
おじいちゃんの別荘に向かってる。
「…もしもし」
「…はい?
間ですが…どちら様で…?」
「桜ノ宮 紗菜です。
昔おじいちゃんがお世話になりました。」
「桜ノ宮様の娘さんですか!?
お久しぶりです。もしかして別荘に
お移りに?」
「…はい。来て頂けますか?」
家出だなんて、…言える訳がない。
「勿論です!何でもお申し付けくださいね。」
「頼りにしてます。有り難うございます。」
「いいえ、では失礼しますね。」
カチャ
間さんが優しい方で少しホッとした
所でもう一人電話するべき人を思い出した。
「…本当のお母さん…。」
震える手を押さえながらボタンをゆっくり
と押す。
………プルルルルル……
「…もしもし?」
「…あのっ…私…桜ノ宮 紗菜と申します。
奈月さんですか…?」
「…さ、…紗菜?
貴方…何で?
今…どこにいるの…っ?」
「…飛行機の中です…。
おじいちゃんの別荘に向かっています…っ。」
「…無事?」
どういう意味で聞かれたのかが
分からず戸惑っていると。
「私ね、貴方のパパと離婚したのよ。
その後パパはね今の貴方のママと
再婚したの。紗菜はねパパの方へ
ついていったのよ。」
「そう…なんですね…。あのっ、…
でも私のパパ…もう亡くなってます。」
「…え!?
そうなの…?
…寂しい思いしたわね。
で、いきなりどうしたの?」
「私のおじいちゃんの別荘に
きてくれませんか?」
「…うふふ。
久しぶりに行くわね…。
勿論よ。
私、今独り暮らしなの。
嬉しいわ。」
「…そうなんですね。
良かったです。」
「私ね…今29歳なの。20代のうちに紗菜に
会えるなんて嬉しいわ。」
「私も。」
思わず本心がでる。
お母さんも優しそうで良かった…。
外を見る。
「もうちょっとかな…。」
- トビラ。 ( No.5 )
- 日時: 2017/02/27 16:18
- 名前: 如月 (ID: OakzbDQq)
「……着いた。」
広く、青い空に広大な敷地。
一際目立つその建物はまさに
おじいちゃんの別荘。
「…本当に残ってた…。」
間さんでもきたのだろうか…。
昔の別荘と本当に変わっていない。
見るとやたら大きな車が専用の大きな駐車場に
とまっていた。
「間さん…早いなぁ…。」
扉に手をのばす。
ガチャ
「…桜ノ宮様っ
お久しぶりです。間です。
さっ、どうぞ。お入りください?」
「こんにちはっ。失礼します。」
ゆっくりと靴を脱ぎ
口を開こうとする。
さすがにこれ以上家出のことを
秘密にしておくわけには
いけないから。
「…ぁのっ…」
「そういえばっ。
奈月様ももう少しでいらっしゃるそうですよ。」
「…あ、…そうなんですね。」
タイミングを失い口を閉じる。
「桜ノ宮様…申し上げておりませんでしたが
奈月様には再婚相手がいらっしゃる
ようなのですが…。」
「………え?
奈月さん独り暮らしだって…。」
「…?
そんなはずは…。」
とっさに確認する。
…プルルル…
「…もしもし?」
「…あの…奈月さんっ!」
「どうかした?今飛行機にいるけど…。」
「独り暮らし…ですよね?」
「……なんで?」
奈月さんの声のトーンは低くなる。
「間さんに…聞いたんです…。
再婚してるって。」
「…そうだよ。
ごめんね、本当は夫も飛行機の中に
いるの。」
「…っなんで…」
「嫌われちゃうと思って。」
「そりゃぁ…やだけど…。
嫌いになんてなりませんっ。」
「…紗菜はいい子ね。
ありがとう。夫、怖い人じゃないから
安心してね。後…紗菜に色々迷惑かけたし
名字は紗菜に合わせて桜ノ宮にするからね。」
「…有り難うございます…。」
「敬語はやめて?
後…ママって呼んで欲しいなぁ…?」
「…うん。
大好きママ…。」
こうして私にパパがいることを知った。
- トビラ。 ( No.6 )
- 日時: 2017/03/05 07:46
- 名前: 如月 (ID: OakzbDQq)
「紗菜っ…!」
私は初めてみる本当のお母さんのはず
なのにすぐにとびついてしまった。
「ママっ!!」
「…奈月様、桜ノ宮様、どうぞ
お入りください?」
間さんはちょっぴり空気が読めない
ようでこのタイミングに
声をかけてきた。
私はクスッと気づかれないように
笑ってから「はい。」と一言いって
扉を開けた。
その時ママが。
「待って紗菜?
紗菜のお父さん。待っててあげないの?」
「…あ。」
すっかり忘れていた。
「ごめんよ、遅くなって!」
「………え?」
この人が私のお父さんと
思うと信じられない。
__だって。
おじいちゃんと同じ
現役俳優さんなんだもの。
「驚いた?紗菜。」
「…うん。おじいちゃんも俳優さん
だったなぁ…………。」
「よろしくね、紗菜ちゃん。
俳優で、これから紗菜ちゃんのお父さん
になる奈月 堅です。」
「ちょっと!名字はこれから
桜ノ宮よ!?」
「……あっ、そうか。
桜ノ宮 堅です…プハハハ。」
私も思わず笑ってしまった。
あまりにも楽しい家族だったから。
________________
「紗菜にはこれからね。
春花学園に通ってもらおうと
思ってるの。」
「えっ?あのお嬢様学園に?」
「知ってるのね。ならいいわ。
お金なら心配しないで?
ね?堅くん?」
「あぁ。
心配するな。」
「___あのっ!!
私…2億円持ってるんです。
おじいちゃんから引き継いだ…。」
「___え!?」
- トビラ。 ( No.7 )
- 日時: 2017/03/16 18:47
- 名前: 如月 (ID: OakzbDQq)
「……聞いて…ないわよ…?」
「…うん。…言ってない。」
少しの間、沈黙が続いたが
堅さんがゆっくりと口をあけた。
「どこにあるんだい…?」
「…あっ、えっとこっちです。」
思いもしない返答に焦りながらも
返事を返す。
(…まだあるのかな…)
小さな不安を抱きながらも
一つ目の部屋まで案内した。
「ここの部屋のそれまた奥の部屋に
あるんだけど…。」
私はゆっくり奥の部屋のドアを
開け、2億円がある場所まで
案内する。
「…ここを開ければあるよ。」
「…そうか。
俺が開けるよ。」
堅さんが重いドアを開ける。
…ギギィ…
「……これ…って…嘘…ほんとに
2億円なのね…?」
2億円なんて夫が俳優のママには
大したことないはずなのに…。
本当にあやしがっていたのだろう。
「…ね?
本当…なの。」
堅さんもママと同じような反応を
している。
「…紗菜…………」
「…何……っ?」
「…もう…何不自由なく
暮らしていいのよっ。
もう…貴方の元お母さんの
ような酷い扱い絶対にしないから…。
もう無理しないで何でも言って?
…絶対に幸せにしてあげるから。」
お母さんは2億円を見て、
改めて私達は幸せだということを
感じたのだろう。
その場で感極まって泣き始めた。
「…ママ。」
堅さんが優しく笑みを浮かべ、
ママを慰める。
……私だって嬉しい。
こんな金持ち夢見てたし。
何よりママの気持ちだって。
「…有り難う。
よろしくね。」
静かに微笑み返した。
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