複雑・ファジー小説

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都市伝説の瓶詰め
日時: 2017/03/13 02:15
名前: 双葉 ◆eUvClXjSHk (ID: xHgOAO3H)



「僕らが死ぬときは、みんなの記憶から消えるとき。けど、誰か一人でも僕らを覚えていてくれる人がいて、それを誰かに話してもらえれば、僕らはちゃんと存在できる。」

初めましてこんにちは。双葉です。
都市伝説となった子視点のシリアスなのかコメディなのか分からないお話です。どつちつかずでもあるしどっちでもないのかもしれない。そんな感じです。都市伝説では有名どころの怪奇しか知らないので、くねくねとか猿夢とかそういう感じの怪奇が人の姿をとって駄弁ったり人を襲ったり存在価値について語ったりするゴールの見えない小説です。所謂やおい。
荒らし、チェーンメール、中傷はお断りです。


【本編】



Re: 都市伝説の瓶詰め ( No.1 )
日時: 2017/03/14 18:36
名前: 双葉 ◆eUvClXjSHk (ID: fTBkCjg2)



都市伝説は人の想いから生まれ、その存在を確立させる。
例えば、その都市伝説を知る人が多ければ多いほど、姿や性質を理解されその都市伝説の性格や容姿がはっきりする。
逆に人から忘れられると、容姿は曖昧になって性格もころころ変わったりする。最後には自分で自分のことが分からなくなって、消えてしまう。

まぁ、つまりは、有名な都市伝説なら性格も容姿も目立つものになって、はっきりする。
キャラが立つ、というやつだ。

しかし、僕の場合はそれが適用されてない気がする。
なんでか分からないけど、僕の体は女のものになってしまったのだ。

【都市伝説、トンカラトンの異端児】

都市伝説というと、口裂け女や花子さん、カシマさん、コインロッカーベイビー……。そういった、有名な都市伝説を想像するんだろう。

しかし、僕__トンカラトンも、それなりに有名な都市伝説のはずなのだ。
一時期は学生達に怖がられていたし、元は日本妖怪なんて説もあるくらいだし、姿や性格ははっきりくっきりしているはずなのだ。

「なのに、なんでこうなったかね。」

自身の体を見下ろしてみると、仲間達とは違う女特有の丸みを帯びた体が目に入る。
豊かに膨らんだ胸、きゅっと括れた腹と細い腰、健康的に引き締まった尻や太もも。どこからどう見ても少女のものである。
しかも、トンカラトンは片目だけを出した包帯でぐるぐる巻きの姿をしているはずなのに、女の姿をしているせいで包帯は手足のみを隠すものとなった。
白いブラウスと黒いスキニーパンツを身につけ、黒い革靴を履いて、右目はガーゼの眼帯で隠している。

他のトンカラトンと比べたら人間の学生寄り。妖怪らしくない。下手したら大怪我しただけの女学生である。
しかも、トンカラトンという都市伝説は全員日本刀を帯刀している。
なので、最悪コスプレ少女、または中二病の小娘と間違われる。
こんな風に間違われるくらいなら危険人物として警察にしょっぴかれた方がマシである。都市伝説としては。

また、顔つきや髪の毛、声も都市伝説らしい怖いものじゃない。
ショートカットの黒い髪は細くてツヤツヤしていて、動くたびにさらさらと揺れる。
肌は白くて、日焼けなんてトンカラトンとして生まれてから一度もしたことがないし、肌荒れもしないしニキビや吹き出物、ソバカスもできない。つやつやすべすべ柔らかな肌が生まれてからずっと維持されている。
右目はずっと開かないけど、左目は黒くてかすかに潤んでて、きらきら光ってる。
鼻筋もすっと通ってて、唇は薄い珊瑚色。
声も随分綺麗で、こんな声で命令をしても絶対相手にされないだろう。

そう。なんというか、僕はトンカラトンの中だけでなく、怪異の中でも異端だ。日本刀持ってて、遭遇したやつにおきまりの台詞を言う以外は普通の人間となんら変わらないし、むしろ人間に好かれるような容姿をしているから。

「トンカラトンと、言え。」

ぽつり、おきまりの台詞を呟いてみた。
喉にグッと力を込めて少し低めの声を出してみたり、眉間に皺を寄せて相手を睨んでみたり。色々してみたけど、この台詞を口にして怖がられたことはあまりない。
この言葉を復唱せずに笑われるだけならまだいい。都市伝説の性質上、相手が僕の命令を聞かなかった場合は、相手を日本刀で斬り殺してもいいことになってる。

苦笑したり、気の毒そうな目で僕を見るけど、まぁ、復唱してくれる人もいる。これならまだいい。
最悪の場合、嘲笑混じりに復唱されたり、煽られたりする。この場合、相手がどんなに嫌なやつで、僕がどんなに煽り耐性のない短気なやつでも、都市伝説の性質上、相手に手が出せなくなる。そして、見えない何かに手足を抑えられて、背中を押されて帰ることになる。その間ずっと顔は真っ赤だし眉間に皺が寄りっぱなし。手なんか怒りで震える。

仲間達だとそういったことはあんまりないらしい。僕だけ人間になめられてる。トンカラトンはいっぱいいるのに、変なのは僕だけ。納得いかない。僕はなんの業を背負ってこんな都市伝説になったんだ。おかしいだろ。

自然と眉間に皺がよって、組まれた足が揺れる。そうだ、僕だけ変なのって確実におかしい。なにか原因があるはずなんだ。僕だけがこうなった理由があるはずなんだ。
よし、他の都市伝説の話を聞いてみよう。もしかしたら、普通のトンカラトンになる方法を知ってる奴がいるかもしれない。

思い立ったら即行動。早速、都市伝説がいそうなところに行こう。まずは小学校からだ。小学校の女子トイレには必ず花子さんが取り憑いてる。運が良ければ怪人赤マントや太郎くん、赤紙青紙もいる。動く二宮金次郎像や魔の13階段だってあるかもしれない!

かつかつと靴音を響かせ早足で学校へと向かう。近くの小学校というと花園小か。ふと顔を上げて空を見てみる。空は赤に近いオレンジ色。学生が家に帰る時間。学校へ向かう途中、誰とも出会わないといいけど。

そんな事を考えてよそ見しながら歩いていたからか、人とぶつかってしまった。ちょっとよろめいたけど、両足をしっかりと地面につけて、視線を下げる。黒いランドセルを背負った少年が尻餅をついている。少年は僕を見上げ、ぺこりと小さく頭を下げた。

それに対して、僕は眉を下げて微笑んで見せた。こちらも小さく頭を下げて、片手を少年はの方へと伸ばす。
少年が僕の手を取ると、僕は少年の小さい手を引っ張って立ち上がらせた。

そして、人間と会った時のおきまりの台詞を口にする。

「トンカラトンと、いえ。」


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