複雑・ファジー小説
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- show smile
- 日時: 2017/03/17 12:33
- 名前: lion. (ID: zRMXy3Mo)
秋の前、夏の次にさしかかる月末の昼頃、俺は海岸と海岸線まで見える大きな海を挟む場所に座っていた。
二村岬を待っていた。
晴れ晴れとした天候とは裏腹に、心は黒ざめ、心底冷え切っていた。しかし、それも仕方のない事だった。
高校2年生の10月2日。俺は二村に別れを告げる決心をしていた。
風が吹く。冷たい烈風は、少しずつ心の灯を弱めていくようだった。
だが、何かが揺れるだけで、何も変わらなかった。
二村が、待ち合わせていて時刻に現れた。
「風が強いね」
それだけ言うと、笑顔のまま隣へ来た。二村の笑顔をみると、今までの事が嘘かのように、不思議と心は揺らめきもしなかった。とても実質付き合っている人とも思えなかった。俺は、口を開いた。
「二村、話があって呼んだんだ。直接伝えたくて。実は、俺は来月から東京に引っ越すんだ。東京の高校へ行く。だから、俺と別れてほしい」
二村の髪が冷たい風を帯びた。
- Re: show smile ( No.1 )
- 日時: 2017/03/17 12:46
- 名前: lion. (ID: zRMXy3Mo)
10月3日。月曜日。
太陽の光が寝室のカーテンから差し込むと同時に、ゆっくりと体を起こした。手で頭を押さえると、髪の毛が少しはねていた。
朝食はパンと決まっていた。母は既に仕事へ行っているため、毎日自分で調達しなければならないので、昨日に必ず翌日の朝用にパンを買っておく。
8時15分。身支度を済ませ、家を出た。
翌日と同様、晴天だった。何もかもの悩みが吹き飛んでしまうくらいの、そんな気持ちのいい陽光がどこまでも続く道を照らす。少しずつ夏の温かみも抑え気味になっているのに気づく。少しずつ、時間は進んでいく。
学校とは、意識だけ持って行けいけば済む世界だ。
何も、精神まで持って行く必要はない、そこまですれば根こそぎ自分という柱が大きく揺らいでしまう。必須なのは、大切なのは、意識だけを携えること。
1時間目が始まった。
- Re: show smile ( No.2 )
- 日時: 2017/03/17 13:25
- 名前: lion. (ID: zRMXy3Mo)
休み時間になると、今朝のホームルームで担任が話した事について聞きたいと男子が俺の席の周りに群がった。
「本当に、東京へ引っ越すの?マジかよ。急じゃね?」
「ごめん。本当、急に決まっちゃってさ。悪い」
そんな他愛もない会話すら、切なく感じてしまうのは、俺が17歳だということだけだからだろうか。
群青の空に変わっていた。放課後は、3人の友人と連れて家路を歩いた。
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