複雑・ファジー小説
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- 失われたオレンジ【幻想図書館】
- 日時: 2019/03/10 01:26
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: 4m8qOgn5)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=172.jpg
淋しさの代わりに、痛みと愛を求めて。
表紙は銀竹さんからいただきました。ありがとうございます!
【失われたオレンジ】>>01
【ガラスの楽園】
【怪物はゆめをみる】
- Re: 失われたオレンジ ( No.1 )
- 日時: 2019/01/21 21:42
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
芋虫のように地を這い、蝶になれず、一生をただ喰われるだけの花のように過ごす。こうして生きてゆくのだ、と、誰が決めたのだろうか。
世界は残酷だ。僕みたいな烏には、生きる希望も、それを掴む手も与えてくれやしない。
『歴史、哲学、教育、宗教、法律、政治、経済、社会、そんな学問なんかより、ひとりの処女の微笑が尊いというファウスト博士の勇敢なる実証』
僕はその手で彼女の純潔を奪ってしまったけれど。オレンジはいつも残酷だ。残酷で、そして可愛い。殺してしまいたくなるほどに愛しい。
君は、壊れたものを見たことがあるだろうか。それはオルゴールであったり、建物であったり、積み木だったりするのかもしれない。
僕は人間の壊れる様子を見た。それは突然で、ぷっつりと糸が切れたように、その人は動かなくなった。突然のことだった。本当に突然のことで、ぼくはただただ、花のようにその姿をぼおっ、と見つめることしかできなかった。でもそれだけだ。
人はものになる。死んだらものになる。動かない人形になる。そこにあった記憶はいつの間にかねじ曲げられ、僕らは遠くなる。いつの間にか僕らを知っていた人間はみんな人形になって、地面になって、芋虫になる。そして蝶になりきれなかったものは、花になるのだ。
僕は蝶を探している。誰にも壊されず、人を壊す存在を。僕は蝶に殺されたい。僕の目だって手だって足だって、まるでマネキンのように差し出して、死のう。痛みは愛だ。そうだ、愛なんだ。
どこにいるんだろう、蝶は。僕の全てを見抜き、破滅させ、溺れさせる存在は。愛という名の痛みと共に、僕らは堕ちてゆこうよ。ねぇ、S。
甘い声が好きだ。死んでしまいそうになる。君の声はまるでオレンジのように甘い。甘くて酸っぱい。あれ、これじゃあ甘酸っぱいじゃないか。
夕日を見ると思い出すんだ君のことを。僕の奥まで刻み込ませたキスを、きっとずっと、忘れない。きらきらと輝く宝物だ。マイ・チェホフ。
金と女、愛ははにかみ、そそくさと歩み寄る。愛とは譲れないもので、決して絶えないもので、幸せではないものだ。あたたかいどころかつめたく澄んだものだ。金と同じで、愛はすぐにやってくる。1人で。
カッターは、今でも鞄の中にある。いつでも切れるように。切り刻んで切り刻んで、僕という存在が消えてしまうように。
オレンジ色の髪を探し求めている花の姿は、きっと滑稽だ。もう探し求めているものは無いのに。色の無い僕の花びらは、もう君のオレンジでしか染まることができないんだ。
スケッチブックについたあの日のオレンジは、黒い絵の具で消しました。トイレに流しました。もう戻ってくることはない、マイ・コメディアン。素敵な絵だった。見る度に吐き気を催すほど、それはそれは扇情的で、汚くて輝く凄絶な作品だった。それは僕の絵だった。
モノクロの世界に住む僕は、もう死ねない。1人では息ができなくても死ねない。僕は殺されなくてはならない。Sに。
ねえ、S。あの日君は、何を考えていたのかな。絵を描くこと? 死ぬこと? 殺すこと? それとも……いずれにせよ、君の行為を表す理由にはならないようで、僕はもどかしい。
烏。こんな烏を愛したからだろうか。君はよく空を見ていたね。そういえば、君は空色が好きだったね。空色じゃなくてごめん。お詫びに死んだって、僕は空色にはなれやしない。死にたい。
僕の中で夕日=君という印象が固まってしまったのか、僕は1日に1回は君を思い出してしまっている。迷惑な話だ。
首を絞めて君は幸せになれた? ずっと絞めてほしいって言ってたじゃないか。
『あなたに絞めてもらえればきっと、私は幸せになれる。蝶になってどこまでも飛んでゆけるの』
嘘っぱちだ。その証拠に、君は戻ってこなかった。君は蝶では無かった。所詮、Sは人間だ。蝶じゃない。
そしてまたお前も蝶じゃない。ただの醜い花だ。蝶の養分となり、終いには朽ちて堕ちて墜ちて人形になる。人は死んだらものになる。そこらへんの草や虫や動物と一緒。蝶はいない。どこにも。
眩しい太陽より、斜めから射し込む穏やかな夕日を。僕は望む。それは蝶ではなくて、花でもなくて、芋虫でもない。それはきっと__
久しぶりに鏡でSを見た。君ではなく、もう1人のSを。Sは言う。お前は烏だと。だとしたらなぜ飛べないんだ。この身を引き裂いて飛びたいのに、飛び出せないんだ。どうか教えてくれ。なあ、S!
愛が欲しいと言った。だからと言って、壊れたくはなかった。獣を引き出したいとは思わなかった。殺したいとは思わなかった。愛したいだなんて思わなかった。
愛、と書いたら、あと、書けなくなった。僕は愛を知らない。痛みが愛では無いのだとしたら、愛とはなんだろう。僕はばけものだ。愛で愛するMCを殺そうとした怪物です。僕を罰してくださいどうか。
僕は上品になりたかった。弱く、いや凡庸になりたかった。平和に生きたくて色を受け入れた。花になりたくなんてなかった。僕は芋虫になりたかったのだ。
死んでお詫び死んでお詫び。死んでどうやってお辞儀する? 土下座する? 君はばかだ。お詫びもせず死んでいった。
何が同じだ。何が人間だ。僕は人間だ。人間は皆同じだ。
人間として生まれた罰でしょうか。僕は烏でした。どうしようもなく卑屈で、卑しく、姦しい生き物でした。僕はばけものでした。
殺されたい。そんなこんなで、この思考は元の位置に戻るのだ。
■
瀬名 陽セナ ハル
円 ひなたマドカ ヒナタ
臣 時雨オミ シグレ
臣 沙夜オミ サヨ
六条 白雪ロクジョウ シラユキ
紫苑シオン
水谷 尚哉ミズタニ ショウヤ
朝倉 琴乃アサクラ コトノ
朝倉 宵子アサクラ ヨイコ
■
泣き虫ジュゴン >>04-
命 >>
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イメージソング
『染まるよ/チャットモンチー』
- Re: 失われたオレンジ ( No.2 )
- 日時: 2017/11/04 18:11
- 名前: 厳島やよい (ID: 9RGzBqtH)
罪と偽善と、愛と呪縛と。
そして、失われたオレンジが、この世のすべてでした。
こんな体は、永遠の夕焼け空にとじこめてしまおう。そのやさしい熱で、溶けてしまおう。
最期に深いふかい、ちっぽけな爪痕を、この地に刻みつけてから。
*
こんにちは。先日はコメントいただきありがとうございました。お礼といってはなんですが「嘘つき、と呼んだあの空は〜」のお返しで書いてみました。
なんでその名前で来やがったんだてめーという質問につきましては、詳しくはWebで。なんて冗談はさておき!
やっと追い付きました、お待たせしました、ひーひーふーっ。
速読できるようになりたいです。横書きだとなおさら。
なんというか、文学的な雰囲気をまとった書き方だなーと思いました。単語単語に出ている、というわけではなくて、全体として、そういう雰囲気。カキコだとラノベ調とかそういう文章やストーリーが大半なので、複ファ来たぜって実感します(それを良い悪いと区別するつもりではなく)。
臣くん視点の時にはそんな地の文が少しくだけていて、良い意味で中学生っぽいなと思いました。
亜咲時代のうしおれから知っているから、途中まで……陽くんとひなたちゃんが出会うところまで辺りなら恐らく3回くらい読んでいるけど、ここまで読んだのは初めてです。ガラスの靴の話はどこでちらつくのかなーと楽しみにしていたら、まさかの超近所笑
ひなたちゃんが高等部のスカートを履いているのに対し「なんでやねんねんねん」と突っ込みました。姉でもいたんだろうかと的はずれな推理をしてみる。うふうふ。
はるくんはちゃんと正式にひなたちゃんからの告白の返事をかえせー笑(私が見落としてるだけだったらごめん)
なんというか前にも喩えで話したけど、無理してひねり出す1000文字×1回より、私は100文字でも10回のほうがやりやすいかなーと思ったので、今回はこの辺でおしまいにしておきます。
でもこれって作者さん側的には面倒だったりするのか……?他の読者さんには普通に迷惑だろうってのはわかるのだけど。
と、そんな変なところで周囲との認識のずれを感じているやよいさんでした。
ではでは、これからの展開を楽しみにしております。
厳島やよい
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