複雑・ファジー小説

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君は太陽。
日時: 2017/05/15 20:47
名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: WVWOtXoZ)

 
 
 
 君とふたり、孤独をさ迷う。
 目を閉じると暗闇がやってきて
 僕はまた、眠りにつく。
 いつもいつも、いつだって、僕を夢から引きずり出すのは

 君だったんだ

 

Re: 君は太陽。 ( No.1 )
日時: 2017/04/24 20:35
名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)

 
 
 
 嗚呼、また夜がくるね、なんて言う彼女を無視して、僕は今日も椅子に座る。
 真っ白な机に昨日の僕が無造作に置いておいた、おひさま色したシャープペンシルを手に取り、かちり、と1回だけ押した。そう1回だけ。芯はあまり出したくない。このシャープペンシルが1番押し心地が良いので、僕は去年からずっと使っている。1度ボールペンで書いたことがあったけれど、よく字を間違えてその度にぐるぐると目眩のするような黒を埋め尽くさなければならなくなったので、すぐにやめた。僕の人生には、修正が多い。

「煙草、吸っていい?」

 どうぞご勝手に。
 あっそう、と面倒くさそうに火をつけようとする彼女に向かって適当に返事して、僕はいつものようにノートを開き、僕のちっぽけな今日という1日を、記録しはじめる。

『天気。晴れ。

リップがきれていたので、買いに行った。あさごはんを残さずに食べた。


あと、彼女のために、まつげ美容液を買ってきた。あげない』

 それだけ書いて、ぱたん、とノートを閉じた。

「ねえお月さまが綺麗だよ」

 そうだね。

「煙草、吸う?」

 いらない。

 嗚呼、夜が、静かで淋しい夜がまた、僕らのもとへやってくる。その前に、彼女と2人で、眠りについてしまおう。それがいい。




 星の光が差し込む小さな屋根裏部屋に、僕と彼女と、日記帳だけが存在している。そんな物語。

 

Re: 君は太陽。 ( No.2 )
日時: 2017/04/25 21:16
名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: tMBSASgt)



#美少女と花について


 美少女、と、花。僕は、まだ真昼間だというのに机の前に座り、ノートにその2つの言葉を書き込んだ。
 この2つの言葉は、よく同時に並び立てられることが多い。どちらも美しく、可憐だからだろう。被写体としても、この2つを揃えることで、幻想的で神秘的な風景が出来上がる。使える道具、というわけだ。
 まあ、身近に美しい花はあれど、美少女は探してもなかなか見つからないが。
 しかし僕の隣にはいつも、美少女がいる。ところが、花はない。僕はこの部屋から出ることができないため、花を探すこともできない。

「なら摘んでこようか、私が」

 不要である。
 花も美少女も、野にあるままに存在しているべきだ。茎を折り、葉を切り落としてまで、僕の世界に無理に持ち出すべきではないよ。

「なら私はどうなの」

 君は美少女ではないから別。

「さっき美少女が隣にいるって言ったじゃない」

 さてはて、何のことやら。

 

Re: 君は太陽。 ( No.3 )
日時: 2017/04/27 20:54
名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)

 
 
#沈黙を愛せ。





「沈黙を愛せ、って、難しいお願いね」

 ふいに彼女がそう呟いたので、僕は目を開ける。僕にしては少しはやい目覚めだった。いつも、彼女は僕が起きるまでただそばに居るだけなのに。
 もう夜か。その証拠に、小さな窓に星が瞬いている。また日記を書かなければならないな、と思い、半ば義務のように椅子に座った。おひさま色のシャープペンシルを手に取ってノートを開くも、頭の中には彼女の呟いた言葉がしっかりと残っていた。


『天気。雨→はれ。気分のよい変わり模様だった。

髪を褒められた。気分がよい。褒め返してみた。否定された。気分が悪い』


 日記はそこまでにして、僕はノートに、沈黙、と書いてみる。淋しさの象徴のようなその文字から、僕は何故だかちっとも淋しさを感じなかった。

「沈黙って、孤独ね」

 そうかな。
「だって音がないってことは、1人ってことでしょう。沈黙を愛さなければいけないのなら、2人なのに音がないってこと。気まずくって死んじゃいそう」

 沈黙を愛せる者同士なら、気まずくないんじゃない。

「それもそうか」

 彼女はそれきり、また押し黙った。

 くすり、と微笑みが漏れる。どうしても、面白くて仕方がなかった。
 僕と彼女との間にはいつも沈黙ばかりがあるのに、彼女はちっとも淋しそうでも孤独でもなく、楽しそうだったからだ。そう、今も。
 


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