複雑・ファジー小説
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- 華と鬼(オリジナル)
- 日時: 2017/05/04 01:17
- 名前: 雪麻呂 (ID: YNBvTGT8)
初めまして雪麻呂です!
最近やりたいゲームが増えて嬉しく困ってます(笑)
和風妖怪恋愛(?)バトルファンタジー系書きました!!
文才0で亀更新ですが、楽しく書いていきたいと思います!
これは一次創作のオリジナル小説ですので、苦手な方はすみません!
- Re: 華と鬼(オリジナル)00 ( No.1 )
- 日時: 2017/05/04 04:37
- 名前: 雪麻呂 (ID: 6nOSsJSp)
世界観とちょっとしたキャラクター説明(今後も増えます)
*月都《つきと》
昼は人間が、夜は妖が自由に生きる都。人間と妖、共生しているようでしていない。
*妖(あやかし)
又は妖怪と呼ばれる存在。その力は闇でしか発揮できない為、昼はひっそりと隠れながら生きている。だが夜にもなれば簡単に人間を食い殺す事が出来る。
*鬼(おに)
又は鬼人(きじん)とも呼ばれる。妖と同じ類だと思われがちだが、実際は神に似た神聖な存在。人間の前に現れる事は滅多にない。
登場人物
*桜華(おうか)
月都の第一姫君。珍しい亜麻色の髪を持つ少々お転婆な齢16の少女。妖から守られる様にあれよこれよと大事に育てられてきた。
*彪雅(ひゅうが)
桜華の前に現れた謎多き青年。鬼の様な赤黒い石の仮面を着けている。
*彩華(さいか)
月都の第二姫君で桜華の妹。活発な姉とは逆に人見知りで口下手。幼い頃から身体が弱く、こちらもまた違う意味で大事に育てられた。
*華柳(かゆう)
月都の君主であり桜華と彩華の父親。朗らかでお人好し。
- Re: 華と鬼(オリジナル) 01 ( No.2 )
- 日時: 2017/05/04 10:13
- 名前: 雪麻呂 (ID: woIwgEBx)
「ーーーねぇ!そろそろ城の外に出たっていいでしょ!??私は16だし今はまだ昼間よ!!」
穏やかな春風吹き込む月都。
その中心部に建つ月詠城《つきよみじょう》の庭園で少女の荒げる声が響いた。
不満げに目の前の使用人をじろりと睨む。そのご機嫌斜めな城主の娘ーーー桜華に使用人の男は困り果てた。
「し、しかし姫様。お父上殿からまだ御許しが...」
「んなもん私がぶん取ってやるわ!
...都の城主跡継ぎが16にもなって城の外を...月都の、民達の姿を見た事が無いなんて...
私は嫌よ!絶対に嫌!!」
「ひ、姫様ぁ...」
ご立派になられて、という使用人の視線に桜華は隠れて舌を出す。
「お父様だって許してくれるわよ」
「え、いや...しかし姫様...」
「む、何よ」
頑なに外に出る事を良しとしない使用人に桜華はまたもや視線を鋭くさせる。
「もういい!お父様に頼み込んでくる!!」
「ひ、姫様ぁ!?」
引き留めようとする使用人の声に聴く耳持たず、ずんずんと桜華は進んでいく。それに亜麻色の髪もゆらゆらと揺れる。
月都の第一姫君、桜華。お転婆でわがままでお淑やかなんて何処へやら。
道中驚く使用人たちの視線も気にせず父の部屋へと足を進める。
(いつまでも籠の鳥でいたくないのよ!)
桜華の手が豪華な造りの襖に伸びた。
- Re: 華と鬼(オリジナル) 02 ( No.3 )
- 日時: 2017/05/04 13:49
- 名前: 雪麻呂 (ID: g.taR5LA)
ガララッッ!と勢い良く襖を引き開ける。
すると案の定。ぽかん、としたちょび髭の顔がそこに。
「お、桜華...??」
「お父様、お話があります!」
「な、なんだい?」
目をパチパチと落ち着きなく尋ねる父、華柳(かゆう)に対し桜華は先程と打って変わって静かにその場へと膝をつく。
「...桜華?どうしたんだ??お腹でも痛いか???あ、おやつがまだ食べれていないのかな??」
まるで小さな子供を相手に例えを出す呑気な父に桜華はぴしりと青筋を立てる。
「私はもう子供じゃないっっ!!!」
そう腹の底から出す様に叫ぶと、華柳は一瞬固まる。が、すぐに困った様に笑った。
「ごめんよ、桜華。そうだな、桜華はもう昨日で16になったんだもんなぁ。...さ、そんな所で座ってないで、こちらへ来なさい。今茶を淹れよう」
娘に怒鳴られたというのに、怒るどころかいつも通り優しげに笑う父。
「...ごめんなさい、お父様」
「そうだね。そういうところが、桜華の良いところだ。...ごめんよ、大声を上げる程にお前を悩ませていたんだな。...それで、どうしたんだというんだい?」
「...私、いつになったら城の外から出られるの...?確かに私はこの都の姫君で、それに夜は出られないのはもちろん分かっているわ...でも、せめて昼は街とかに行きたいの。城の外はどんな世界か、どんな人達がいるのか、知りたいのよ」
「.....桜華」
ぽん、と父の大きな掌が亜麻色の髪に優しく乗せられる。
「桜華の気持ちは分かった。...だがな、これもお前を守る為なんだ、分かってくれ」
「何それ!結局ダメって事!??守るって何よ!!そんな、籠の鳥みたいに...!!!
もう!!お父様の分からず屋!!!」
こちらを呼び止めようとする父の声を振り切り、桜華は小走りで走り出した。
(何よみんなして!!私を子供扱いして!!!)
ずんずんと来た道を戻る。使用人たちの視線や声かけには完全無視だ。
だが、
「おい大変だ!城の前で人が倒れたぞ!!」
「医者は!??」
「待てもしや妖に襲われた可能性も捨てきれん...!専属の医者が城にいたはず!」
「しかし見ず知らずの男を城に入れるとは...」
(人が?倒れている??妖に襲われた???)
「何してるの!?早く中へ入れなさい!!介抱しなきゃ!!!」
「..ひ、姫様!?」
桜華の突然の命令に使用人たちは狼狽えるも、すぐに「はっ!」と行動を開始した。
「姫様は自室へ...」
「ほっとけるわけないでしょ!?私も行く!!」
「ぇええ!??」
ずんずんと使用人たちが集まるそこへと歩み寄る。
「....!」
だが使用人2人に両脇から抱えられている男の、
少し異様な姿に桜華は目を丸くさせた。
- Re: 華と鬼(オリジナル) 03 ( No.4 )
- 日時: 2017/05/04 15:07
- 名前: 雪麻呂 (ID: g.taR5LA)
「それで...その男の容態は?」
華柳が目の前で膝をつく使用人に尋ねる。
「は...命に別状はありません。傷も所々ありましたが...深いものでは無いので」
「それは良かった...」
ほぅ、と華柳の口から安堵の息が溢れる。
「獣に襲われたか、妖に襲われたか...それはどうだった?」
「は、専属の医者に診せたところ妖特有の邪気はみられなかった、との事でございます」
「なら獣か?...だがゴロツキたちの仕業も捨てきれんな。まぁ、今は彼の安全と身体が第一だ。大切な月都の民なのだからな」
「あ、あの城主様。その事なのですが...」
口籠る使用人に華柳は「ん?」と首を傾げた。
ーーーーーーー
「この男、恐らく月都の民ではございませんな」
「え...?」
医者の言葉に桜華は目を見開く。
そしてもう一度男の姿を目に映した。
あまり清潔とはいえないぼろぼろの着物に、傷だらけの身体。
そして何より異様さを物語る、
男の鼻から上を覆う、ちょうど目の辺りは切れ長に空いており視界は遮られていない、赤黒い石の仮面。
ひたいの部分の双方からはツノのような尖った突起があり、まるで鬼を思わせる仮面だ。
しかも外す事が出来ないらしい。
「恐らく何者かに襲われ、命からがら月都へと逃げ延びたのでしょう...仮面については謎ですがな」
「そう...こんな、傷だらけで。それはすごく怖かったでしょうね...」
桜華の手が仮面の男の冷えた頬に触れる。
「ひ、姫様」
「ありがとう、医者様。あとは下がってて頂戴」
「し、しかし!...その男が、何者かまだ」
「この人は怪我人よ!そんな人までも疑うの!?」
「ぅう...な、何かあったら大声で叫ぶのですよ!??」
ぱたぱたと医者が部屋を去る。
「.......」
桜華はほぅ、と安堵の息を吐き仮面の男をまじまじと見つめた。
なんせ桜華にとって城の人間以外の人間なのだから。それも、月都の外から来た人間。
(目が覚めたら...やっぱり医者様やお父様に教えるべきよね!...ぁ、でもそうしたらこの人と話す機会がなくなっちゃうわ!せっかくの外の人間なのに!そうよね、少しお話ししてからみんなに教えても良いわよね?)
そう頭の中で会話しながら思わず微笑む。
それにこの男、仮面で気付かなかったがよくよく見れば顔が整っているではないか。
(良いなぁ〜...こういう殿方と一緒になりたい...)
乙女な思考に浸かり、ますますにやけてしまう。
(でもなんか、不思議な感じがする...
人間なのに、まるで人間じゃないような...)
「ーーーーーぅ、」
「!」
仮面の男の口から吐息が漏れる。
気が付いたのだろうか。
「ーーー.....?」
「...あっ...!」
薄っすらと目を開ける。鳶色の切れ長な目だ。
「........」
虚ろと天井を見つめたかと思うと、きょろきょろと視線を泳がす。そしてゆっくりと首を動かして...
男の瞳が桜華の驚きと困惑と嬉しそうな複雑な表情を映した。
「え、えと、おはよう?
....って私ってば何言ってるのよ...」
自分に呆れる桜華を他所に男は体を起こそうとする。
「だ、だめよ!まだ寝てなきゃ」
「....ここは、何処だ」
「え、」
衰弱して少し掠れた、だが低く警戒心と棘のある男の声に、桜華は戸惑った。
「ここは、何処だと聞いている」
今度は完全に冷たい刃の様な声色に桜華はごくりと息を飲んだ。
「こ、此処は月都にある城...月詠城の客間よ。貴方、城の前で倒れていたの、...覚えていないかしら?」
恐る恐る男に尋ねる。
「...月都?....ぁあ、名前なら少し。
...俺が、倒れていた....」
「そ、そうよ」
「.........」
不機嫌そうに目を鋭く細めて自身の拳を見つめる様子に、桜華は咄嗟に覚えていないのだと気付いた。
「ま、まぁでも軽い怪我で良かったわ。貴方...名前は?」
「教えてどうする」
「ど、どうするって...」
男の言葉に桜華はどう答えたら良いか分からずうな垂れた。
「わ、私は桜華!ほら、私も名乗ったから貴方も!」
少し強引に相手にもう一度尋ねる。
すると男の目は一層不機嫌に細められた。
が、「...はぁ、」と呆れたようなため息が漏れ、
「彪雅(ひゅうが)だ」
と一言答えた。
「彪雅?それが貴方の名前なのね!」
「自分以外の名を答えてどうする」
「もぅ!そんな事言わないでよ!」
つん、と視線をわざと晒す彪雅に桜華はムッと頬を膨らませる。
「貴方絶対友達いないでしょ」
「お前こそ男にすぐ逃げられそうだな」
「んなッッ....」
減らず口の男に桜華はかーーっ、と熱が昇る。
「しっっ、失礼ね!なんて失礼な奴なのッッ」
「何だ図星か」
「違うわよッッ」
そんなやりとりをしているうちに、桜華はある事に気付く。
「っ...」
桜華は突如立ち上がったと思うとすぐに外を映している障子の方へと走り出した。
すぐさま障子を閉め、懐から札を取り出しそこへと貼り付ける。
「おい、どうした」
彪雅がその行動に疑問の声をあげた。
桜華は息を整えながら、答えた。
「月都はね...夜は妖たちの都になるのよ。そんな中呑気に結界解いて障子を開けてごらんなさい。
...この客間はあっという間に妖たちの遊び場になるわ」
危なかった、とずるずると座り込む。
外はもう夕日が落ちかけていた。成る程、確かにぎりぎりだったなと彪雅は納得した。
「...この城は封印が掛けられているのか」
「そうよ、月詠城だけじゃない。民たちの家にも結界の札が配られているわ...月都は、そういう都なのよ」
「民たち...お前はこの城の人間、という事か」
「ええ、そうよ。月詠城の城主で、月都の昼の主、華柳の娘よ」
彪雅は目を伏せた。
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