複雑・ファジー小説

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インストーラー
日時: 2017/05/10 01:00
名前: 腐亡津死ー (ID: vyKJVQf5)

 金を持つ人間ばかりが得を出来るような世界で、その差別化はさらに進んだ。ある日、突如としてスキルデータと呼ばれるチップの存在が公表された。

そのスキルデータはチップ状の物体で、主に人間の体内に埋め込んで使用する物だ。その名前の通り、そのチップを埋め込んだ人間にはスキルと呼ばれる特異的能力が付与され、強力な能力であればある程そのチップの値段も上昇する。

 例えば、俺の能力は高速移動と低位置浮遊の2つで、この能力は110円で購入できる。概要としては、まず前者だが、これは時速50km〜70kmの速度で走れるようになる、身体強化型だ。ただ、やっぱり疲れる。

後者の能力は上空10mまで浮遊できるという物で、これも値段は同じだ。主に信号カットの目的で使われるが、前者の能力と上手く組み合わせれば高速で上空を移動できる。

まぁ、かなり難しいが。

 そして当然の如く、このスキルデータはまんまと悪用される事になる。基本的には被害をもたらすと判断された場合、チップ内でリミッターが発動し、能力を一定期間使用できなくなる。

ただ、このリミッターを解除してやりたい放題してしまうような、そんな野蛮な連中がいる。そんな奴等に対抗すべく政府に雇われた人物達が、人呼んで、インストーラー。

皆の憧れで正義の味方。将来なりたいランキングでもユーチューバーと大差を付け見事、堂々の1位を飾っている。

 インストーラーは多くの能力を使えるように専門的なトレーニングを怠らない。というのも、体には許容できる能力発現数値があり、それは身体能力に強く依存している。簡単に言えば、マッチョな人ほど多くのチップを埋めれるのだ。

そしてインストーラーのチップは少し特殊な加工が施されていて、国との連絡が瞬時に可能な仕様なのだ。つまり、敵を見つけ次第即座にリミッターの解除が可能になっている。本来、リミッターの解除には国の許可が必要だが、このチップの場合、リミッターブレイク申請と呼ばれる物を後回しに出来るのだ。

 あぁ、なんでこんなに詳しいかって?俺も目指しているからさ。何を目指してるかって?聞くまでもないだろ?インストーラーさっ!

 これは、俺が憧れたインストーラー達の、過酷な戦いの記録だ・・・。

Re: インストーラー ( No.1 )
日時: 2017/05/10 04:36
名前: 腐亡津死ー (ID: vyKJVQf5)

 「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 やってしまったぁぁああああっ!!

 今日は大事な適正診断の日なのに、よりにもよって寝坊だなんて俺は大馬鹿だぁぁああ!!・・・?適正診断とは?

 適正診断っていうのはチップ耐性の事で、やっぱり体に物を埋め込むというのは拒否反応を起こす可能性があるんだ。なのでインストーラー試験の事前に、どれくらいのチップなら埋め込めるのか、診断を行っているんだ。まぁ俺はもう二つも埋め込んでるし問題無いだろうけど。

 「すみません、遅れましたぁ!!」

 俺が試験会場に到着したとき、空席は一つだけだった。すごく気まずい。

 「えー、佐澤瑞穂(ささわみずほ)くんだね。初日から遅刻とは見上げた根性だ。とりあえず席につきなさい」

 初っぱなから印象最悪だ!これじゃぁ一流インストーラーなんて夢のまた夢じゃないか!

 「えー、では全員揃ったのでこれから試験を行いたいと思います」

 教師の男の発言に一人の女子が疑問をぶつけた。

 「あのぅ、自己紹介は・・・?」

 「我々は既に君達の事を資料で把握してるからね。問題ないよ」

 「で、でも私達もお互いに知っておいた方が・・・」

 男の教師は冷ややかな視線と声で女子に返答を行った。

 「えー、依田瀬良(よだせら)さん、ここに居る129名の内、120名は脱落者なんだ。つまり、これからの人生で関わりを持たないんだ。しかも、君は128人全員の名前を記憶できるのかい?時間も海馬もなにもかもが無駄だ。よって自己紹介の必要性は皆無、以上。文句があるならその時点で脱落だ」

 女子生徒はそのまま押し黙り、他の生徒もその厳しさに気圧されていた。でも、この人の言う事も正しいと思う。生半可な気持ちで学校の様な感覚で試験を受けて、運良く受かっても敵との戦いでボロが出る。厳しいけど、そういう世界なんだ!

 「まず適正診断を行います。番号1〜30、31〜61、62〜92、93〜129で別れて行いますので、各自指定の場所で診断を受けるように。番号札は机の上に置いてあるのでこれも各自確認しておくこと」

 かくして、インストーラー第一次採用試験は幕を開ける。

Re: インストーラー ( No.2 )
日時: 2017/05/10 09:19
名前: 暇を極めし自宅警備員 (ID: vyKJVQf5)

 耐性が認められなかった人間は問答無用でその当日から一年間、試験を受ける事が出来なくなってしまう。だから、誰もが一番危惧する試験だ。

 「オッケー」

 「オッケー」

 「はい次ぃ」

 こんな具合で簡単に耐性の有無が調査されていく。調査基準は第一級指定国家機密という物に分類されており、一般人やアマチュアのインストーラーでは知りえないし、さらにはプロのインストーラーの中でも知る者は極僅からしいのだ。

 「・・・お前は、待機」

 周囲がざわつく。俺も心臓の脈を打つ速度が早くなっていくのが直に感じられた。何故、俺が、待機?相当勉強してきたが、過去に待機だなんて事例は一度も無い・・・。どういう、事だ?

 「はい次、早く来い」

 「あ、は、はいっ!」

 刻一刻と時間が過ぎ、残るは俺一人だけとなってしまった。

 「結論から言うと、異常数値が検出された。だが、他の受験生は皆平均値を十前後するくらいだ・・・」

 「・・・つまり?」

 「もうすこし様子を見る。お前の場合はな。その結果によってこちら側がそれに見合った判断をするだろう。それまではとりあえず、他の受験生と同じ内容の試験を受けてもらう」

 「は、はい!ありがとうございますっ!!」

 不安が少し先延ばしにされただけ。それは分かっているが、少なくとも他の受験生と同じく試験を受けさせてもらえるというだけで十分だ。

 「君、よかったね!名前は?」

 「俺は佐澤瑞穂っていうんだ」

 「あぁ!あの遅刻してきた・・・」

 「う、うん・・・。君は?」

 
 俺達二人の様子を見ていた試験官に俺達はしかられてしまった。俺は「じゃ、またあとで」とだけ言い残し、逃げるように試験官の目の届きにくい方へ足を運んだ。

 「さて、それではここからが本題だ。一次試験ではどれくらいの身体能力を持っているのかを測定する。もし、二つ以上の科目で基準値以下の数値が記録された場合は即刻失格だ。今の内に荷物を纏めておくんだな」

 試験官の厳しい言葉に、より一層の空気の重圧が受験生に降り注ぐ。ここからが、本番だ・・・。


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