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複雑・ファジー小説
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- 空っぽの心
- 日時: 2017/05/21 15:54
- 名前: すろま (ID: eGpZq2Kf)
春の生ぬるい風が僕の指の間を通り抜けていく。
今日は高校の卒業式。特にこれといった思い出のない僕は、一人悠然と教室を立ち去って、敷地内に植えてある桜の木の幹に腰掛けていた。
本当に何も残らなかったな。
自分の右手を見る。胝ひとつない滑らかな手の平。
努力しなかったわけじゃない。
練習がキツイと有名な弓道部に入って、それこそ人一倍努力した。けれど、大会で成績を収めることなく僕は引退した。
「呆気ないな。」
あれからもう半年以上が経つ。今日は卒業式なんだ。というかもう式は終わってしまったから、僕たち卒業生は今日という日が過ぎてしまうと何者でもない存在になってしまう。
ふと視界に入った女子生徒数人が 輪になって声をあげ泣いていた。
溢れ落ちる涙を手で拭うその仕草が綺麗だな と思った。
離ればなれになるのが淋しくて泣いているのか、それとも 思い出が一気に蘇ってきて気持ちが高ぶったのか。
いずれにせよ、彼女たちは、何らかの楽しい思い出との決別に涙を流しているんだと、そう思った。
僕は周りとは違う感傷に浸りながら
ただ、茫然と
散った桜の花びらを眺めていた
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