複雑・ファジー小説

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Amelia -アメリア-
日時: 2017/05/29 22:29
名前: 眠る猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: RU0wTL.b)


 あぁ、神よ。
 なぜ貴方は祝福されるべきかの者を傷つけるのか。
 なぜ私にその使命を託したのか。
 
*

初めまして、眠る猫と申します。
現代ファンタジーを目標に書いて行こうと思います。
主に登場するのはぱつきん美女と世界の都市伝説の怪物達、の、予定です…?

息抜きに書こう!というスタイルの小説なので、更新はゆっくりのんびりマイペースです。
文章力はございません。予めご了承くださいませ。


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目次
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第一話”少年と黒”
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Re: Amelia -アメリア- ( No.1 )
日時: 2017/05/30 12:33
名前: 眠る猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: y36L2xkt)

 春の暖かな日差しはあいにく鈍色の雲に阻まれていた。
 舗装路に打ち付ける雨は生温く、雨音はますます勢いを強める一方である。外へ赴く人間を少しばかり憂鬱な気分にさせるそんな朝、悲鳴が上がったのは人通りの多い交差点だった。

 雨の悪戯と言うには些か度が過ぎよう、雨にハンドルをとられ制御を失ったその車は通勤通学の人の波を裂いて歩道へとのし上がった。朝の騒然とした交差点に響くブレーキ音、ハンドルを握る彼はとうにブレーキを踏みこんでいたがもはや為す術はない。
 人々の耳にその劈(つんざ)きが聞こえた時には手遅れだった。
 間もなく大きな衝撃音と、少し遅れて悲鳴が上がる。

 金曜日の朝、死傷者を出す凄惨な事故が起こった。
 
 ある双眸は、その光景を確と捉えていた。
 120にも満たない背丈、真っ黒なランドセルを背負った、茶色い短髪の男の子だ。
 不運にも少年の目の前でその事故は起こったのだ。
「ひっ」
 彼もまた小さな悲鳴を上げ、腰が抜けそうになるのを必死に耐えていた。
(嘘。嫌だ、怖い)
 目の前の光景は、幼い彼にとって特に大きな恐怖だった。
 子供とはいえ、7歳の少年にも何が起こったかは理解はできたのだ。

 叫び声を上げる者、慌てて電話をかけ出す者、我関せずと歩き去る者、興味本位に事故現場に近づく者、そして、何もできず呆然と立つ尽くす者。様々な人間がそこにいたが、少年もその場から動けずにいるうちの一人だった。
 目を見開き、涙を浮かべながらも、少年は事故現場に釘付けになっていた。
 意図してそうしていたわけではない、ただただ動けずにいたのだ。
 しかし、少年が我に返るのにそう時間は掛からなかった。
 少年の視界の端に映った「それ」が、少年の意識を事故現場から奪い去っていったのだ。
「——!?」
 今度は、悲鳴にならない声が出た。
 少年の恐怖はすぐさま事故から「それ」に移る。


 少年の視線の先には、「黒い何か」が居た。

 少年はそれを人だと認識しようとしたが、それにしては、周囲にいる人間と比べるといやに高く、そして人とは思えぬ木の枝のような細い体躯だ。
(なに、あれ)
 「それ」は全身を黒いスーツで包んでおり、そして何より少年はその顔に目を奪われた。

 例えるなら「のっぺらぼう」だった。
 真っ白な包帯で顔を覆っていた。
 目も、鼻も、口も、耳も、全て包帯で覆い隠し、ユラユラと静かに体を揺らしながら、「それ」は人々の遥か上から事故現場を覗き込んでいる。

 異様だ。
 その得体の知れない何かに、少年は先ほどとは違った本能的な恐怖を感じた。
 逃げなければと思うも、恐怖で脚が竦み、声を上げようにも口から洩れるのは声にならない呼吸である。そして、少年は間もなくあることに気づいた。あれだけ「異様なもの」がいるのにも関わらず、自分以外の人間が誰一人としてその存在に気づいていないようなのだ。
(なんで、おかしい奴がいるのにみんな気づいてない)
 少年の額からツウ、と冷や汗が流れる。
 
 その時、少年はまた気づいてしまった。
 そのまるで得体の知れないものが、その顔が、いつの間にかこちらを向いている。
 自分を、見ている。

 その事に気づいて体が跳ね上がった。
 それは相変わらずユラユラと体を揺らしながら、人々の間をすり抜け、こちらにゆっくりと近づいてくる。「それ」が少年の方に手を伸ばしかけた所で、少年は「うわぁ」と情けない声を上げた。すると突然体の自由が利くようになり、少年たまらずその場から逃げ出したのだった。


 宙をかいたその手をゆっくりと引っ込めつつ、「それ」は見えなくなってしまった少年の方をただ静かに見つめていた。



Chapter.01”少年と黒” - 序章 完

Re: Amelia -アメリア- ( No.2 )
日時: 2017/06/05 03:03
名前: 眠る猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: RU0wTL.b)
参照: ちょっとだけメモ

「すみません」
 街中で投げられたそれは、真水のように透明感のある、よく通る声だった。
 声は騒がしい街の中の空間を縫い、道路を挟んで真向いの喫茶店へ向かおうとしていた女性の背中を呼び止める。振り返った先に居たのもまた女性だった。振り返った女性の黒と違い、彼女の髪は金色(ブロンド)。あまりに流暢な日本語で話すものなので、振りかった女性はしばしその人を「髪を染めている日本人」だと勘違いするほどだった。しかし、間もなく彼女と目が合って驚いた。それは冬の朝を思わせる透き通った空の色、綺麗なスカイブルーの瞳である。彼女は少しばかりめを細め、うっすらとクールな笑みを浮かべていた。


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