複雑・ファジー小説

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RED:RUM—HAZAMA NIGHTMARE—
日時: 2017/06/24 22:41
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: dUTUbnu5)

「僕は死んだ。代わりに僕ができた」

これは、『自分』として生きることが出来なくなった、ある『愚かな』人間の話。


RED:RUM—HAZAMA NIGHTMARE—


!!Attention!!
・この作品はR15及び18禁作品、『RED:RUM』のスピンオフ作品です。
・RED:RUMのネタバレが含まれます。閲覧の際にはご注意ください。
・この作品には『暴力描写』、『残酷描写』、『その他不快になる描写』が含まれます。
・義務教育が修了されていない方の閲覧はご遠慮ください。
・この作品はフィクションです。実在する団体、人物とは一切関係ありません。


登場人物

Main character
【廻間】《HAZAMA》:???
素顔を白い紙で隠した情報屋。白い法衣をいつも身につけており、どこか飄々としていて掴みどころがない。ある目的のために、『殺人鬼』を追っている。
ちなみに凪と嵜曰く「キチガイ」。

Sub character
【凪】《Nagi》:♂
本編において鍵となる、『殺人鬼を殺す殺人鬼』の1人。涼し気な表情で、片手に握りしめた刀を振るう。かなりの美形で自分の学校はおろか、他校にまでファンクラブが出来ている。趣味は家事。

【嵜】《Saki》:♀
本編において鍵となる、『殺人鬼を殺す殺人鬼』の1人。凪とは双子の兄妹関係にあたる。低血圧に加え、怠け精神が後押しして常に家に引きこもってゲーム三昧。仕事以外ではほとんど外には出ないほど。凪とは違い、慈悲のない瞳を向けて冷たい弾丸を殺人鬼に放つ。出るまで回せば100%



—僕は、一体『誰だったんだ』?

Re: RED:RUM—HAZAMA NIGHTMARE— ( No.1 )
日時: 2017/07/25 22:11
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: dUTUbnu5)

そよ、と、夜風が吹く。
宵闇の空には爪楊枝で開けた穴のような、輝いているのかもわからない星星が辺り一面に広がっている事だろうが、残念ながら道道の街頭が邪魔をし、台無しにしてしまっている。
そよ、と、また夜風が吹く。しかし今度は生温い。その風に頬を撫でられたせいか、気持ち悪さを覚える。隠れた眉を顰め、ため息をつく。そのため息は目の前の紙をほのかに揺らした。

「憂鬱にも程がある」

なんとなく言ってみたそれは、誰にも届くことなく、その場で浮かんで消えた。形のない言葉に浮かんで消えた、などという言葉は些か不似合いだろうが、浮かんで消えたのだ。
ひょいと先程まで座っていた場所から降りる。民家の壁の上に座っていたのだが、そこまで高く無かったようで、わざわざ膝を折りたたんで衝撃を和らげる必要は無かったようだ。またため息をついて、両手を上着のポケットに突っ込む。

「嫌だったらありゃしない」

そう言って彼か彼女か———白い紙を顔にかけた、廻間(はざま)という人物は、夜へと紛れた。

その後には、少しばかりの『赤い斑点』がこびり付いていた。


Chapter1【Melancholy】


廻間という人間は如何にして生まれたのか。それは深い深い闇が起因している。その出来事は廻間の中でも、二度と触れたくも触れられたくも、思い出したくもない物なのだが、今ここでは話す時ではない。ただひとつ言えるのは、『元々は1人の人間であったのだが、あることをきっかけに別の人間として生きることを余儀なくされた』ことだけ。そのきっかけのせいで、名前を捨て、経歴を捨て、果ては顔も捨てざるを得なくなってしまった。それが廻間だ。廻間という人間は、闇という闇が凝り固まって出来たものとも言えるのかもしれない。
そんな廻間は今、何をしているのかと言うと。

「この程度ですか?」

ある場所にある小屋の中にて、ナイフを片手に椅子に縛り付けられた男に対し、数々の拷問を強いていた。目隠しをされ、腕や足をを椅子に縛り付けられた男に対し、廻間はあくまで仕事として、拷問を強いていた。もがき苦しむ男を見やり、廻間は退屈そうにバタフライナイフを弄んでいた。カチッパチッと音がする。

「貴方の持っている情報はこちらにとても有利であり非常に重要なものなのです。さっさと吐き出して頂かないと、延々とこれを繰り返しますよ」

廻間が忠告しても、男は荒い息を吐き出すのみ。頑として口を開かないそれに、廻間はため息を長く吐く。そして片手のナイフを鋏に持ち替えた。それはとてもとてもよく切れる鋏のようだった。

「わかりましたそこまでなら。私がひとつ問いかけてそれに答えない毎に、その指を持っていきましょう」

そして廻間は遠慮なく、男の右手の小指をバチンと切った。響き渡る悲鳴。廻間はムッとしながら口を開く。

「何を痛がっているんですか。情報を出さないからこうなってるんでしょ?さあ、そんな声を出してる元気があるのなら、さっさと情報を吐き出しなさい」

2度目か3度目の忠告。男の悲鳴は鳴り止まない。

「では聞きます。◇◇◇家の『双子』に関してですが……どこからその情報を手に入れました?」

廻間は問いかけながら、右手の薬指に鋏をかける。気づかれないように、そっと。すると男は観念したかのように叫ぶ。

「◇◇◇家の奴だ!!若い男だった!!ナイフ持って、俺にいい情報だと言って教えてきた!!」
「ほう。して名前は?」
「『ハザマ』と言って———」

その瞬間、廻間の鋏は銃に変わり、確実に男の蟀谷に押し当て弾丸で貫いていた。銃声が当たりに木霊する。最後の男の一言が、廻間にそうさせた。廻間は動かなくなった男を一瞥し、舌打ちをひとつ漏らす。その後男には目もくれず、小屋から飛び出していた。

「ほんっとに憂鬱……」

苛立ち混じりに、虚空に向かってそんなことを漏らした。





廻間が肩で息をしながらやって来たのは、自らの住処である『安斎家』。元々安斎という家は、ある家の分家なのだが、本家に対し反抗的な人間が集まっている。その為なのか本家に対し、妨害をしくんだり利益を横取りしたりと、やりたい放題である。廻間はその安斎家に、心底嫌気が刺していたが、家を飛び出したりすると問答無用で連れ戻され、何をされるのかは分かっていたので、あえてしない。もう『あんなこと』はゴメンだ。
廻間は家に入るとバタバタと急ぎ足で目的地に向かう。足音は大きく、あたりに響いている。通りがかる従者たちには目もくれず、ただひたすらに目的地に足を進める。そうしているうちにある扉の目の前でピタリと止まると、廻間は遠慮なしに扉を開けてズカズカと中に入り、荒々しく扉を閉める。自分の部屋だと確認したあと、ずるずると崩れ落ちた。

「……アイツめ」

一言つぶやくと、ハァ、と深いため息を漏らす。今日だけで何回ため息をついているのだろう。数えるのも面倒だ。廻間はとにかくため息をつく。聞きたくない単語が、まさか飛び出てくるとは思わなんだ。手を顔にかかっている紙にあてがい、バリッと破く。自室ならば誰にも見られることもない。

「いつまでこれやるようになるかな……ってまあずっとか」

くしゃくしゃと白い紙を丸め、近くにあったゴミ箱に投げ捨てる。が、コツンと惜しくも縁にあたったようで、ゴミ箱の中には入らなかった。廻間はそれを見て眉をしかめた。眉をしかめるのも今日で何回目になるだろう。だが最早そんなことはどうでもいい。

「『ハザマ』……やっぱり生きてるよな」

自分の名前か否か、『ハザマ』という単語を繰り返す。それは自分に対してなのか、また別の『ハザマ』という人物に対してなのか。それは本人にしか知りえないことだ。

「もういいや。今日は寝とこう」

思い足を引きずって、ベッドへと飛び込む。ふかふかなそれは、柔らかく廻間を包んでくれた。その柔らかさに包まれた廻間は、まるでスイッチが自動的にオフになったかのように眠りへと落ちてしまった。



「今日は……悪夢を見ないで済みますように」


続く


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