複雑・ファジー小説
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- 仮面少女
- 日時: 2017/08/17 19:19
- 名前: 琴夜 虚槻 (ID: o2imsHOu)
ずっと仮面をかぶり続けた少女の話
- Re: 仮面少女 ( No.1 )
- 日時: 2017/08/17 20:19
- 名前: 琴夜 虚槻 (ID: o2imsHOu)
1同窓会
久しぶりに会った彼女は、仮面をつけていた。
「久しぶり!元気だった?」
そういう彼女は俺と話していても、仮面を外そうとはせずにそのまま元気に話していた。
明るくて、久しぶりに会えたのを本当にうれしそうにしていた。
もともと、彼女はやさしく明るく、元気な性格だった。実際、今も明るく元気で、やさしい所も動作の一つ一つから、にじみ出ていた。
だけど、俺の知っている彼女とは少し違っていた。
周りの反応からして、確実に彼女であることは間違いないのだが、どこかこう違うのだ。
例えば、いつもメガネをかけている人がいきなり、メガネをはずすと何か物足りない感じ、ちょっと違う感じがしないだろうか?
人は同じなのに、だ。今の彼女はまさにそんな感じなのだ。
その……、なんだ。恥ずかしい話だが、俺は昔から彼女が好きだった。
いつも明るく元気でやさしい彼女についつい目を引かれてしまっていた。
だから、他の人よりは彼女のことをよく見ている方だと俺は思っている。
ちなみに、今も彼女の事は好きでいる。いつも元気なのだが、たまにみせる物悲しげな雰囲気が余計気になってしまったのだ。
たぶん、今の彼女には前までにあった。その雰囲気が、微塵もないから俺にはそう思えてしまっているのかもしれない。
「おうおう、見つめちゃって。まだ好きなのかい?マナの事。」
「うん……って、お前かよ!久しぶりだな、でも全然変わってないのな。」
「『うん。』ということは、まだ好きなんだ!ほえー、一途だねぇ。まあ、ナツは変わってないよ。ほら、ナツがさ今の感じから真面目さんになるとなんかさ気持ち悪くない?」
この軽い感じでからかってくるのは、同じクラスだったナツキだ。あだ名は『ナツ』だ。
察しているかとは思うが、クラスのムードメーカーだった。だから、いつもクラスの中心にいるような奴だった。
だが、当時はどちらかと言うとおとなしい方だった俺によくからんできていた。
まぁそれなりに仲はよかった。それに、彼女とも仲が良かったと思う。
「なぁ、ナツ。あいつ、なんか変じゃないか?」
「ん?あいつって、マナの事?うーん……べつに変わってるところはないと思うけど…。別に変じゃないし。……あ、でもね……。」
「なんだ?」
「さっき話してて思ったんだけど…。なんかね、元気すぎてから回ってる気がするんだよね。気のせい?」
「そうか、同じ奴がいてよかった。じゃあまたな。」
「うん。またね〜。」
そのまま、同窓会は続きニ次会でカラオケに行く事になった。
俺は歌を歌えないし、そもそも知っている歌も少なかったので、行くのを断ろうかとしたのだが、ナツや昔の仲間たちに強引に引きとめられて結局ニ次会へ行く事になった。
そのメンバーには彼女もいた。
- Re: 仮面少女 ( No.2 )
- 日時: 2017/08/20 19:02
- 名前: 琴夜 虚槻 (ID: o2imsHOu)
2.二次会
来ていたメンバーはみんな昔仲が良かった奴がほとんどで、結構気楽だった。
意外とみんな歌がうまく、聞いているだけでもとても楽しかった。
彼女もとても楽しそうにしていたが、歌を歌おうとはしなかった。
中でもすごかったのはナツだった。ほとんどずっとマイクをはなさなかった。
それでも、歌はとてつもなくうまかったのでむしろありがたかった。
ここはドリンクバーが無料で使えるカラオケ店だった。
しばらくたったころ彼女が、ドリンクバーにドリンクを取りに行くと言ってからしばらくたっても帰ってこなかった。
心配になった俺はみんなに「ちょっとトイレに行ってくる。」と言って彼女をさがしに行った。
ニ次会をしていた時間はかなり遅かったので、客も俺たちくらいしかいなかった。
部屋から出るとその部屋の中でのさわがしさがウソかのように廊下は不気味なくらいに静まりかえっていた。
その雰囲気に俺は少し嫌な感じがして、すぐに彼女を見つけたいと思った。
ひとまず、彼女はドリンクバーに行くと言っていたからドリンクバーに行く事にした。
だが、やはりそこに彼女はいなかった。
ここは、1人一つしかグラスをもらえないからドリンクを取りに行く時はグラスも持っていかなければいけないのに、彼女はグラスを部屋のテーブルに置いたまま出ていった。
だから、ドリンクバーにいるわけがないのだ。
ということはトイレか。だが、彼女が部屋を出て行ってから三十分近く経っているのにもかかわらず戻ってきていない。
女子のふつうのトイレの時間はあまり分からないし、時間は長いと聞くがさすがに三十分は長すぎると思う。
やはりここはすみずみまでさがすしかないだろうか。
そう思うと骨が折れるがもし何かがあったなら大変だし、いそうなところをしらみつぶしにさがそう。
〜・〜・〜・〜
トイレにも外から呼びかけたが返事がなく、しばらく待っても出てこなかった。
外にいるのかと思い少し外に出てみてみたが、やはりいなかった。
もうすでに部屋に戻っているのかと思いさがしまわり歩き続けていた疲れとともに少しうなだれながら帰って行くと、ついさっきまでだれもいなかったはずの部屋に人がいる事に気付いた。
入口の近くにずっといたので最後にその部屋を見た時から客は入ってきていないはずだ。
もしかしたら彼女かもしれない。
一応ドアにはちょっとした窓がある。人間違いだったらいけないから見えにくいが少しのぞいてみた。
「————。————」
彼女は何かを言っているようだった。
よく見ると彼女は今仮面をつけていなかった。
中で言っていることはあたりまえだが、全く聞こえない。
だが、表情はどこか怒っているように見えた。……いや。怒っているというよりは暗い感じでぶつぶつと何かをつぶやき続けているような感じだった。
中にいる彼女は今までの雰囲気とは全く違っていた。
今の彼女を見て、俺はすこし怖くなってしまった。
とてもじゃないが、今すぐこの部屋のドアを開けて彼女に『どこに行ってたんだよ。』とは聞けるような雰囲気ではなかった。
- Re: 仮面少女 ( No.3 )
- 日時: 2017/08/24 11:50
- 名前: 琴夜 虚槻 (ID: o2imsHOu)
3.嘘
とにかく、彼女は見つかったから部屋にもどりみんなとカラオケに興じることにした。
部屋にもどるとちょうどナツが歌っていたところだった。
「あれー?ハヤトやっと帰って来た。なんでマナも一緒じゃないの??」
気持ちよく歌っていたところをわざわざ中断してナツが聞いてきた。
「……なんで、あいつ……と一緒に帰ってくるんだよ。」
「え〜、だってハヤト、マナのことさがしに行ったんでしょ?ずっとそわそわしてたもんね?マナがしばらく戻ってこなくて心配だったんでしょ?」
ナツがニヤニヤしながら聞いてくる。
確かにナツの言った通りの理由で彼女をさがしに行ったのだが、この部屋にはナツだけでなく他の奴らもいるし奴らはこういうネタを手に入れるとすぐにいじり始める。
だから、なるべく知られたくない。
「いや、トイレだって。あとはドリンク物色したりしてた。」
「え〜?本当に〜?三十分もたってるのに?」
「え!もうそんなに時間経ってたのか!?」
ナツが『しめた!』とばかりに顔を緩ませながら俺を責め続ける。
「ほらほら〜。本当のこといいなって〜。」
「はぁ……だからな〜。」
こうなるとどうしようもない。
こういう時のナツは怖いくらい逃げ場を潰していく。
適当にはぐらかしていくが、それもいずれできなくなってしまう。
まさに絶対絶命だ。
「ほれほれ〜。」
「あー、もー。」
「あれ?どうかしたの?ケンカ?」
不意にドアの方から声がして、ふりかえるとそこには彼女が立っていた。
「あ、マナ!やっと帰って来たー。ずいぶん遅かったね。なにしてたの?」
「え、そんなに遅かった?ごめんねー!トイレ行っててさ、考え事してたら止まんなくなちゃったのよね。」
彼女はいつも通り明るく、周りの人まで明るくするような雰囲気をかもしだしていた。
一つだけ違うのは、ずっとつけている仮面だけだ。
気のせいだろうか、最初見た時よりも仮面が分厚くなっている気がする。
「なあ、お前さ…」
「ん?どうしたの?」
そう首をかしげながら聞く彼女はとてもかわいかった……のだろう。
仮面がなければ、もっと。
「……いや、なんでもない」
そんな彼女のしぐさを見て喉から出かかっていた言葉を飲み込んだ。
「ふーん、そっか。だったらいいけど…。」
「……あれ?」
ナツが少し首をかしげた。
「あのね、マナがいない時にトイレ行ったんだけどナツ以外にトイレはいってた人いなかったよ?」
「え……、あの……ほら、あれだよ。たぶん違うトイレに入ったんじゃないかな?」
「え、そんなことないよ。だってこの店トイレ一か所にしかないもん。」
部屋の中がどんどん微妙な空気に変わっていく。
ナツが話せば話すほど彼女の顔が曇っていく。
そりゃそうだ。
だって彼女は最後、別の部屋に入っていたのに、ずっとトイレにいてそのあとそのまま部屋に帰って来たような口ぶりだったからだ。
ウソをつくのには何か理由があるのかもしれない。
ただ、この調子だと最終的にナツに追い詰められてしまう。どうにかしなければ。
「おい……そこらへんに———」
「——あ!もしかしてトイレ行ったあとにドリンク物色してたの?」
「え?」
「だってさ、そもそもマナは『ドリンクを取りに行ってくるー』とか言って部屋出て行ったんだからさ。そうじゃないの?」
「え…あ、うん。そうだよ。」
彼女は少し戸惑いながらも肯定した。
「あぁ、確かに俺がドリンクバーに行っていた時マナが来たな。」
「やっぱり!フフフ…ナツの名推理的中!これからは名探偵ナツと呼んでくれ!」
ナツが舞台俳優のような仕草で言った。
「よ、名探偵ナツ!」
「またなんかあったら頼むぜ!!」
またかつてのように昔のナツの仲間たちがその場を盛り上げた。そのおかげで、さっきまでの微妙な空気が一気に変わった。
彼女に聞きたい事があったが、このテンションの中聞くことではなかったから二人になれたら聞こうと思う。
そのままニ次会は続き、話題は今通っている大学の話になった。みんな一様に『この先生が嫌い』とか『単位がやばい』とかそんな愚痴を言っていた。
意外とみんな近い大学に行っている事が分かり、また集まって遊ぼうとお互いに連絡先を交換した。
夜も遅くなり、みんな明日大学があるから解散になった。
それぞれの方向へとみんながバラバラに帰って行った。
連絡先を交換したとしても、やはりみんな大学生であるのは変わりない。
みんな忙しいだろうからまたみんなで遊ぶきかいはもうほとんどないだろう。
そんなことを考えながらみんなと別れていると、なぜだか高校の卒業式を思い出してしまった。
そんな気分を紛らわすためにふと時計を見ると、ちょうど日付が変わろうとしていた。
「終わっちゃったね、同窓会。楽しかったな。」
いきなり声がして隣を見るとそこには彼女が立っていた。
「あれ?お前もこっちの方向なのか?」
「うん、そうだよ?だってハヤトくんと同じ大学だもん。今日初めて知ったよー。びっくりした。」
そのまま、大学での話は盛り上がった。
だが、俺には聞きたいことがあった。今ほどちょうどいいタイミングはない。ただ、楽しそうに大学の話をする彼女を見ていると、なかなか切り出せなかった。
それでも気になるものは気になる。しばらく話していると、話題が尽きたのか話が続かなくなってしまった。
それをチャンスと見て、話を切りだす事にした。
「あのさ、ちょっと聞きづらいんだけどさ……」
「ん?なになに?」
彼女が首をかしげながらいう。
「お前がさ、すっごく長い間部屋から出てただろ?」
「あ……うん。そう、だね。」
少し気まずそうに彼女はうつむいた。
「お前が戻ってきた時、ナツと俺がケンカ?してただろ。その前にな、お前のことをさがしてたんだよ。」
「え、そうなの?っていうかあの時私とドリンクバーで会ったってウソついてくれたよね。なんでかな?って思ってたんだけど。その話?」
「うん、……まあ、そんな感じ?」
話せば話すほど言いだしづらくなる。彼女もだんだん焦り始めていた。
そんな彼女にあの話をしても大丈夫なのだろうか。
「俺が部屋に戻る前に、ある部屋の前を通ったんだ。そしたら……その……」
やはり言いづらい。ここまで話したのだから話したほうがいいのだろう。
だが、そんなことよりも彼女のかなしげな雰囲気がどうしてもそれを許してくれそうにない。
「その、何?」
彼女が先をせかす。
「その、な。お前がよ………いたんだよな。その部屋の中に。」
「え……。」
「そんときのお前、なんか変だったんだよ。……いや、窓からちょっとのぞいただけだから分かんないけど。………俺ら、お前になんかした?」
「え、な、何言ってんの…?」
明らかに彼女が動揺しているのが分かった。
彼女がいままで動揺するところは何回か見たことがあるが、こんな動揺の仕方は見たことがない。それになにより、彼女らしくない。
「もし、お前に俺がなんかして、それで傷ついてしまっているなら言って欲しい。」
彼女は少しうつむいた。
「……まぁ、言いたくないなら良いよ。なんか事情があるなら良いし。それじゃ、俺はこっちだから。お前は、そっちだろ?」
「う、ん……。」
「じゃあな、大学で会えるといいな。」
彼女が行く方向とは反対の方向にある自宅へ向かおうとした。
「———ま、待って……!」
唐突に聞こえたその声に、俺が振り向くと彼女がこっちを向いて立っていた。
その声は、少し震えていた。
「なに?」
「あ、あのね。……さっきの話、の事……。話すからちょっといい?」
彼女は、たどたどしく不安気に言った。
「お、おう。いいよ。」
今の彼女は、本当の彼女のような気がして。仮面を外せるような気がして。
俺は彼女についていった。
- Re: 仮面少女 ( No.4 )
- 日時: 2017/08/29 14:51
- 名前: 琴夜 虚槻 (ID: o2imsHOu)
4.告白
着いた先は、彼女の家だった。
「さぁ、上がって。」
「あ、ああ。分かった……けど、いいのか?こんな時間に男なんか連れ込んで。」
「……?いいけど、べつに。だってハヤトくん変なことしないでしょ?それに、今から話す内容は外で立ち話には長すぎるからさ。こんな時間にあいてる店ここら辺少ないし。ね?」
———まぁ、確かに俺はこれくらいのことで変な気は起こさない。
だからといって、こんな簡単に家入れてもいいのだろうか…。少し、心配になる。
「お、おじゃまします。」
入ってまず通されたのは彼女の部屋だった。
「じゃあ、私お茶入れてくるから、くつろいでていいから。」
「おう。ありがとう。」
部屋のドアをしめて彼女は出ていった。
くつろいでくれと言われたので、言葉に甘えて足を投げ出して座った。
彼女の部屋を見回してみる。さっきは、彼女がいて緊張していて全く部屋の景色を見れなかった。
黒い。黒すぎる。
これが、俺が彼女の部屋に入ってまず最初に思ったことだ。
彼女は明るい性格で、服装も元気な感じだから、きっと部屋なんかもパステルカラー?なんかがたくさんあって元気な女の子って感じの部屋なんだろうと勝手に思っていたのだが、全く違った。むしろ想像の逆だった。
全体的に暗い色の部屋だった。ブルーではなく黒だった。
濃いめのブルーとか、淡いブルーが基調の部屋ならばなんとなくわかるが、彼女の部屋は黒が基調の部屋だった。これは…あれだろうか。ゴシックスタイルという奴ではないだろうか。
全体的になんというか、ファンタジー大好きで黒魔術とかどっぷりハマってます!みたいなのを全面的に押し出している部屋だった。
まぁ、これを違和感というのはどうかと思うが、次に感じたものは確実に違和感だろう。
彼女の部屋には全く生活感が無かったのだ。
物が極端に少なかった。引っ越したばかりではないはずだ。なのに、ほとんどのものが、新品のようだった。
ただ、本棚にはとてつもない量の本がたくさんあった。
本の名前がわからないようにすべての本に真っ黒なブックカバーがしてあった。
「な、なんだ……。この本棚。真っ黒すぎやしないか…?」
あまりに生活感がないその部屋で、異様な雰囲気を放つその本棚に俺は興味をもち近づいた。
本棚にある本も見た感じほとんど新品同様の本がそろっている中で少しくたびれたような本を手に取った。何回も読まれているようで、自然とページが開いた。
「ん?……『私は、マナ。明るくてやさしい。 忘れないこと! 疲れたら人がいないところで休けいすること。 起きたら必ず見る。 持ち歩かないこと! これを読んでいるのは私の中の———』」
続きを読もうとした時に階段の方から足音がした。彼女が戻ってきたのだろう。
あわててその奇妙な本を戻し、さっきと同じ位置に座った。
「ごめんね!待った?」
そう言いながら彼女は部屋のドアを開けて笑顔で入ってきた。
「いや、そんなことない。……意外と部屋の雰囲気が印象と違って驚いた。こういうのが好きなのか?」
「うーんとね。別にそう言うのが好きっていうわけではないんだけどね、………なんで、そんな目でみるの!?ほんとに!黒魔術とかにはまってるわけじゃないから!厨ニ病こじらせてるわけじゃないから!………もう。……あ、はい、これお茶」
彼女は意外とおとなしそうに見えて、ノリがいいしいじりがいがある。だから、高校の時はよくナツと一緒になってからかっていた。
「ん、ありがと。で、話って何だ?」
「あ、うん。えっとね、話っていうのは…。えと、あの、………信じてもらえないかもしれないんだけどさ、ずっと夢を見ているような気がするの。」
「……は?」
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なんか上三つが長かったので今回短めにしてみた。
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