複雑・ファジー小説

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表裏一体〜100degrees〜
日時: 2018/01/10 17:18
名前: 麗楓(のんたん) (ID: cetVlQWk)


生真面目で成績学年一位の副会長と自由奔放で副会長のことが大好きな生徒会長の生徒会ラブコメディー!


あらすじ↓
晴れて副会長となった赤木鈴には不満があった。
「何故こんなバカな奴等と生徒会をやらなきゃいけないのだ!?」

もう一人の副会長は置き場に困り果てたエロ本達を生徒会の本棚に敷き詰めたり、庶務委員長は「楽しいから!」という理由でたこパや鍋パを行い、ブレーカーを落とす。
更に生徒会長は「エッチしよ?」と言う始末。

こんな調子で学祭や体育祭、生徒会の仕事を乗り切ることが出来るのか?


おはこんにちばんわー。元のんたんの麗楓です。新しく連載始まるよ〜。
今回は生徒会もの?ですね。今回の主人公は男の子になります。
あと小説家になろうでも連載しています。小説カキコの内容と若干変更しています。
ようは小説家になろうのほうが大人向けに書いてます。(大して変わりませんが。)



鹿波かなみ高等学校校則第121章 生徒会についての規則ルール
1.生徒会の構成メンバーは鹿波高等学校2年生のみで結成される。
2.各生徒会メンバーは事前に理事長から通達が来る。
3.生徒会メンバーを辞退することは事情が無い限り断じて許しはしない。
4.メンバーの役職は学校内の先生方で決議される。必ず選ばれる理由があるのでご安心を。
5.メンバーの役職は変更することは出来ない。
6.理事長からのお呼びがあった場合、必ず理事長室へ向かうこと。


1.理事長からの手紙 >>4
2.下着姿の少女 >>7
3.ファーストキス >>8
4.エロ本読んでる副会長 >>9
5.チョコレート柄のパンツ >>10
6.表裏一体って >>11
7.何も難しいことはない >>12
8.たこ焼き器に生地投入 >>13
9.全員の賭け >>14
10.ポロリ!? >>15

Re: 表裏一体〜100degrees〜 ( No.12 )
日時: 2017/11/20 18:23
名前: 麗楓(のんたん) (ID: 3i0ekQB5)

やっと小説家になろうで空白の開け方、線の使い方をマスターしました。
ますます皆さんに小説らしい小説(って何だ?)を見てもらうことが出来ますね!
テストの数学? 死んだ死んだ(´・ω・`)


何も難しいことはない


 「お前、友達居るのか?」
 「え?」
 疑問文を疑問形で返してしまった。鋭い彼の質問は私の心を惑わせる。私が返事にあたふたしていると「やっぱりな」と言って私の真っ正面の席に座った。
 「リンとクロキが友達かな?」
 「それはどーも......って肝心の女友達が居ねぇじゃん」
 「リンこそ、自分の心配すれば?」
 「あのなぁ、お前同性の友達一人ぐらい作れよ。いざって時頼りになるし、それにお前一人で帰ってるだろう?」
 「......それが何」
 「帰る時の後ろ姿、すげぇ寂しそうだったぞ?」
 「あっそ」
 「だから———」
 そう言い残して彼は生徒会室を去った。私はしばらく居残って考えた。

 私の後ろ姿はそんなに寂しそうだったのだろうか?

 確かに同性の友達は居ない。異性の友達をあげるとしても、よく喋るメンツはリンとクロキだけ。別に寂しいなんて思ったことなどない。入学当初からこんな感じだ。
 リンにちょっかいをかけたり、クロキとゲームやテレビの話をしているだけで十分だと思っていた。
 同性の友達など、いつから居なかったのだろう?


 なんて考えているうちに放課後を告げるチャイムが鳴った。掃除をテキパキと終わらせて、私は帰る支度を整える。リンがあんなことを言うものだから、正直足が重い。
 「あの、紫野さん」
 「はい」
 「これ落としてたよ?」
 「ありがとう」
 会話終了。他に話すこと無くない?
 だってこれ以上続けても相手の迷惑だし、それに部活あるかもしれないし。

 "帰る時の後ろ姿、すげぇ寂しそうだったぞ?"

 うん、リンの言う通り、本当はちょっと寂しかったのかもしれない。
 だって放課後にリンみたく友達と一緒に塾に行くこともないし、クロキみたく一緒に誰かと部活に全てを捧げる身でもない。
 そうやって誰かと笑いあえる関係が欲しかった。そんな密接な関係を。

————— 私は ——————

 「紫野さんっ」
 再び相手が話しかけてきた。二回目。

 "だから、自分から行けばいいじゃん。何も難しいことねぇよ"

 「あのさぁっもし、もしよろしければなんだけど......」
 「うん、一緒に帰ろ紫野さん」
 「え?」
 「うん、だから一緒に帰ろう?」
 あれ、案外簡単、なんて思える自分が居た。弾かれたように顔を上げる。相手はきょとん、とした顔で私を見て笑った。黒髪を靡かせて彼女は走った。
 「早くっ人気のたこ焼き売り切れちゃうからっ」
 「わわっ待って、七瀬さん」
 「ストップ、クラスメートなんだから名前で呼んでよ。ね、巨峰ちゃん」
 「うん......マリ......?」
 走っていると後ろにニヤっと笑うリンが居た。どうだ、簡単だっただろう?と言わんばかりのニヤニヤ具合。
 「......ありがとう」
 小さくお礼を呟いて私は走った。リンはふっと笑ってどういたしまして、とこちらも小さく呟いた。
 彼の本心は分からない。いつも会ったらバカにしてツッコミを入れられる、そんな関係だった。でも、でも————
 
 「あり、もしかして彼のこと好きなの?」
 こちらもニヤニヤと笑っている。どうやらこういう関係が好きなようだ。私もにまっと笑って言い返す。
 
 「ええ、もちろん、愛しているわ」
 

Re: 表裏一体〜100degrees〜 ( No.13 )
日時: 2017/12/15 21:39
名前: 麗楓(のんたん) (ID: UcF0Dnla)


お久しぶりです。部活で小説書かなきゃいけないので、しばらく低浮上〜。
久しぶりなのに長い(´・ω・`)


たこ焼き器に生地投入


 「七瀬真理です! よろしくお願いしまーす」
 「わ、たしの......友達、なの」
 紫野は照れながら、それでも頬を桃色に染めて嬉しそうに話した。城宮も同じく興奮したように喋っていた。紫野の上目遣いに心を奪われたようだ。無論、俺も奪われそうなのだが。
 「まじっ紫野さんの友達なの!? 美女勢揃いじゃん。やったなぁ赤木!」
 「いいわけないだろう......」
 俺は大きなため息をつく。すかさず紫野が俺にニヤニヤと見つめてくる。そのニンマリとした微笑みは小悪魔のようだった。
 「同姓の友達作ったんだから〜ご褒美くれても良いんじゃないの〜?」
 「なっ、何が欲しいんだよ......」
 「リンからキスを求めてほしい!」
 「はぁ!?」
 高らかに笑う声が生徒会室中に響き渡る。城宮も七瀬もゲラゲラ大声で笑っていた。俺は耳の先端までカーっと赤く染まっていくのが分かった。
 「いちいち俺にイチャイチャを求めやがって! 城宮にでもやってもらえよ!」
 「クロキはエロ本に夢中だから無理よ」
 「ん、そうか......って俺は良いのかよ!?」
 さらに俺のことを笑う三人。俺は無視して書類に目を配る。生徒会役員のプロフィールについて細かく書かれていた。
 大体「クロキはエロ本に夢中だから無理」ってどんな理由だよ......。

 
 「七瀬は生徒会庶務だからな、しっかり働けよ?」
 「ブラジャー!」
 「ブラジャーじゃねぇよ!」
 七瀬真理、こいつは恐ろしい奴だ。今は敬礼してバカっぽそうだが、こいつの起こす事態を予測するのは難しい。むしろ全国模試で一位とるより難しいのではないだろうか?
 大体生徒会に入った理由(というより入らされた理由)が「生徒の更正」。去年一年間俺は同じクラスだった。もう、先生に怒られた回数などキリがない。
 授業中さえうるさいこいつは俺の天敵と言っても過言ではない。意味の分からない単語や親父ギャグを連発し、嫌われているかと思いきや色んな人から好かれている事実。
 今年は同じクラスにならなかったから、正直ホットしていた。かと思いきや、まさか紫野と友達の関係を築き、生徒会にまで加入するという俺にとっては不幸の連鎖だ。

 「今日は皆と親睦を深めるために、良いものがあるんだ!」
 トランプか、黒ひげ危機一発か? そう思っていたが、登場した物はやはり俺の度肝を抜くもの、たこ焼き器だった。
 「材料はあるから、たこ焼き作ろう!」
 「......いや何持ってきてんだよ」
 俺の話など聞かずに、すかさず城宮がプラグをコンセントにさし、電源を入れて生地をたこ焼き器に投入した。
 「おい学校のブレーカーが......」
 バツーンという衝撃音と共に部屋の電気が消えた。学校中の電気が切れたようだ。つまり学校のブレーカーが落ちた、ということだろう。
 「あららのら〜やっちゃった!」
 「あららのら〜じゃねぇよ!!!」
 その後板野先生から激怒を食らう。こりゃ面倒な奴が入ったぞ......。
 そうこうしているうちに、第一回定期テストが近づいているのだった。

Re: 表裏一体〜100degrees〜 ( No.14 )
日時: 2017/12/28 00:01
名前: 麗楓(のんたん) (ID: EX3Cp7d1)


あっという間に年末です。高校三年生になるの嫌だなぁ......(早い)
年すら明けていないのに嘆いている麗楓です。化学の模試50点満点で6点取って驚愕しています。

とりあえず、参照500突破しそうですね。いつも見てくださる皆様、ありがとうございます。
「表裏一体」がこんなに参照行くと思っていなかったです。超くだらないので......。
年内ラストの更新です。よいお年を!


全員の賭け


 教師から頼まれた仕事を無事に終えて生徒会室に向かう。ドアを開けると、そこにはお着替え中の可愛らしい下着を着た七瀬と紫野が居た。
 「赤木くんのエッチぃ!」
 「......え?」
 「リンはブラジャーなら、やっぱり情熱、いや勝負の赤色の方が好き?」
 「いやどうだっていいわ!!!」


 「赤木いいな〜。もしかしてお着替え一部始終見た?」
 「良くねぇし......てか見てねぇよ!」
 「それより赤木、親友から一生のお願いがあるんだけど」
 いきなり真面目な口調に変わる。ヘラヘラしていて脳内エロのことしか考えていない城宮には珍しい光景だ。
 「え、待って俺今結構ディスられてない?」
 そして城宮は一週間に一回、「一生のお願い作戦」を使用してくる。それは俺と城宮の仲が「親友」という言葉をアイツはあざとく言葉巧みに使って、俺の懐......いやポケットにスルリと入ってくるのだ。
 「来週のテストに向けて勉強教えて〜。学年一位の赤木に勉強教えてもらえば、俺だって学年一位取れるよな?」
 「まず二週間前から勉強始めろよ......」
 俺がため息をつくと、七瀬が急に「はいはーい!」と手をあげて話し始めた。ニヤニヤと笑みが溢れる七瀬、何か良からぬことを考えているのが想像つく。


 「"生徒会内"で教科のどれかで一番良い点数を取った人が、王様として生徒会役員に命令出来るっていうのはどう?」
 つまり王様ゲームと同じようなことをする、ということか。しかしそれならば俺が今一番有利であろう。何せ学年一位で生徒会副会長に選ばれたからな。しかし未だに何故紫野が生徒会会長に任命されたのかは謎だが......。
 「命令は先に決めちゃおう。生徒会内で私がもし何かの教科で一位を取ったら、城宮くんにねぎたこ焼き大盛りを奢ってもらう!」
 「だったら俺が一位取ったときは、そっちがねぎたこ焼き大盛り奢ってよ?」
 バチバチと火花が散る争いになりそうだ。まぁお互いが勉強の意識を高め合うことは良いことである。
 「もし私が一位取れたら......リン、キスして」
 「......は、絶対嫌だからな? 全速力で逃げるからな!?」
 「巨峰ちゃんの身体能力舐めちゃダメだよ。ただ者じゃないから」
 ただでさえ最初を奪われているのに、まさか二回目も奪われるのか?
 額から汗が滲む。それだけは絶対阻止しなければならない。しかもあんな真面目な顔で言われたら、うんともすんとも言えねぇよ。
 今は学年一位だとしても、これだけは絶対に手を抜いてはならない。もしかしたら紫野が驚異的な知能を見せて、あっという間に一位の座を奪われて強引に口づけされるかもしれない。
 ......唇柔らかかったような......。
 ハッと我に返り、両手で頬を勢いよくパシンと叩く。こんな煩悩に負けるわけにはいかない。今回の定期試験、絶対に学年一位の座を守って見せる。
 「俺が一位取ったら、全員大人しく生徒会の仕事をしてもらうからな?」
 今、誰も負けられない定期試験が始まろうとしている。

Re: 表裏一体〜100degrees〜 ( No.15 )
日時: 2018/01/09 00:26
名前: 麗楓(のんたん) (ID: .HplywZJ)


10日から学校って早いわ〜。どうも麗楓です。
北海道って基本冬休み長い(本州より夏休みが短いので、冬休み長い)から、小中でのんびり過ごしていたけど......。
流石「自称進学校」は違いますね〜。残りの50ページを越える課題&課題テストはどうしようか。


ポロリ!?


 「おい紫野」
 「おい小池みたいな言い方止めてくれる?」
 「昨日七瀬から聞いたけど、俺のこと愛してるとか言ったらしいな」
 リンは咳払いをし、真っ直ぐ私の目を見て話し始めた。
 「俺たち、そういう仲じゃねぇんだから。変なこと言うのやめろよ!」
 
 「何でリンにそんなこと言われなきゃいけないのー?」
 思いっきり腕を伸ばしてリンを見る。そっぽを向いてうつむいていた。その頬はリンゴのように真っ赤だ。
 「俺にはそういう感情一切無いからな! 勘違いすんなよ!」
 小学生のような口調で私に訴えかけてくる。その姿にククっと声が漏れてしまう。笑わずにはいられなかった。ゲラゲラ笑うと更にリンは顔を赤く染めた。
 「じゃあ今好きな人居るってこと?」
 「居るわけないだろ。再来年受験生なのに、今から彼女作ってどうすんだよ」
 「彼女って......リンは告白しても振られるでしょ」
 「俺は振られる前提なのかよ......」


 「愛してるって、大体俺のどこを好きになったんだよ。まだ出会ってから数ヵ月しか経ってねぇだろ」
 「愛に日にちなんて関係ないのよ」
 「それ大体スピード婚する奴等の言い分だな」
 「病院まで私のこと迎えに来てくれたじゃん。そこで運命を感じたのよ。もう全身にビビビーって電流が走るようにね!」
 ウインクすると、困り果てた顔で見つめ返した。はぁっと溜め息をつき、呆れているようにも感じられた。
 「お前......ずっと気になるんだけど......」
 「え、パンツ見えるの今更気づいたの?」
 「それわざとだったのかよ!?」
 ぴらっとスカートを捲ると、リンは勢いよく顔をそらした。顔が真っ赤で口をモゴモゴと手で抑えていた。
 
 「男の子ならガン見すると思ったけど、違うんだね〜」
 「いや偏見持ちすぎだろ......」
 「じゃあ」
 そう言ってワイシャツを脱いで下着姿になる。更にリンはぎょっと驚いて床に尻もちをついた。
 そのときカチャン、という音と共に胸を締め付けていたブラがポロリと落ちそうになる。
 「きゃああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 急いでホックを締めると、息が上がっていることが分かる。リンはクックッと大声で笑った。
 「お前パンツとかブラジャーは見えてもいいけど、胸はダメなんだな。そんなに焦ってる姿、初めて見たわ」

 そう言ってリンは生徒会室を出ていった。私は耳まで真っ赤に熱く染まり、すぐにワイシャツを着る。
 
 そう、その笑い方、その仕草。全部が好きなの。
 
 リンの声を聞くと、その姿を見ると、胸が熱くなってニヤケてしまう。
 「身体......あっついなぁ......」
 どこが好き、なんて本人に向かって言えるのは、まだ先の話。

Re: 表裏一体〜100degrees〜 ( No.16 )
日時: 2018/02/12 16:56
名前: 麗楓(のんたん) (ID: Y6JFMuC.)

お久しぶりです、学年末テストやばい麗楓です。ベクトル方程式意味分からん...。
学生の皆さん、勉強頑張りましょう(泣)


Hカップ


 生徒会が行われると聞いて、俺は久々に生徒会室のドアを開く。ヒンヤリと伝わる金属の感触。テストが終了して以来、一度も行われていなかったので、久しぶりだ。
 ガチャ、とドアを開けると、シクシクとすすり泣く弱そうな女性教師が居た。ぎょっと驚いて後ろに体が反る。
 「ふぇーん......助けてぇ〜」
 「......いや何してるんですか」


 「私、家庭科担当の山吹やまぶき梨子りこです。あの、ショコラちゃんは......?」
 彼女はずれ落ちた眼鏡をくいっと上にあげる。昨年家庭科を担当していた鈴木すずき先生は、結婚するということで寿退職された。そして新しく赴任してきたのが山吹先生だった。塾の後輩から聞くと、かなりドジで失敗ばかりらしい。家庭科の教師として心配な点ばかりだ。
 そして「ショコラちゃん」という言葉が気になる......。
 「ショコラ先生なら職員室だと思います。すぐに来ますよ」
 俺の後ろからヒョッコリ顔を出した七瀬がそう言うと、山吹先生は「そうですか」と言ってフワフワ巻かれた茶髪を弄ぶ。一見地味で俯いているからか、大人しそうに見える。しかし眼鏡を外すと実は美人なのではないだろうか。
 誰一人として口を開かず、室内は暫く沈黙が続く。七瀬も俺も特に話すことがなく、一人で密室に閉じ込められているような息苦しさを感じた。


 「あれ、山吹先生。どうされたんですか?」
 紙パックのオレンジジュースを口にくわえて紫野が入ってくる。沈黙を破ったのは紫野だった。そのとき、山吹先生は何かに気が付いたのか、驚いたのか、紫野にズカズカと靴を鳴らして近づく。白衣が風にフワフワと靡き、真剣な表情で紫野を見上げる。
 「あ......あなた......!」
 ワナワナと焦る彼女。突然紫野の巨乳を激しく揉み始めた。これにはさすがの紫野も驚いたようで、
 「......っ......っ!?」
 と声にならない叫びが聞こえた。俺は故障した機械のように口をポカーンと開けてフリーズするしかなかった。七瀬は「もっと行けー!」と何処から持ってきたのか、黄色のポンポンを持って山吹先生を応援していた。

 「あなたっブラジャーのサイズが合っていません!」

 「......へ?」
 「胸のカップは?」
 「さあ、Hカップぐらいですかね?」
 もう俺にはついていけない世界が広がっていた。その世界から除外されて一人、ポツンと残っているようだった。
 「聞いたことないですか? 靴下や靴が小さいのに、いつまでも履き続けていると、足が変形すること。一年生の時に習いましたよね?」
 「......はぁ」
 「ブラジャーも同じで、適切なサイズのブラジャーを付けないと、胸が変形してしまいますよ!」
 そう言ってブラジャーや服や靴のことを、まるで城宮がゲームの話をする時のように、いやそれよりも早口でペラペラと話し始めた。家庭科のことに情熱を注ぎ、愛しているのだろう。
 しばらくポカーンとしていた俺たちだったが、一瞬にして彼女の情熱の炎は消火栓でかき消された。
 「梨子! 生徒達が困ってるでしょう。話をやめて!」
 「あっショコラちゃぁぁぁん!」
 先程の真面目な教師としての印象は消え去った。子供のように甘えて板野先生に飛び付く山吹先生に一同騒然とせざるおえなかった。
 「皆さん、お騒がせしてすみません。山吹梨子先生とは同じ高校だったの。それで」
 「ショコラちゃん、今度一緒に食事しない? ショコラちゃんと同じ学校に勤務出来るなんて嬉しくて......」
 「え、まさかとは思いますが、それのために今日ここにいらっしゃったのですか?」
 「ええ、そうですが?」
 ニッコリ童顔の彼女は幼児のように微笑む。大人っぽい、と思っていたのは一瞬のことで、実はかなり精神年齢は子供なのだろう。
 そんな幼い少女のような教師に生徒会一同が振り回されるのは、そう遠くない話である。


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