複雑・ファジー小説

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異能はステータスだ!
日時: 2017/09/12 23:23
名前: カトマナ (ID: 6ARtc3ZP)

 頭が痛む。
 それは風邪や病気によるものではなく、クラスの人たちの騒ぎ声のせいだ。
 教室の真ん中で紫ノ部 雪(しののべ ゆき)は頭を抱える。先ほどの授業でもクラスメイト達は化粧をしたり、スマホをいじったりと好き勝手にするせいで授業が進まなかった。
(なんで先生とかも注意してくれないの…)
 ハア、とひとつため息を吐いた時、
「ゆーきー!!」
 雪の名前を呼ぶ声とともに、背中側に強い衝撃を受ける。振り返った先には、シャツを全開に開けて中に黒のタンクトップを着た金髪の幼馴染、鳴上 竜二(なるかみ りゅうじ)がいた。
「…竜二、あなたまた遅刻よ。いい加減ちゃんとしないと将来に響くわよ」
「雪までそんなに冷たくなってー…、俺泣いちゃうよー」

Re: 異能はステータスだ! ( No.1 )
日時: 2017/09/15 00:45
名前: カトマナ (ID: 6ARtc3ZP)

めそめそ、と泣き真似をしながら雪の頭に顎を乗っけてぐりぐりと動かす。地味に力が入っていて痛い。
 開いていた本に、お気に入りのユリの押し栞をはさんで持ったまま席を立つ。
「ちょっ、雪どこいくんだよー」
「移動教室よ、あなたも早く来なさいよ。置いて行くわよ」
 と言いながら雪は教室の扉を開けて廊下に出た。あとから竜二が慌てて雪の背中を追いかけた。



「そういえば、最近物騒なこと増えてきたよな」
「物騒なって…あの事件のこと?」
 あの事件とは、『大量行方不明事件』の事だ。ニュースなどによれば老若男女問わず十数人程の人が消えてしまうらしい。ごく一部だけ生還した者もいるらしいが、生還した者は皆口をそろえて『夕焼けが怖い、化け物が、自分が…』と訴えているらしい。
「どうせ、自殺サークルとか絡みのものじゃないの?馬鹿らしいわ」
 そんな弱いからだめになるのよ、と冷たく言い放す雪の瞳には怒りと後悔の色が宿ってた。
 小さな声で「雪」と呼んだ竜二も寂しげな顔つきになる。
 「………た……すけ…」
 少し先の廊下からか細い声が聞こえ二人はふと我に帰る。お互いが顔を見合わせ歩みを速めた。
 
 廊下の先には女子生徒がうずくまって泣いている。時折「助けて」と声をもらしている。一足早く着いた竜二は女子生徒の肩を抱き声をかける。
「おい、あんたどうしたんだ?大丈夫か?」
 だが、依然女子生徒は「助けて」としか言わない。
「ここにいるのもあれだし、とりあえず保健室に連れて行くわよ」
「あ、ああわかった!」
 雪と竜二は女子生徒を二人で抱え、保健室に連れて行こうとした。だが、二人はある違和感を感じた。女子生徒が異様なほどに<冷たい>のだ。
「な、なぁ雪、こいつなんか冷たくねぇか…?」
「…竜二、きっと気のせいよ。あれよ、この子多分末端冷え性なのよ」
「いやいやいや、いくら末端冷え性でもここまで冷たくなるわけねぇだろこれなんかおかしいって、あきらかなんかおかしいって」
 二人でわちゃわちゃと話しながら保健室まで運ぶ。扉を開けて中に入る。保健室独特のにおいが鼻につく。
 とりあえず女子生徒をいすに座らせる。今は落ち着いているようだ。そして竜二は保健室のものを探索している。
「ねえ、あなた名前は?クラスとか教えて?」
「わ…たし……?」
 名前を聞いたとたん、女子生徒の体を震わせはじめた。先ほどよりも激しく異常なほどに。
「わた…わたしわたしわたしわたしわたし!!?いやぁぁぁぁぁ!!?」
 女子生徒が叫ぶとともにまわりが夕焼け色に染まる。


Re: 異能はステータスだ! ( No.2 )
日時: 2017/09/19 00:23
名前: カトマナ (ID: 6ARtc3ZP)


 ………ここはどこだろうか。
 真っ暗な中にポツンっと雪は立っている。周りは何もない、竜二の姿もない、自分が何なのかもわからない。
(でも、なんでだろう、すごく心地いい…)
 このまま寝てしまいたいたくなるようなまどろみの中、頭の中に劈くような声が聞こえる。その声に雪は耳を強く塞いだ。
『ねえ、母さん私がんばったよ!今日もね、がっこーでお勉強一番だったんだよ!先生もほめてくれたんだ!』
 小さいころの私の声だ、と頭を抱えながらぼんやりと思う。
 何で今こんなことおもいだしているのだろうか、回らない頭を必死にかき乱し、思考する。
『雪!』
 頭のなかに竜二の声が響いた。
『お前の下着、拾っちゃった☆』
………


「どうゆうことーーー!!!?」
「いだぁぁ!!」
 体を起こした雪の手は華麗に竜二の脳天へ振り落とされた。竜二は痛みのあまりに頭を抑えながらゴロゴロと転がっている。雪も雪でさっきまでの強烈な感覚のせいで息を荒げている。
「なにすんだよ!これ絶対頭凹んでる!めちゃくちゃいてーし!」
「ご、ごめん…でもあなたのせいでもあるんだからね」
 ぷい、と雪は開き直ってしまった。
 少しおちつきを取り戻した二人はその場から立ち上がり周りを見渡した。
 場所は保健室で間違いない、さっき竜二がいじっていた棚がそのままになっていた。だが問題は、さっきまで一緒にいた女子生徒が消えたことと外の景色が気味が悪いほどの夕焼けに染まっていることだ。
 時間はちょうど夕方、本来ならこの夕焼けに何も思わないがこのときばかりは嫌な予感がしていた。

Re: 異能はステータスだ! ( No.3 )
日時: 2017/11/08 23:05
名前: カトマナ (ID: I2AL/1Kk)

「なあ、俺なーんか嫌な予感がするんだけど…」
「奇遇ね、私も嫌な感じがするわ…」
 少しの不安と、警戒心で雪と竜二はひとまず保健室から出る。
 廊下はさっきまでの喧騒がうその様に静まり返っている。いや、そもそも人間の気配がしないのだ。
 廊下にはひたひたと二人分の足音だけが響く。学校の生徒は何処に行ったのだろうか。
「雪」
 唐突に名前を呼ばれる。雪が横を向くと何処となく張り詰めたような雰囲気が漂う。
「……どうしたのよ。いきなり名前だけ呼ぶなんて」
 たまに、だ。たまに竜二は雪に対してこのような雰囲気をおこす。それが何のためなのか何が目的なのかはよくわからない。だが、雪は心を見透かされているのではないかと思ってしまう。踏み込んでほしくない、どうか知らないままでいてほしい、そんな思いを見つめあう竜二に向ける。
 お互いが無言で見つめあう中、
『ああああああああぁぁっぁああああああ!???!!』
 静寂を切り裂くような叫びが廊下を駆けめぐる。今の声は…。
「…曲がり角の先から聞こえたわ…」
 二人は廊下の曲がり角の先にいる人物を発見した。それは、二人の前から姿を消したあの女子生徒だった。
『なんでなんでなんでなんでなんで………』
 しきりになんでと言いながらうずくまり、ひざを抱えている。体からは黒や紫、紺色の人間の『手』が生えていた。
「なんていうか、そのなんかあれだな」
「何処の語彙力なくなった馬鹿なのしっかりしなさいよ!」
そう言いながらも、雪の体は恐怖におびえる少女のように小刻みに震えていた。あれは、『人間』なの…?
 頭の中が真っ白になり、視界が歪む。それなのに雪の足は女子生徒の方へ進む。それは自分から進んでいるわけではない、だが、止まることもできずゆっくりと近づく。
 ヤダ、ヤダヤダ…怖い誰か助けて…!
 あと一歩のところで突然雪の持っている鞄から光があふれ出した。いや、正確には鞄の中に入っている本の一冊が光りだしたのだ。


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