複雑・ファジー小説
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- スケバンよJKをよろしく。
- 日時: 2017/11/30 21:52
- 名前: 梶原明生 (ID: .2ijTo35)
あらすじ……「てめぇらっナヨナヨ男に媚び売ってんじゃねぇ」「何だこの茶髪はっ生意気なんだよっ」罵声が聞こえる駅構内。ここは昭和60年4月の埼玉県某町。威勢良く女子高生を取り締まるスケバンがいた。名前は白岩一恵16歳。「カミソリの白岩」と聞けば、だれもが震え上がる札付きのスケバンだった。引き摺る長丈のスカートにペッタンコの学生カバン。取手には赤テープがぐるぐる巻きにしてある。今日は恒例、新入生への焼き入れである。「たく、どいつもこいつも」呟きながら架線スレスレのホームを歩いていたが、「危ないっ一恵ちゃん。」遠くからミニスカートにブレザーを着てポニーテールにした女子高生が駆けてくる。「てめぇ誰だっ何て格好…」言いかけた白岩が何者かに突き飛ばされる。電車に轢かれる瞬間、彼女は消えていた。いや、正確には見知らぬ街にいた。誰もが四角い手鏡に耳を当てて喋ったり、四角い手鏡を見ながら指で押したりしてる。「はっ…何だこいつら。独り言喋ってキ○ガイか…」立ち上がったら目の前の電気店に驚愕した。見知らぬ製品もさることながら、彼女が驚いたのは年号。「2017年制…なんだこれ。」するとさっきのミニスカート女が歩いてきた。「てめぇさっきの。」「え、え、何ですか。スケバンコスプレ、今時に。」「うるせーっ、どこの学校だ。学生証は…嵯峨野萌美、は、くさみ、もぎみ、何だよこの名前。」次第に一恵は自分がタイムスリップしたことを気づきはじめた。「まさかっ、嘘だろ。」…スケバンと今時JKの凸凹コンビが織りなす青春ハートフルアクション。
- Re: スケバンよJKをよろしく。 ( No.13 )
- 日時: 2018/05/14 16:10
- 名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)
…「16歳16歳うるせーんだよ。」「いや、この16がポイントさ。16掛3はいくらだ。」「ああ、16っ。えーっと」白岩が窮してる中、脇から里沙が割り込む。「48でしょ。」「正解。では4+8は。」「バカにすんな。それぐらいわかる。12だろ。」白岩がどや顔で応える。「そうだ。この数字に合わさった時、時空の歪みが生じ、タイムスリップしやすいというある研究結果がある。特に年齢が16歳の女の子が三人の思念が重なりあった瞬間だから、宝くじに当たるより確率が低い。だが君達は重なった。」ポカーンとした顔で義風を見る。「君には無理な説明か。要はごく稀な現象で君はこの時代に来たわけだ。話を戻そう。君は電車に跳ねられ即死。事故として処理されたが、一部目撃者にはミニスカートの女子高生が突き飛ばしたとの情報があったものの、この話はお蔵入りとなった。これがことの真相だよ。」「ミニスカート…」曖昧だった一瞬の記憶が鮮明になりだした。「萌美…」助けようと走ってきたのは確かに彼女だが、突き飛ばしたやつも、萌美だったような。しかし何故だ、萌美が突き飛ばしておきながら萌美が助けに来るなんてありえない。「どうしたの一恵ちゃん。」「いや、何でもない。」何かの錯覚だろうと自分に言い聞かせる一恵。「はい、ピザお待ち。」平たい箱を手に持ち、大吾が部屋に入ってくる。「よう待ってたぜ。先ずは腹拵えだ。皆食え。」一恵は義風に向かって聞く。「なぁ、ところでこいつ誰なんだよ。」「こいつはないだろ一恵ちゃん。助け合った仲だろ。」「まぁ大吾、抑えろ。こいつは俺の後輩。と言うより青田苅りかな。」「はっ、青田…」「まぁつまりは自衛隊の見習いアルバイトかな。さて、食べて食べて。」わけわからないままピザにかぶりつく一恵。「それはいいけどよ。おっさん、あたし帰れるんだよね。昭和60年に。」「いや無理だ。」「はぁ、何で。」「考えてもみなよ。君は死んでるんだよ。もし帰れば歴史や時空に影響する。残念だが…」「ふざけんな。」コーラ缶を投げつけて立ち去る一恵。「一恵ちゃん。」「いい、今はそっとしといたほうがいい。」義風は里沙を制した。その頃、萌美は下校してマンションに帰ろうとしていた。かつてのあのつみきが彼女を待っていた。「ツミッキー久しぶり。何かわかった。」「それがね、あの人。…」「一恵ちゃんがどうしたの。」「あなたのおばあちゃん殺してた。」…続く。
- Re: スケバンよJKをよろしく。 ( No.14 )
- 日時: 2018/05/18 18:38
- 名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)
…「ど、どういうこと。」「うん、白岩一恵って名前でタイムスリップと同時進行で色々調べてたんだけど、そしたら保科つぐみって名前の女性に行き当たったの。心当たりあるよね。」それを聞いた途端、萌美は全神経が逆立った。「お婆ちゃん。」「そう。だからあまり語りたくないんだけど…」つみきが渋るのも無理ない。保科つぐみは母の母、すなわち祖母に当たる。母がまだ幼い頃、つぐみは埼玉県で中学教師をしていた。新任同士の職場結婚で萌美の母は生まれた。産後も、不良行為を行う生徒の更生に力を注いでいたのだが、彼女が受け持つクラスの不良少女が…白岩一恵だったのだ。彼女は中学時代からあらゆる中学に出向いてスケバンにケンカを売り、勝利を勝ち取っていた。苦情対応していた保科は、ことあるごとに対立していたのだ。そして事件は起こった。ある日何者かに襲撃され、頭を強く打ち重傷。一週間後に意識不明のままこの世を去った。警察は白岩達を最初に疑ったものの、未成年で証拠不十分なことから釈放し、以来未解決事件として時効を迎えた。母からは白岩のことは知らされなかったものの、事件に関する怨み節は幾度となく幼い頃から聞かされてきた。まさかその容疑者が自分のそばに…「そんな、一恵ちゃんが。」暫く茫然自失となる萌美。「萌、大丈夫。」「大丈夫。今からオジサンとこ行ってくる。」「萌…」つみきは彼女の後ろに着いていった。行く途中、出てきた先ほどの一恵とバッタリ出会う。「よぉ、萌美じゃねーか。こっちはさ…」言いかけて彼女の雰囲気がガラリと変わっていることに面食らった。「どうした…」「保科つぐみって知ってるよね。」「な、…知らねーな。」「とぼけないで。あなたの中学時代の担任でしょ。覚えてないはずない。」「ああ、そういやいたっけ。それがどうした。」「どうした…よくそんなこと言えるよね。私のお婆ちゃんだよその人。」「何だと…」「私のお母さんの旧妙は保科。つまりあなたの担任だった。これだけ言えばわかるよね。」チラリとつみきを見るなり呆れた言い方でごまかす一恵。「チェッ。つみきも一緒だからてっきり帰れる吉報でもあるのかと期待してたらこのザマか。言っとくがあの先広が悪いんだよ。」「一恵ちゃん。」怒り高まった時、昭和60年4月の埼玉県某駅にタイムスリップしていた。「何だテメーッ。」そんな叫び声が横から聞こえる。間違いない、一恵だ。「一恵ーっ。」列車が来る時、彼女は突進していた。…続く。
- Re: スケバンよJKをよろしく。 ( No.15 )
- 日時: 2018/05/23 17:58
- 名前: 梶原明生 (ID: 70vEHkeO)
…「あっ、何だっ。」一恵が舌打ち混じりに振り向くと、萌美の体当たりに突き飛ばされていた。「マジかよっ」と思う間もなく線路に落ちて列車に轢かれた。「キャーッ。」女子高生達が悲鳴を上げる。「私、あなた私。私のあなたがやったの。」萌美が萌美に問いかける。「ふ、双子…」周囲は同じ顔の二人を見て呟いた「そうよ、いけなかった。お婆ちゃんの仇取って何が悪いの。」そう叫んだ時、いきなりまたべつの場所へ転移していた。砕岩場のような亜空間にポツリと二人は立っている。「これは、一体…」ふと気がつくと、遠くから誰かが近づくのがわかった。甲斐と里沙である。「君が突き飛ばした方の萌美君だね。君は怒りと憎しみに任せて白岩を突き飛ばした。しかしそれで良かったと思うか。」「でも…」「でもはなしだ。正直に言うんだ。」「それは……すっきりはしてません。てか、あなたは一体誰なんですか。」甲斐は今までのことをかいつまんで説明した。「…甲斐さんの言う通りだよ萌。確かに一恵ちゃんは嫌なとこあるけど、根は悪い子じゃないと思う。」理屈は分かっていても感情がそれを許さない。しばし沈黙する萌美。「さて、それでは時空を元に戻すとするか。」徐に石を取り出して強く握る甲斐。すると青白い光に包まれて現在の、マンション前に戻った。もう一人の萌美は消えて、代わりにそこには一恵がいた。「な、なんだよ急にいなくなったと思ったら数が増えたな。」一恵はおののいて叫んだ。「すまんが話がある。もう一度マンションに戻ってくれないか。」「な、何…」怪訝そうにする一恵。終始無言のまま萌美はおじさんの部屋に向かった。…続く。
- Re: スケバンよJKをよろしく。 ( No.16 )
- 日時: 2018/06/11 14:27
- 名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)
…部屋に入ると開口一番に甲斐は真相に迫った。「もしかしたら君は一つ違いの弟を庇ってんじゃないか。」「なっ…」いつもの啖呵切る台詞は出てこず、黙りをきめる一恵。「図星だな。」「ちっ、違う。龍二は違う。」「君のたった一人の弟なのはわかる。君の仲間思いも立派だ。しかしその連帯意識と兄弟結束は時として悲劇を生む。君は嵯峨野を目の前にしても、嘘をつく気か。今大事なのは何か君もわかってるはずだ。彼女の目を見ろ。」しどろもどろになりながら萌美を見た。怒りの目であり、かつて自分を助けた仲間の目でもあった。「ごめんよ。これも何かの因縁かもな。まさか先公の孫と関わるなんて。わかったよ。だけど本当はわからねーんだ。一度あの事件の後問い詰めたんだ。龍二はやってないの一点張りで、でも出てった時間と仕返ししてやると言ってたのと重なって、間違いないって思ってて…でも、あんなやつでもたった一人の弟。マッポに突き出すくらいなら黙り決め込むほうがましだと思ってさ。」「一恵ちゃん。」萌美の怒りが段々後悔の念に変わる。「でっ、その弟の白岩龍二は今どうなっていると思う。」「どうって、おっさんそれどういう意味だよ。」「俺達が追ってる国際指名手配されたテロリストだ。すでに三件の爆弾テロに関わり、今、日本に舞い戻ってテロを計画中との情報がある。」「何だって、嘘だっ、龍二がそんな。」胸倉つかむ一恵。「嘘だと思うならこの資料を読め。」バッグからファイルのようなものを取り出した。むしり取るように持って読み漁る一恵。「そんな…龍二あんたあたしの気持ちを踏みにじってこんな人殺しに…」へたり込む彼女に里沙は寄り添う。甲斐は膝立ちになって提案する。「そこでだ。君に手伝ってほしいことがある。」甲斐は徐に話はじめる。…続く。
- Re: スケバンよJKをよろしく。 ( No.17 )
- 日時: 2018/06/30 15:52
- 名前: 梶原明生 (ID: j4S7OPQG)
・・・「埼玉のスケバン復活。その名は白岩一恵ってタイトルで一時的なブログとYouTube配信を行うんだ。これを君の弟が見逃すはずはない。大吾がその制作に携わるから、後はこいつの支持に従って。そしてもし、君の弟らしき人物が接触してきたら、待ち合わせ場所を指定しておびき寄せる。後は君自身その場所から退避してくれ。そこからはプロの仕事だ。」「あ、任せて逃げろってか。殺すつもりだろ。」「なに言ってる。拘束するだけだ。」「お前らマッポの言うことなんか宛になるか。あたしもその現場に残る。第一あたしの姿が消えたら逃げるに決まってんだろ。あいつの性格はよく知ってんだ。だからそれが協力する条件だ。呑めなきゃお断りだよ。」しばらく考え込む甲斐。「わかった。条件を呑もう。」「そうこなくっちゃ。おっさん話わかるじゃん。」「おっさんね・・・」苦笑いする甲斐。早速YouTube用ビデオ撮影が始まった。「な、何て格好すりゃいいんだよ。チーズとか・・・」「おいおい一恵ちゃん。写真じゃないんだから、これビデオカメラ。わかる・・・」「う、うっせー。一恵ちゃんとか気安くよぶな馬鹿野郎。」「じゃあ何て呼ぶんだよ。」「し、し、白岩とかさ・・・」「え、何て。」「何でもない。だからセリフとかさ・・・」傍らで見ていた萌美と里沙は顔を見合わせて一つの答えにたどり着いた。「いつもの一恵ちゃんらしくないね。」「うん、しどろもどろって言うか何と言うか」「もしかして・・・」「もしかするよこれ。」大吾に一恵が恋していることに気が付いたのだ。「はい、いつものようにスケバンらしく啖呵きって。」「あ、あの、あたしは白岩一恵です。」「おいおい、いつもの勢いどうしたんだよ。あんだけケンカしてきた君らしくないぜ。まるで出会い系動画の挨拶みたいだよ。もっとはりきって・・・」言いかけたところで萌美が割り込む。「あーっ、大吾君。ちょっといいかな。」「何々いきなり。まさかこ・く・は・くじゃないよね。」「あーっ、らりらりえーっ・・・とにかくこっちに。」奇声で誤魔化しつつ、別の部屋まで引っ張り込む。「もう、大吾君鈍いんだから。今の一恵ちゃんの変化わからなかったの。」「え、何か変わったかな。」「だから、とにかくビデオ撮影は私にさせて。横から指示してくれればいいから。」「うん、いいけど・・・」そこへ一恵がドアを粗々しく開けてきた。「萌美、あんたまさか抜け駆けしようと・・・」「あーっ」違う違う勘違いしないで。カメラマンは私がやりたいと。」「なーんだ、そうかよ。」ほっと胸を撫で下ろす萌美。「はぁ、抜け駆けって何だ。」「もう、鈍いんだから。」・・・続く。