複雑・ファジー小説
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- 殺したいほど君を愛してる
- 日時: 2017/12/01 23:41
- 名前: 蜜柑 (ID: jBbC/kU.)
1番最初に死のうとしたのは15の時。
両親の虐待に耐えきれず、わたしは家を飛び出した。
数日ぶりの外の世界は煌めいて見えた。
街ゆく人も、立ち並ぶビルも、何気なく置いてあるベンチも、その周りにいるハトも、落ちていた空き缶でさえ、まるでわたしを祝福しているかのように思った。
晴れ渡る冬の空は雲一つなく、太陽がわたしを強く照りつける。
辺りを見渡せば、人は陽の光を嫌うかのように日陰に行き、笑顔で話している。
わたしにとってこの光は、希望だ。
これからのわたしへの、希望の光。
ここからわたしの人生は再スタートする。
だけど現実はそんな理想だけではうまくいかず、わたしは住むところもなかった。
東京は冷たい人ばかりだと言うが、本当にそうだ。
12月に半袖で凍えているわたしを見て、人は嘲笑うかのようにして通り過ぎて行く。
お金も使い切った、着る服もない。
どうしたらいいのかわからなかった。
けど家にいるよりはマシ。
外で凍えている方がよっぽど幸せだ。
今日は公園でも探そうか。
- Re: 殺したいほど君を愛してる ( No.1 )
- 日時: 2017/12/01 23:42
- 名前: 蜜柑 (ID: jBbC/kU.)
ある夜のことだった。
いつも通り公園で凍えていると、夜中だと言うのに人の声が聞こえた。
声はわたしの方に近づいてくる。
怖かった。
逃げ出したかった。
「あ、やっぱりいる」
1人の女が土管を覗いて、わたしを見て微笑んだ。
嘲笑いに来たのだろうか。
わたしが怯えた表情を浮かべていると、後ろから男が2人、彼女の後ろからわたしを覗きこんだ。
一体なんなんだ。
「大丈夫?あなた、ずっとここにいるって噂だったから。そんな寒いのに大丈夫かなって思って話しかけちゃった」
彼女は優しく微笑んだ。
大人っぽい顔立ちが、途端に和らいだ。
そのあと、わたしは土管から出て、彼女たちから暖かい服と毛布をかけてもらった。
「少しでも力になれればいいと思ってさ」
男の一人がそう言って微笑んだ。
なんだ、冷たい人ばかりじゃないじゃないか、東京も。
その後、わたしは彼女たちについていき、しばらく居候させてもらうことになった。
「あたしは谷村美和!よろしくね」
美和はそう言って優しく微笑んだ。
「俺は七島弘樹」
「俺は多田典哉、美和と付き合ってんだ〜」
彼らはそう言って自己紹介をしてきた。
美和も七島も多田も、人の良さそうな人物だった。
「えっとぉ、名前…言える?」
美和にそう言われ、わたしはカラカラの喉を精一杯使い、声を発した。
「……伊藤、茉里」
すると、美和は「マリちゃんか!よろしくね」と微笑んだ。
この3人との出会いが、わたしの人生を大きく左右した。
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彼女たちと暮らしはじめて1週間が経った頃だった。
「美和ちゃん、弘樹くん、典哉さん、お風呂どうぞ」
茉里が風呂をあがったとき、優しかった3人の態度がいつもと違った。
「……美和、ちゃん?」
茉里が美和を見ると、彼女は信じられない形相でこちらを睨みつけた。
「茉里、外いく準備しな」
「え?どうして、どこに……?」
茉里が戸惑っていると、七島が立ち上がり、茉里の髪の毛を引っ張った。
「おい茉里、はやく準備しろって言ってんのが聞こえねえのか」
「痛い!痛いよ!どこに行くの?!」
茉里が必死の抵抗をすると、典哉はため息をついてから言った。
「お前16になるんだろ?使えるもんは使うんだよ」
「……どういう、こと?」
そのあと茉里は3人に無理やり車に乗せられた。
どんなに暴れても車から出ることはできなかった。
いったい何が起きているのだ。
「ついたよ。降りな」
しばらくしたとき、美和が言った。
茉里が顔を上げると、そこは都内のラブホテルだった。
「え、なに、ここ……」
茉里が驚いた表情を浮かべていると、美和が面倒臭そうにいった。
「あんたさ、タダで人んちに居候しようなんて図々しいんだよ。だから稼いでこいって言ってんの。約束はもう取り付けてあるから」
「……約束?どういうこと?わたし、だったらバイトでもなんでもーーーー」
茉里がそこまで言ったところで、典哉がいった。
「だからバイトしてこいって言ってんだよ。部屋で待ってるおっさんとヤるだけでいいから」
「そんなの……!」
「いいから早く行けよ。お前の下着姿、ネットにばらまかれたくなければな」
典哉がそう言うと、弘樹は写真を投げてきた。
そこには、下着姿で寝ている茉里の姿があった。
まさか寝ている間に……?
最初からこのつもりでわたしを……?
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