複雑・ファジー小説
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- 植物園と少年のピアノ
- 日時: 2018/01/23 18:17
- 名前: 倉戸 (ID: HpE/sQXo)
街から離れた植物園
時々ピアノの音色が聴こえる
激しかったり優しかったり気分次第で変わる雰囲気。
でもそれがどこか不器用なのが良くて。
俺が大好きな曲なんだ。
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第一章 【噂】
「最近森の奥からピアノの音がしませんか?」
最近街はこの話題で持ちきりだった。隣に居る『樹』も気になるようで。
「そうだね。」
俺は適当に返事をし、部屋へ戻る支度をする。帰ろうとすると「司さん!」と樹が呼び止めた。
「何?」
「何?じゃありませんよ!気にならないんですか?そのピアノの事。」
「俺はあまり興味は無いかな。」
ブーブー言いながら後ろを付いてくる樹。俺は、振り返り聞いてみた。
「そのピアノを弾いているの、誰だと思う?」
そう聞くと樹は優しく微笑み、言う。答えを期待していると、
「誰でしょうね。」
ガクッと肩を落とした。なんて適当な答えなんだ。そこまで気にしていないのかもしれない。
おいおいっと、樹の肩を軽く叩いて、俺はある場所に向かった。
ガラス張りの壁が大きく育った木を丸く囲っている。随分手入れされていないが植物だけは
不思議と生き生きとしていて、雑草も所々見える。
ピアノが弾かれているのは、この植物園、建物の真ん中に白い大きなグランドピアノが有り、音はまあまあ良い方だと思う。
譜面台を見ると、真新しい綺麗な楽譜とメモが張り付けてある。ぶっきらぼうな字で『弾いてくれ』
と、書かれている。
彼奴らしい文章と文字にクスッと笑い、その楽譜を鞄に入れ、今にも外れそうなガラスの扉をそっと開ける。
どこでも聴いたことの無いメロディ、激しくなったり優しくなったりと忙しい曲。
少し下手な曲が俺は好きで彼奴の作った曲を弾き続けていた。昔から、ずっと。