複雑・ファジー小説
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- 我儘
- 日時: 2018/01/28 04:47
- 名前: りさ (ID: Mm9jHYga)
嵩垣梗花…おとなしそうな容姿。
西山孝也…梗花の同級生。金持ち。
久留米紫乃…梗花の友達。いい子。
原嶋麟太郎…孝也のお友達。チャラい。
- Re: 我儘 ( No.1 )
- 日時: 2018/01/28 05:22
- 名前: りさ (ID: Mm9jHYga)
大谷慎一に振られたのは3ヶ月前、これでも一年半は続いた。
「なんかさ…冷めたっていうか、限界」
「…うん」
「ごめん、最近重いし好きじゃなくなった」
「…」
「いい人見つかるよ、俺なんかより」
「慎ちゃんが、いいの」
「だけど俺は…」
高校が別々になり、慎一が部活で忙しくなって、会う回数が減って、一緒にいることもなくなり、結局冷められた。なんとなく察する。察していた、いつものようにLINEをしても、電話をしても何かが違う。重いって何?よくわかんない。独占欲が強いってこと?確かに私はほかの女の子とは一緒にいて欲しくない。でも連絡先を見たり、○○ちゃんと離さないでとか、慎一の周りにいる女子に危害を加えたりはしたことない。
こうして、嵩垣梗花の初恋は幕を閉じた。未だに辛い、あんなに優しくてちょっと強引な慎一がまだ好き。
「ねぇ、梗花!」
「うわっ…何…?」
紫乃がいきなり机を揺らすからびっくりした。
「大丈夫?」
「…に見える?」
「ううん…」
このところ、元気がない。いつもうるさくてギャグ線高めな梗花はどこかへ行ってしまった。まぁ理由はわかる、中学からラブラブで文化祭にも来てたかなりイケメンで高身長な彼を失った梗花は辛いと思う(そこが重要じゃないのは自分でもわかる)。
「引きずってるなら、再トライしたら?」
「多分ダメだと思う、あんなに優しい慎ちゃんに限界って言われたんだよ」
「…そっか、でも向こうだって梗花のこと忘れらんないでしょ。大谷くんも初恋だったんだから」
「私のこと考えてくれる内が花だね」
あ、こういうのが重いのかな?
「ねぇ紫乃、私って重い?」
「あー、ん?、いや、うーん、どうだろ」
「わかんないわ」
「普通じゃね?高校生女子にしては珍しく一途」
「そうかな…」
「相手次第ってのもありそうだよね、受け取り方?」
「おうおう」
なるほど…難しいけど理屈はわかる。
こうして日常は過ぎていく。さよなら毎日。
- Re: 我儘 ( No.2 )
- 日時: 2018/01/28 06:19
- 名前: りさ (ID: Mm9jHYga)
いつも朝が来なければいいと思っている。夜になれば君といた事を思い出しちゃうし、なんだか1人で悲しい気持ちになるから、うん。
「今日も帰んなくていいかな…」
今年の4月に親が離婚した、父親と二人暮し。母親はもう男と2人で同棲しているらしい。父親は育児放棄、母親はアルコール依存からやっと抜け出した。母親は暴力、暴言が酷かったけど離婚した途端、私への依存が強く毎日家に電話をしてくる(自分の携帯からは着信拒否)。たまに押しかけてくるが、離婚して私には会えないことになっているはず。ぶっちゃけ親権はどっちでも良かった、父親は家に帰ってこない。両方の祖父母も注意しない。みんなあたまおかしー、おそろしー。
なんてこと、周りに話す気は無い。みんなそうでしょう。辛いのは一緒。
「でも、補導されちゃうしなぁ」
週に2、3回は家に帰らない日がある。日付を跨いでも連絡もしてこない父親。朝帰ると、机の上に1万円だけ置いてある。
現実味のない話だけど、本当にあるんだよ。
私は今日も1人、私には慎ちゃんがいなくなって誰もいなくなった。私には弟がいる、多分声変わりしてしまったけど。
- Re: 我儘 ( No.3 )
- 日時: 2018/01/28 09:45
- 名前: りさ (ID: Mm9jHYga)
夜八時、紫乃と分かれ街をうろついていた。私は化粧っ気もなく、可愛い訳でもなくて超普通かそれ以下のJKなので、ナンパにも引っかからない。
「お腹空いてないなぁ」
1人カラオケでも行くか。ぼーっと人混みを避けて歩いていたら、ギャルちっくな集団にぶつかった。軽く舌打ちをされて、私は思わず頭を下げる。ため息が出た、私は本当に可愛くない。せめてオシャレでもしないといけないのに、高校生なのに、何に対してもやる気が出ない。喪失感に似た。
試しにスカートのウェストの部分を捲って、スカートを短くしてみた。第1ボタンも開けて、ネクタイを緩めてみた。ショウウィンドウで見ると、なんだかただの不良に見える。本当は私だってグレてもおかしくない人生なのにここまで自己主張がなくて、空気を読んでガヤばっかりしてるように育ってるのがすごい。交差点を渡って少し歩いた先に、カラオケがある。
「いらっしゃいませ」
「1人で、2時間お願いします」
受付を済ませて、店の奥に進んでいく。
「あれ?梗花じゃん」
「健五だ」
那良健五、中学の同級生で慎ちゃんの仲が良かった友達。今はバスケの特待生で部活忙しいはずだけど、今日はオフ日なのかな。
「彼女ときたの?」
「は?いねーわ、1人?」
「おう」
「歌わね?」
は、恥ずかしいよわ。
「俺もヒトカラなんよ」
健五は身長が伸びてすっかり大人っぽくなった。今頃、慎ちゃんもずっとかっこよくなってるのかな
「はぁーもう声出ねぇよ」
「健五相変わらず音痴な」
「うるせえよ」
ひと段落、私と健五はソファーに座る。別れたこと、聞いてるのかな。
「…聞いたよ、アイツから」
「うん、振られたよ」
「アイツも馬鹿だよなぁ、なんで振られて落ち込んでんだか」
「え、」
「あ、」
「何?」
「なんでもねぇ」
一瞬何か思い出した健五は、私が反応すると白々しく俯いた。
「もしかして…新しい彼女できたとか?」
「…まぁ、らしいな」
そうだよね、モテるから仕方ないか。私のこと考えてくれてるうちが花なんて馬鹿みたいなこと言った自分死ね。
「落ち込むなって…じゃあ飯食いに行こうぜ!」
やや強引に連れ出されて、また少し肌寒くなった街に出る。前方の方から同じ高校の制服を着た男子の集団が歩いてきた。同じクラスの人達数人。すれ違うときにちょっと数奇な目で見られた。学校も行きづらくなる。
「よし、ここめちゃくちゃ美味いから」
引き戸を開けて、小汚いけど香ばしい匂いのするラーメン屋へ来た。
「何頼もかな」
「豚骨だぜやっぱ」
店員を呼び止め、豚骨2つと言ってしまった。
「新しい彼氏作るのが一番!俺も彼女作るから、お前も頑張ってマジで」
「しばらくいらないかなー…あんま早くに新しい彼氏作ってもクソビッチの称号が与えられるだけじゃんかよ」
「いいじゃん、男もヤリチンぐらいがちょうど良さげよ」
「うわ、きもい」
「あ、笑った!」
私を指さしてニヒニヒ笑う。
- Re: 我儘 ( No.4 )
- 日時: 2018/01/29 20:18
- 名前: りさ (ID: Mm9jHYga)
夜10時、近所の公園を2人で歩いていた。
「俺さ、バスケ特待で入ったじゃん」
「うん」
「早速足悪くして試合も出れんし動けないんだよな、だから今日嫌なこと忘れるために!カラオケに来たわけよ!」
「私もだよ」
「ほうほう」
「…どうしたらいいかわかんないや」
思わず本音が出る、意識してないとネガティブなことばっかり考える。
「相談できる人高校にはいるのか?」
「うん、何人か。友達少ないんだよね」
「でも大体そんなもんじゃね!あ!あいつ知ってる?西山孝也!」
「同じクラスだよ」
「あいつさ、同じ県選抜だったんよね。俺はもちろん1番手なんだけど、あいつもスタメンでクソ上手いから」
あれ、西山くんって帰宅部。つか、うちの高校ほぼみんな部活入ってなくね?クラスの半分は帰宅部だし。私も。
「孝也に相談したらいいよ、あいつ結構話聞いてくれるし」
「えー…男子と喋んないんよ。あんまし関わらない」
男子といるより女子といる方が楽しい。
「まぁ俺から言っとくわ、孝也はイケメンだからな」
「魅力を感じない」
多分、かっこいいんだろうけどあんまり私には響かない。目付きとか女子が近寄らなさそうな雰囲気が怖いよ。
「マジか!あんな男前…俺より男前なのに」
判断基準わかんねー。
「なんか…梗花変わったな」
「悪い意味でってこと?」
「暗くなった、良くいえばおしとやか」
多分ね、生きる活力がないんだと思うの。何にもエネルギーが入らなくて、自分がいつも一人でいる気分なの。言葉では上手く言えないけど、強いて言えば、人を信用出来なくなってる。
「そうかな?」
「前はあんなに毒吐いてたのによー」
健五は軽く私の頬をつねりながら笑っていた。幸せそうな感じがする。
「…もう10時やん。家帰るの?」
- Re: 我儘 ( No.5 )
- 日時: 2018/01/29 20:29
- 名前: りさ (ID: Mm9jHYga)
授業中、窓際の席でぼーっとしていた。あれから健五が、私の家まで送ってくれて、1日は終わった。モテないと言いながら、あいつは社交的やし愛想も良くて友達が多いから、私と違って。モテるよね。
「いたっ…」
後からペンで右肩を一突きされた。眠いのも重なり、かなりの眼光で後ろの席を振り返ってしまった。
「ごめんな。聞きたいことあるんけど…」
「?」
「昨日さ。夜、街いたよな」
「う、うん」
「あれ、彼氏?」
「ただの中学の同級生だけど…」
「そかそか、ありがとうございました」
名前だれだっけ、後ろの席の男子。原嶋くんだ!名前忘れてた、いつも宿題やってない人。
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