複雑・ファジー小説
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- 妹 に す べ て を 奪 わ れ る
- 日時: 2018/02/02 22:05
- 名前: 花火 (ID: cdCu00PP)
#桜井 弥(さくらい あまね)
地味な顔立ちで、見た目がパッとしないことや暗い性格からいじめに遭っていた。
妹の憂とは血が繋がっていない。
#桜井 憂(さくらい うい)
ハーフのような顔立ちで幼い頃から評判が良い。
そのせいか自信家で明るく、自分とは対照的な弥には1つも負けたくないと思っている。
#四宮 湊(しのみや みなと)
学校一の美少年。クールな性格で、基本は一匹狼。
#望月 洸(もちづき こう)
弥をいじめから助け、その後気を持っていたが憂に誘惑される。
- Re: 妹 に す べ て を 奪 わ れ る ( No.1 )
- 日時: 2018/02/02 22:41
- 名前: 花火 (ID: cdCu00PP)
私に妹ができたのは、私が中学2年生の時。
私の父が再婚し、その新しいお母さんが連れてきた同じ年の可愛らしい女の子が妹の憂だ。
誕生日が私は5月、憂が12月ということで私が姉ということにされた。
憂は肌が白くて、髪の毛は暗めのミルクティーのようななめらかな色をしていた。
それだけじゃない。
目が大きくて、瞳は茶色で、小さい鼻は高くて、薄い唇はさくら色。
日本人離れした彼女の顔を見て一瞬見とれてしまったことを今でも鮮明に覚えている。
対して私は重い黒髪で、奥二重の小さな瞳。
鼻は低いし、肌は健康的な小麦色。
至って普通、いや、どちらかと言えば底辺の顔。
細身で可愛らしい憂とは違って体型は普通。
中学生の頃から整った顔立ちをしていた憂がこの学校でモテないはずがなかった。
転校してきた日から可愛い可愛いと噂が聞こえてきたし、その噂が私の所に流れてくるまで時間はかからなかった。
「なあ桜井」
初めて話しかけてきた男子から言われたのは「お前あのすっげえ可愛い子の姉妹なんだって?」という言葉だった。
ああ、憂ちゃん言ったんだ。
なんて迷惑な。
私は曇ったメガネをカチャと上げてから静かに「…そうだよ」と答えた。
彼は嘲笑うように言った。
「まじかよ!お前、可哀想だな。あんな可愛い姉妹ができてさ」
「そうだね…」
すると彼は大声でクラスに言った。
「おいみんな!あの美少女、桜井の姉妹って本当らしいぞ!」
瞬間、クラスのみんなが私に注目した。
私が注目されたのはそれが初めて。
「まじかよ!桜井、俺と仲良くしようぜ」
他の男子が言ってきた。
隣にいた男子が面白がって言う。
「お前憂ちゃん目当てで桜井と仲良くしようとするなよな」
はあ、疲れる。
この日から男子が話しかけてくることが急激に増えた。
違うクラスの男子が遊びに誘ってくることもしょっちゅうあった。
もちろん、憂を連れて来て欲しいからだということはわかっている。
最初は憂なんか来なきゃ良かったのにって思っていた。
けど憂は学校でも家でも優しい女の子だった。
可愛いだけじゃない、いい子だった。
同じ年なだけあって、仲良くなるのに時間はかからなかった。
初めてちゃんとした友達ができたと思った。
憂は明るい性格から男子だけじゃなく女子からも人気で、すぐに周りに馴染んでいた。
だけどいつからだろう、違和感を感じ始めたのは。
憂のことは好きだ。
憂のおかげで友達が増えた。
もちろん、憂目当てで話しかけてきていたことはわかっていたけど本当に友達になれた女の子はたくさんいた。
それなのになぜだか、何か違和感を感じる。
ああ、そうか。
高校で初めてできた彼氏をとられた時くらいかな。
高校に入って、初めて彼氏という存在ができた。
彼はいい人で、私なんかに告白してきてくれた。
私は初めての事で憂に相談して、憂のすすめで付き合うことになった。
だけど付き合い始めて1ヶ月が経った頃だった。
買い物が思いのほか早く終わり、家に帰ると大きめのローファが玄関にあった。
見覚えのある靴に、私は少しモヤモヤした。
家に入り、そのモヤモヤが確信に変わった。
廊下から聞こえる声、音。
ああ、そういうことか。
憂の部屋が少し開いていた。
隙間から少し中を覗くと、そこには憂と私の彼氏が服を着ずに抱き合っていた。
その時はその行為自体に驚いた。
知ってはいたけど自分とは無縁だったから。
憂のそういう話は聞いたことがあった。
憂は中学の時から何度かそういう行為を経験していた。
その後なぜかその彼にふられた。
私はあの日見てしまったことを言えなかった。
その後憂にその彼がふられた、と噂が流れてきた。
ああ、彼は元々憂目当てだったんだな、と思った。
憂と体の関係を持ち、勘違いした彼は憂に告白してふられた。
あれ、だったら憂は一体どうして?
きっと、この頃からだ。
私の人生に憂が入ってきて欲しくないと思ったのは。
私は知っている。
憂は彼が私の彼氏だと知っていたことを。
憂があの日、私がすぐに帰ってくることを知っていたということを。
あの日憂がわざと部屋の扉を少し開けていたということを。
私は知っている。
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