複雑・ファジー小説

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お菓子の家でグリムの語り継ぐ、美しい美しい物語
日時: 2018/02/14 21:27
名前: ∞HomelY∞ (ID: sb4c5jj4)


 むかしむかし、ある所に、グリムという天真爛漫な神様が生まれました。彼女はいつも色々な事をして、人間達に色々な影響を与えていました。彼女は自由な神様だったのです。自由な、自由な神様だったのです___
 そんな彼女の自由きままな行動は、時に人間達をとても幸せにしたり、時に悲壮や絶望に陥れたり、時に嫉妬に狂わせ、時に不確定な不思議な混沌を生み出してしまいます。彼女の両親は、自分の子供の自由奔放さに不安を覚えていました。その自由さが、いずれ己の身も心も悲しみや狂気に溢れてしまう事を恐れて。
 グリムの両親は、彼女がきちんとした神様になれるように、魔法の絵本を魔法の鏡の中に沢山作りました。その魔法の絵本の登場人物達は、まるでグリムのしてきた行いを一つ一つ映し出していたかのようでした。優しさも、愛も、友情も、夢も、希望も、悲しみも、嫉妬も、狂気も、色々な感情がもたらす結果が、美しい幻想と共に綴られていきます。起承転結ある壮大な物語の末、最後は"戒め"で締めくくる、残酷で美しい物語。その物語を魔法の鏡越しに見るグリムは、自分の行いをどれも強く受け止め、よりよい神様になろうと努力する事を決めたのでした。
 自由な自由なグリムは、威厳のある、誰もが認める素晴らしい神様となりました。然し、彼女が自分の治める世界の安寧のために仕事をしていたある日、彼女の両親が天罰を受けてしまいました。
「何故?どうして?わたしはこんなにいい子にしていたのに」
グリムは嘆き悲しみます。両親の罪。それは、"魔法の絵本"を作ったという事でした。グリムを強く、優しく、きちんと育てるために作られた、両親の愛の籠ったセカイ。どのような理由であれ、新しい世界を作るという事は、神様でさえも許されない重罪だったのです。彼女の両親は、愛を捧げるという重罪を背負って、愛しの娘を笑顔でみつめながら死んでゆきました。
 一度作った世界は、誰かが責任を持って治めなければいけません。グリムは自分の治めていた世界を他の神様に託し、自分が童話の世界を治める神様となったのです。彼女の一番好きだった物語の、「白雪姫」。その冒頭に出てくる魔法の鏡の向こう側から、グリムはその残酷で美しき物語を永遠に紡いでいくのだと誓いました___


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「私のご先祖様のお話はここまでです。私も、ご先祖様の御意思を引き継いでいかねばと強く感じました。あの時、このお話を聞いた時は人生で二、三番目くらいに涙が出てきたんです...。さて、"あの時"の話を始めないといけませんね。私達の冒険...?いや、冒険ではなく、絆の物語です。ふふ、大好きな貴方とも一緒に行けたら、結果的にはいい思い出となったのかもしれません。それでは、むかーしむかし、ではなく、ここ最近の話、と言ったところでしょうか。...いいえ、やはり"むかーしむかし"の方が当てはまっていますね。なんていったって、今から話すのは、まるで"童話"のような素敵な物語なんですから___」



 ※この物語はとある成り部屋のキャラクターを題材にしたものです。一般の方には非推奨の読み物と思われます。

Re: お菓子の家でグリムの語り継ぐ、美しい美しい物語 ( No.1 )
日時: 2018/02/15 00:09
名前: ∞HomelY∞ (ID: sb4c5jj4)


  ...ここは、何処?
「...白雪姫...」
「白雪姫!白雪姫!」
「白、ゆ...き....白雪ッ!!」
「白雪姫...白雪姫...っ」
「白雪姫、!」
「白雪...?」
「........っ!!白雪姫...!!」
そうだ。私は白雪姫。...私は、死んだの?
「パカラッ、パカラッ、」
馬が歩いてくる音...?そうか、あれは王子様の...。つまりここは、私が母に毒林檎で殺されかけて数ヶ月後の場面。王子が私の仮死体を連れ帰る日。...おかしい。この時、私の意識はあっていい筈がない。私は仮死状態。思想すらも許されない。それがこの童話のセカイ。そして、その中でも一番世界の強制力の強い「白雪姫」の物語の絶対的な掟。何故、私が今ここで意識がある...?
___っ!!
「ふぉ...、め、りぃ...?おき、て...や...ぶ、り...掟、破り...」
"しあわせ"...?どうして、貴方が...嫌...そんな...

「嫌ぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁああぁぁあぁあああッ!!!!!!!」

 信じられないくらいの冷汗と悪寒が走る反面で、何故か体の感覚は焼かれるように熱い。目が覚めると、そこは自室。苦労と努力の成果あって積み上げられてきた、己の財力を示している豪華なベッドルームだ。

___嫌な程にリアルで、最悪な夢だった。私はフォメリー = レッドホワイテル。"童話族"と呼ばれる中でも特に完璧を求められ、一分一秒を筋書き通りに演じなければならない、「白雪姫」の物語の主人公。役名は題名と同名だ。演じ切れば役目は終わり、後の生き方は各々自由。余程他の物語に支障を来さなければ、罰則...基、死刑に近い極刑は先ず無い。裏を返せば、物語を少しでも変革してしまうような事があれば、大抵の場合はその極刑を味わう事となる。童話族としては当然の事だが、童話族でない者がそれを聞くと、哀れがる反応をするのも少なくはない。

 そんな童話のセカイで私は"白雪姫"という大役を果たしてきたが、本当の所、今生きていられるのは奇跡なのか、神であるグリムの情けなのか、それ以外の理由があるのか...。私は掟を破った。不可抗力とはいえ、"八人目の小人"を産んでしまった。"しあわせ"とは彼の名前。大切な、大切な、私の初めて知った"真実の愛"...。

 ...感傷に浸っているなんて馬鹿らしい。
「そんな暇なんてねーっつの」
なんて、独り言を漏らしながら起き上がり、昨日食べられなかった小さなザッハトルテがテーブルの上に置いてあるものだから、そこまで歩んで行き、一口で平らげる。またベッドに戻ろうとすると、窓に手紙が挟んであるのを見つけた。
「誰?ったく、こんな時にイタズラとかマジ勘弁。」
そう言って窓を開け、挟まっていたそれを上手く取る。手紙の中身は___

____次代の王妃へ 至急、鏡の間へ_________

 一瞬、この手紙の意図が読めなかった。ただのイタズラと思っていたからだろう。だが、今では既に背中にぞくりと強い寒気が走っている。恐らく今日の夢から覚めた時を遥かに上回っている。"鏡の間"に、"次代"、"王妃"...そんな聞き覚えのありすぎる単語は、全て"童話のセカイ"を生き抜いてきた者達にしか使い得ないものだ。つまり、この手紙の差出人は童話族の人間...否。こんな手紙を出す必要のある者は決まっている。童話のセカイの神。現・グリム___!!

Re: お菓子の家でグリムの語り継ぐ、美しい美しい物語 ( No.2 )
日時: 2018/02/16 01:23
名前: ∞HomelY∞ (ID: sb4c5jj4)


 お菓子の家の甘い香りに包まれながら気持ちよく眠るのは、本当に幸せな気分になる。大好きな大好きな人との生活が、こんなにも愛おしいものになるだなんて。

 わかってはいたけれど、想像以上の至福を味わうものです。___そんな幸せな時にだって、いつかは"Ending"がやってきてしまう。それがいつかは、彼にとってはまだまだ先だけれど、これから何千年も何万年も生きる私にとっては、思ったよりも早く来てしまう事になるのかもしれない。幸せすぎるから、より一層時間の流れは早く感じてしまうが、それでも彼との色濃い大切な大切な思い出は全て胸に刻み込んである。これからもずっと。彼との別れの時が来てしまっても、心はずっと通じ合っていると信じているから...私は世界で一番幸せでいられる。これから先ずっと長く生きていく間、大好きな人とずっと繋がっていられるだなんて、まるで童話のお姫様になったような気分。

 だから、この日々を、この一秒一秒を、一齣ずつ噛みしめていこうと思っていた...それなのに。案外素晴らしい希望というものは崩れ去りやすい。童話のお姫様が完全に"Happy ending"を迎えられないのと少し似ている。

 二時間程前。お菓子の家に帰る時、ひらりと一通の手紙がどこからともなく舞い降りてきた。手紙から感じられた、"童話の残留魔影"。童話の神の素質のあるものだけが感じ取ったり、使用する事のできる魔力。つまり差出人は...
「お母、さん...?」

___次代の神へ  至急、魔法の鏡の部屋へ______

                      ※

 コツ、コツ、コツ、と、自分の足音が無駄に反響する。...今現在の話だが、物語の干渉を避けるため、現在この世界の時間は止まっていると見られる。恐らく今動く事のできるのは、"そちら側の者達"プラス私のみ。

 ___懐かしい王宮だが、不思議と新鮮だ。理由はわかっている。"白雪姫"としての記憶はあるが、それはあくまで完璧な白雪姫を演じていた時の話。つまり、「白雪姫」という全くの別人と思考を共有しているだけのような感覚で、今の自分の思考などではこの王宮への捉え方も何もかもが昔と違う。そして新鮮なのだ。

 ここから先は通った事のない道だが、この通路の雰囲気からして"王妃"の使用していた鏡の間へと続くという事は容易に推察できる。そして、目の前にやってきた重たい扉を開けて___
「...私に何の用?お役御免の筈じゃなかったワケ?十二代目兼十四代目、グリム。」

 案の定そこは、彼女の母も先代と同じように、白雪姫のはじまりの号令をかけた場所、"鏡の間"。フォメリー = レッドホワイテル。彼女は約束の場へと出向いていた。そして、鏡の向こう側から新たに口を開き、姿を現すのは...グリム。
「この度は突然の召集につきまして、御無礼をお許し下さい。ろくな道案内すらもできずに、重ねてお詫び申し上げます。...十三代目、グリム___」
"その呼び方はやめて"と瞬時に返すフォメリーは、御託はいいからというような態度を見せながら、「それで?」と用件を訊く。
「...お察しの通りとは存じます。その上で改めてお願い申し上げるようなのですが...フォメリー = レッドホワイテル。いいえ、"元"白雪姫。貴女には、次の王妃になって頂きます_______」

Re: お菓子の家でグリムの語り継ぐ、美しい美しい物語 ( No.3 )
日時: 2018/03/04 00:50
名前: ∞HomelY∞ (ID: sb4c5jj4)


 ___何を言い出すと思えばこの神、お役御免のこの私に新たに役目を課すだと?___

 フォメリーは困惑していた。自分は白雪姫としての役目を全うし、既にこの狂った世界とは無縁の筈だ。それが、今度はあの自分の母親のような運命を演じろと言われれば反応に困るのも無理はない。
「...わかりやすく説明しろよ...冗談なら一発殴らせなさいよね。」
白雪姫の母親..."王妃"の運命を、"白雪姫"は皆よく知っている。美しさへの欲望と、娘への嫉妬に狂った、醜い女。そして白雪姫は、焦がれた愛を注いでくれなかった母親に鉄の靴で引導を渡すのだ。
"白雪姫"。フォメリーも自身の母親を抹殺した。"醜い醜い白雪姫の母親"を。

「..."フォメリー"。貴女は"大災害グリムヒルド"からこの童話の世界を救済した英雄であり、一時は神となりました。そして、その代償とも言えるような、貴女のその能力。神という高次元をも超えた理外の概念と世界線の混沌を作り出す、小人...それを生み出す能力の所為もあり、貴女は"演じ続ける"のに大変苦労をなさったのでしょう。..."彼"もまた、仕方の無い犠牲でした。それに、就任したばかりの私には貴女を裁くなどという事は___」
「ッふざけるな!!!"彼"って何...?お前の治めるくだらない世界の所為で...お前が私にあんな能力を与えたから、あの子は...ッ!!...言わなくてもわかるでしょう。御託はもう要らない。本題に入って。」
今度は自分があの鉄の靴を履く。それを考えただけで冷静さを失っていたフォメリーの全身は、彼女にとって珍しい"恐怖"の感情を彷彿させるように凍え、震えている。
「貴女は"例外"でした。」
"例外?"と怪訝そうな顔をするフォメリーは、その言葉の意味が半分位は想像できていた。頭脳明晰な彼女には、今迄の会話などから確実な推理ができ、その内容がより一層体を大きく震わせた。それに畳み掛けるように、"神"は口を開き始める...
「"あの災害"自体、前例のない事態でした。...貴女は知らないでしょう。白雪姫のもう一つの"運命"を。」
___嫌...聞きたくない...やめて...___
「普通の白雪姫、及びキャスト達はその"運命"を、"True ending"の前に知らされます。彼女達は皆、絶望しました...数年の猶予はあれど、その先の過酷な"運命"には、耐えられない。」
___逃げなきゃ...そんな、残酷な運命...___

「白雪姫は母親を殺した後、"世界で一番美しい姫"として、王子と結婚します。しかし、ある夜を境に王子は白雪姫を殺そうとします。"鉄の靴を履きながら美しく命を散らした王妃"が王子の夢に偶然出てきて以来、"美しい死体"の事が頭から離れなくなり、王子は死体性愛者となってしまったのです。白雪姫は王子から逃れ、いつの間にかまた七人の小人の元へと辿り着きます。そして、小人達と力を合わせ、王子を鉈で切り裂いて殺しました。それから、白雪姫は誰も信じる事ができなくなります。誰も愛してくれない...焦がれた愛も、救いも、何もかもが"黒い何か"に染まっていく...そうして、小人達を七つ越えた山の奥に厳重に追放し、自らが王政を敷きます。信じることができるのも、愛することができるのも自分だけ...そうして、少しずつ自分の美しさに酔いしれていったのです。新たな王子を自分に惚れさせ、結婚し、子供を作り、国はますます力を上げていきました。...そうして支配を強めていった白雪姫は、自分の名前を捨てました。名も無き王妃となったのです。そして、ある粉雪の降る美しい夜、彼女は奇跡的に優しい心を取り戻します。生まれてくる子供のためにマフラーを編んでいる時、針を指に刺してしまい、粉雪の降る黒檀の上に自らの鮮血が滴ります。その美しい情景を見て、"名も無き王妃"は...」

「......ッ!!」
 目を大きく見開き、走り出す。その運命は全て想像がついていた。そして、自分にその運命が知らされなかった理由も、掟を破った自分を見過ごされるようにグリムが必死に動いてくれていて、知らせる時間が無かった為だというのが容易に想定できている。___それでももう、訳がわからない___

 必死に走って鏡の間を抜けると、フォメリーは見たこともないような武装をした無数の兵に囲まれた。グリムは直接兵を持っていない為、それらは皆魔導兵に類するものだ。フォメリーは小人を連れずに来ていたから、逃げるより他はない。数が多すぎる。勝ち目などない。そう思い、絶望しながらも走り抜けようとすると...唐突に、どこからともなく大量の木々や木の実、それに..."お菓子"が弾丸のようなスピードで投擲され、魔導兵に命中した。

 フォメリーはこの正体を知っている。


「......さあ、帰りましょう!私達の愛する世界へ!」


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