複雑・ファジー小説

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VICE
日時: 2018/03/13 18:37
名前: 霧 (ID: KE0ZVzN7)

正義になり損ねた奴ら。
俺らはそれを、こう呼んでる。

────────『悪』ってな。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


初めまして!名前は霧だけど、本人は太陽の如く暑苦しい人間です!
今作は悪を題材とした作品にしたいと思っています!
正義ではなく悪が主人公サイドの為、合わない人も出てくると思いますが、是非一度でも良いので目に通してみてほしいと思います。そして、おもしろいと思っていただけるように、拙い国語力を何とか捻って頑張っていきます!
題名のVICEについては、今後作中で意味を明かしたいと思います。結構複雑なので。
それでは、よろしくお願いします!


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〓目次〓


◆プロローグ◆ >>1


◆第一章 選択◆
◇第一話 始まりの日◇ >>1_

〓その他〓

Re: VICE ( No.1 )
日時: 2018/03/13 00:24
名前: 霧 (ID: KE0ZVzN7)

◆プロローグ◆


暗い部屋の中、やけに鮮やかな血の赤だけが輝いていた。
誰の血かは分かっている。だが、思考が受け入れる事を拒否している。

たった一人の家族、妹が殺された。

そして、残された自分も銃口を向けられている。

両腕に乗っている妹の体は、とても冷たくて、それでいて動かない。
自分の体も、恐怖と怒りに支配され石のように動かない。
ただ涙で濡れた瞳で、目の前で嗤う集団を睨む事しかできなかった。


──────殺してやる。


銃声が、静かに木霊した。

Re: VICE ( No.2 )
日時: 2018/03/13 11:28
名前: 霧 (ID: KE0ZVzN7)

青髪の男は、黒髪の青年に高らかに問う。

「さあ、お前はどっちの道に行く?」

「俺は────────」



◆第一章 選択◆



◇第一話 始まりの日◇



* * * * *

夕焼けを背に、青年は一人歩いていた。
数ヶ月放置され散らかった黒髪が、風に揺れている。
長い道を独りで歩いてきた。そして、これからもずっと孤独だ。

右手にぶら下がった酷く汚れた鞄が、事態の卑劣さを物語っている。
笑い合いながら帰る自分と同じ制服を着た集団が、非常に憎たらしく思えた。
それと同時に、羨ましくもあった。
何も無い自分とは違って、彼らには何かがあるのだから。

──否。青年にも、たった一つだけ残っているものがある。
それは、凄絶な虐めからただ一つ逃れられる家の中で笑って待っている人。
両親を失い、引き取ってくれた親戚から迫害され続けてもずっと隣にいてくれた人。
彼にとって、たった一つの生きる希望。

「……ただいま、桜花」

「おかえりなさい、お兄ちゃん!」

涅日向、高校三年生。
帰宅した日向を笑顔で出迎えてくれるただ一人の人間、涅桜花。
どんな時も二人で支え合うと誓った、世界で一番絆の深い兄妹だ。


* * * * *

「慎太郎さんと実咲さんはいないのか?」

「うん。二人とも、私が帰ってきた時にはいなかったよ」

「そうか。じゃあ、今日の晩御飯は俺が作るか」

「え、私が作るからお兄ちゃんは休んでて良いよ。勉強、忙しいんでしょ?」

「最近桜花ばっかり作ってるだろ。それ、たまには俺も愛する妹の為に手料理を振舞いたいんだよ」

「もう、お兄ちゃんったら。私を褒めても私が喜ぶだけだからね!」

叔父と叔母がいないのは、二人にとって最早日常と化している。
子供がいないという事で最初は喜んで引き取ってくれた叔父と叔母も、今では関心を無くし放置している。
一時期は虐待にも似た仕打ちを受けられ続けたが、最近ではそれすらも無くなった。

何でも叔父が多額の借金を背負い、叔母は返金に勤しんでいるらしい。
日向自身バイトを掛け持ちしているが、生活金だけですぐに溶けてしまう。
借金取りが一度家に押しかけた時があったが、その時は何とかなった。
今では話にすら出ない、封印した当時の記憶が今でも鮮明に蘇る。
思えばその日から、二人の絆は一層深まった気もしなくも無い。

実質二人暮らしの状態にある二人は、家事を分担し何とか生活している。
大学受験を控えている受験生の日向にとっては苦しい毎日だが、妹の為にと奮起している。

「それにしても最近帰り早いよね、お兄ちゃん。彼女とか作らないの?家事できる男子、最近流行りらしいよ」

「……俺に彼女なんてできない。そう言う桜花こそ、彼氏作って良いんだぞ?可愛いんだし勿体無いぞ」

「私が好きなのはお兄ちゃんだけだから、彼氏なんていりませーん」

「嬉しいけど複雑な気持ちだな……」

刻んだ野菜を炒めながら、日向は苦笑した。
自分の妹へ対する愛は深いと自負しているが、桜花に至っては愛が重すぎる始末だ。
いつかは兄離れさせてやりたいが、ずっとこのままでも良いと思っている事は否めない。

勉強に着手している桜花は、何かを思い出したようで手を止めた。

「そういえば、今週の日曜日私の友達連れてきて良い?多分叔父さん達はいないと思うし」

「俺は一向に構わないぞ。思う存分遊んでくれ」

「やった!お兄ちゃんも、友達連れてきて良いんだよ?私の事は気にしなくても良いのに」

「……俺達は受験生だから遊んでる暇なんて無いんだ。桜花も、来年は受験生なんだから頑張れよ」

「うん。お兄ちゃんと同じ高校に行ってみせるよ!来年はお兄ちゃん大学生だけどね」

友達と呼べる存在なんて日向にはいないが、桜花には嘘を取り繕っている。
妹に嘘を吐く事は胸が痛むが、心配をかけさせる訳にはいかない。

高校では周りから虐められている事など、妹に知られる訳にはいかない。
それ故に、泥で汚れた鞄も、傷だらけの制服も、落書きだらけの濡れた教科書も、壊れた文房具も、部屋の奥隅に隠している。
虐められている原因は、妹にも起こりうる事だ。
だから、日向は中学に自らの足で赴き懇願した。

────犯罪者の子供である事を、絶対に知られないようにする事を。

「お兄ちゃん?焦げちゃうよ、大丈夫?」

「え?あ、やば。火消さないと……」

「……最近お兄ちゃん、様子おかしいよ?やっぱり、あの日の事……」

「大丈夫。大丈夫だから、安心して勉強しててくれ。もうすぐで完成するからな」

「……それなら良いんだけど。あ、教えて欲しいところあるから、あとでお願いね!」

「おう。何でも教えてやるよ」

例え学校に居場所が無くとも。
例え親が犯罪者であろうと。
桜花と笑って過ごせるなら、それだけで良い。
日向にとって生きる理由は、ただそれだけだ。

* * * * *

「本当に良いんデスね?」

「あ、ああ。ほ、本当に金は降りるんだろうな?」

「勿論デスとも。ご報告、感謝しますよ。これで研究が捗りマス」

太陽が沈む中、黒スーツを着た男の集団を前に歳を重ねた男と女の二人組が立っていた。
白髪の男は覚悟を決めたような顔をしているが、女は不安を隠し切れないでいた。

「本当に大丈夫なの?貴方。いくら金の為とは言え……あの二人を……」

「うるさい!黙れ!これで気分が晴れるわい。犯罪者の子供なんざ、家に置くべきでは無かったわ!とんだ疫病神を拾ってしまったもんだ!」

ここぞとばかりに鬱憤を撒き散らす男を背に、黒スーツを着た金髪の男が口を開いた。
他の者はサングラスで顔を隠しているが、金髪の男だけが顔を曝け出している。
自信と狂気に満ちた青色の瞳で一軒の古びた家を捉えながら、静かにその名を口にした。


「涅日向。その身柄、寄越させてもらいマスよ」


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