複雑・ファジー小説
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- 私の、私による、私の為の言葉
- 日時: 2018/04/04 05:01
- 名前: 私 (ID: pxUv3LmK)
———春、それは終わりと始まりが、表裏一体である時期。否、どの季節もそうだったんだろう。
卒業式に見た桜は私たちが大人へとなってゆくその過程の、卒業を祝福し。それと同時に、もう此処には戻れない。そう暗示しているようだった。
当時の私の狭くも全てが煌びやかに見えた視界には前者としか捉えられずに、淡い桃色の添えられた空を見る。
次に身にまとうのは、群青色の体操服でも、藍色の制服でもない。
黒に白のスカーフが映える、セーラー服だ。
過去の私よ、聞こえているか。
私はその卒業式から約3年後の、中学生を卒業して最近の私だ。
君の、私の煌びやかな世界はいずれ終わりを迎える事になるだろう。
今こうして過去へ宛てた文を送っても、何も変わらない事は重々承知している。
私は今、衝動のままに書き殴っている。それほどまでにヤケクソな私が居たと言う事だけ、知っていてほしい。
そう、これは。私の、私による、私の為だけの。
小説とも言えないただの「言葉」である。
- Re: 私の、私による、私の為の言葉 ( No.1 )
- 日時: 2018/04/04 05:37
- 名前: 爆走総長ナオキ ◆UuU8VWSBGw (ID: pmOIN4oE)
感動した!
最高の作品でした!!
またの次回作をたのしみにしてます
- 私の、私による、私の為の言葉 ( No.2 )
- 日時: 2018/04/04 12:51
- 名前: 私 (ID: pxUv3LmK)
桜の季節が終わらぬ間に、私たちは新たな始まりを迎えた。
中学校、入学式。
つい最近、改装工事の終えたその場所は、始めの第一歩を踏み出すに相応しい物と言えた。
並ぶ自転車。姿を、景色を写す窓ガラス。別の小学校から来たのであろう、見慣れぬ顔の生徒。
そして何より、「入学式」と大きく書かれた看板に、生徒だけでなく親も群がる。私や私の家族もまた、群がる人らのその1部だ。
淡々と言葉の並べられる入学式は退屈だったが、それでもぶり返される昂りに胸を躍らせ、揺らぐ瞳を輝かせた。無意識に上がってしまう口角を押えようとしても、友人と言う存在がそうさせてはくれず。何処かハイになった気分でその日を追えた。
改めて中学校生活へと歩みを進める。
少年漫画に漬けられた頭は夢見ていた。部活動での迸るような闘志。日々築かれてゆく人間関係。そして甘酸っぱい恋の物語。
遂に現実になってくれると思っていた非現実を、自身の容姿とは程遠いであろう日常を。ひたすらに夢見て、明日を迎えてきた。
勉強は口で言う程嫌いではなかった、数学は理解出来れば簡単だったし、国語は寧ろ好きな方だ。英語も幼いころから習っていたし、少しの間は心配要らないだろう。まぁ…後の五教科の内2つに至っては「…テスト前にでもペラッと覗いとけばどうにか…?」くらいの認識だった。
せっかくだから新しい事を始めよう!そうして入ったのはソフトテニス部だった。
体育館(しかも外)を数周と言うのは持久力の無かった私はすぐに息が上がってキツかったけれど、ペースをとにかく遅くすればやり切れた。
ラケットは昔母が使っていたのがあって丁度良かったし、狙った場所へ打つのは流石に出来なかったけれど球技は好きだった。
新たな友人が3人出来て、その3人とはよく勉強しあったり、遊びに行ったり。新たな刺激が得られた。
だから楽しい!そう思っていた。
でもそれ程先の話じゃなかったんだ。この日常が、崩れ去ってゆくのは。
いや、寧ろこの時から私が気づかない程に少しずつ、少しずつ軋み初めて居たのかもしれない。
- 私の、私による、私の為の言葉 ( No.3 )
- 日時: 2018/04/04 19:14
- 名前: 私 (ID: pxUv3LmK)
中学生になっても相も変わらず、ぐうたらにテレビアニメを見ていた時の事。
ポッキーをじゃがりこのリズムで噛み砕く私の瞼は些細な眠気に垂れ下がり、ただぼーっと展開の移ろってゆくテレビ画面を見つめていた。
ある一方ではまた別の談義がかわされ、確かにその作品内の時間は経過していて。それに目を奪われる最中、ある一つに私の視界は止まった。否、止まってしまった。
「……あんなチャット……実際にあるんかな…」
作中に時折出てくるチャットでのやり取り、私はソレに興味を、好奇心を寄せた。
そうしてアニメが終わった途端、足は親の所有するパソコンへと進む。調べてみたい。そしてあるならば、あわよくば…。
不慣れな手つきで遅いタイピング音を、その部屋に小さく響かせる。私1人の、沈黙の流れる部屋の中に優しく馴染み、溶け込んだ微かなタイピング音。耳は其方へ向けられることなく、目だけが画面へと執着する。
「○○○○チャット」
そう、ネットに問う。
すると…一件だけでない、下へスクロールすればびっしりと、何ページにもヒットした。あったんだ、本当に…。なんて半信半疑に検索した私の好奇心が其処で止まる事は無い。
現在の私なら、こういうだろう。
止めろ、手を止めろ。
其処で引き返せばまだ間に合う。君の人生は、中学校生活は。そのクリック1つで、キッカケ1つで一変するんだ。
それが嫌なら止めろ、止めてくれ。と…。
しかしその言葉が、当時の私に届くわけも無かった。
——カチッ…。
当然のように鳴る一回のクリック音が、私を引き込む。底なし沼に突っ込んだ片足が抗えば抗う程沈んでゆくように。しかし当時の私は抗うどころか、沈んで行っている事にすら気づかず、沼を受け入れていた。
無抵抗に、否。寧ろ沼を満月の映る美しい湖だと錯覚し、頭から飛び込んで行っている程に。どぼんっ……と。
其処から私は、その沼へとただひたすらに潜り続けた。ただ雑談をするだけのチャットに飽きたらず、「なりきり」にまで手を進める。自身の生み出したキャラを文章で自在に動かせる、そんな非日常が楽しくて。夢見ていた学園が、魔法が、バトルが、そして…青春が。其処で謳歌されていると錯覚した。
潜れば潜るほどに、時間は削られ。体内時計には狂いが生じ、案の定…まともに学校へ通える体ではなくなった。
そのきっかけを、いつかの私は人のせいにして、私を正当化し、私を護った。
それもまた立派な防衛本能なのだろう。
だが今の私はきっとこう言う。
「誰かの所為にしても今なんて変わってくれるわけじゃない。だったらいっそ、自分の人生くらい「自分の所為だ!それがどうした」と開き直って、前だけを見てあるけ。後ろばっかり…キラキラしてた小学生時代ばかりに足を引っ張られてちゃ何も起こらない。心はどうであれ、体は嫌でも大人になっていってしまうんだから」
そんな割り切る事が出来なかった。それ程に憶病だったからこそ、当時の私がその言葉を実行する事は無かった
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