複雑・ファジー小説

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【THE MAID.】
日時: 2022/06/13 12:53
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: cdCu00PP)

「僕は───不本意ながらメイドだ」


イメージソング:Borderland(※仕様変更でつべURL載せられなくなったっぽいね)



登場人物

刑部 暦(おさかべ こよみ)
男。27歳。下向き糸目の女顔。
元々特殊部隊で傭兵をしていたが、突如として日本の一大実業家のひとり娘の、専属メイド兼ボディーガードとして転職させられる。ガン=カタを用いて戦闘する。メイド服の下には爆弾やら手榴弾やら機関銃やらナイフやらいっぱいに詰め込まれている。
かつて、あまりの強さに『デッドグロック』との異名を付けられていたらしい。本人曰く『ただの標的としてのあだ名のようなもの』。

法龍寺 尊(ほうりゅうじ みこと):キャラクター作成 河童氏
16歳JK。日本の一大実業家、法龍寺家のひとり娘で、暦が仕える主。やたらとSNOWで自撮りしたがりで、主に暦とのツーショットをよく狙う。それをSNSなどで載せたがる。今時のJK。暦の性別は初めから知っているのだが、メイド服のほうが似合う、という彼女からのお言葉により、執事服が暦のために用意されることはもうない。
実はある巨大組織から命を狙わらているらしく、それから守るために暦が呼ばれたらしい。本人は気づいてない。


おおまかなストーリー
特殊部隊の傭兵、そして『デッドグロック』として生きていた刑部 暦。しかしある日突然、日本の一大実業家から、ひとり娘のボディーガードとして来てほしいと依頼され、特殊部隊もそれを容認してしまい、転職させられる。そこで待っていたのは、ツッコミ疲れする依頼主の実業家夫婦とその娘。

そして『メイド服』であった。


ジャンル:日常/ガンアクション
年齢制限:なし
話数:10話程度


目次(仮)
プロローグ『シュガーソングとビターステップ』
>>1
第1話『空耳ケーキ』
>>2
第2話『桜のあと』
>>3 >>4
第3話『流星ダンスフロア』
>>5 >>6

Re: 【THE MAID.】 ( No.1 )
日時: 2018/05/30 18:55
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: dUTUbnu5)

 あたりいっぱいに広がる、硝煙のにおい。地面に散らばる薬莢。目の前に広がる、人の山。それらの殆どは穴が空いていたり、無残に切り刻まれたあとがある。みなどれもこれも、生きていく上での経験値の残りカス。少なくとも、今この場を作り上げた彼───『デッドグロック』はそう思っていた。
 代わり映えのしない日常。ただひたすらに戦地へ赴き、戦果を上げて、帰ってくる。たまに潜入捜査して、ホシを見つけてたぶらかして、戦果を上げて帰る。たったそれだけのこと。それが彼にとっての当たり前の日常であり、退屈な日々であった。だがこれしか、彼に与えられた仕事はない。他をやろうにももうおそすぎる。今から何かをしようたって、結局はこの場所に戻ってくるのだろう。彼はため息をつく。
 手にしたグロックはもうどれくらいの付き合いになるだろうか。思えば手元に握られていたのは、このグロックだった。何をするにしてもこれが一緒だった。でもそろそろ見飽きたかもしれない。彼はつまらなさそうにグロックをホルターへ入れ、本部へと戻ることにした。





「は?」

 間抜けた声が本部にある部屋に響く。普段糸目であるその目を、カッと開いてしまうくらいには彼は今驚いていた。目の前の会話相手は、彼のその反応に大笑いしているが。
 事の発端は少し前。戦地から帰還した後、突然上司からよびだされた。一体何かしでかしてしまっただろうかと、恐る恐る来るように言われた部屋へ入ると、見たこともない笑顔で上司は彼を迎え入れた。何を言われるのだろうかと警戒していたら、上司から出た言葉は彼を呆然とさせるのに、十分な破壊力を持っていた。

「お前女子高生のボディーガードになれ」
「は?」

 そうして今に至る。目の前の上司は何を思ったか、1回吹き出したあとに腹を消えて笑っている。そんなに面白いのか。全くわけがわからないし、そもそも放たれた言葉の意味がわからない。ボディーガードになれとは、女子高生とは。
 目の前の上司は少し落ち着きを取り戻すと、改めて話し始める。少しだけ広角が震えていたのは見なかったことにしておく。

「依頼が来たんだ。お前日本の一大実業家の、『法龍寺家』って知ってるか?」
「ええまあ。最初は巫山戯た名前だなと思っていました」
「その法龍寺家からの依頼だ。ひとり娘の16歳の女子高生のボディーガードに足り得る人間をくれってな。んで色々検討した結果、選ばれたのがお前だ、喜べ」
「いやいやいや何勝手に話を進めてるのですか」
「で、仕事の開始なんだけどな」
「まともに話を聞く気はないのですか」

 ひょいひょいと話を進めていく上司に、彼はため息すら出ない。どう反応しろというのだ。というか自分がその依頼を快く引き受ける前提で、話を進めているこの上司。彼は頭を抱えた。

「明日からお前法龍寺家な」
「は?」
「で、しばらくこっちの仕事は辞めだ。法龍寺家のボディーガード、かつ使用人として仕事しろ。いいな?」
「そんな急な仕事持ってこられても」
「い、い、な?」

 笑顔で、圧をかけながらそう言われてしまっては何も言い返せない。拒否できない。彼はため息をついて、仕方なく了承することにした。

「わかりました、わかりましたから…」

 かくして彼───刑部 暦は、法龍寺家のボディーガードに転職することとなったのである。


プロローグ
『シュガーソングとビターステップ』


 時と場所は代わり、日本、法龍寺家。その門前に、彼はキャリーバッグとリュックを携え、立っていた。

「……でかいな」

 つい口に出してしまうほどの屋敷の異様な大きさ。見るものを圧巻する大きさだった。こんなところに、今日からボディーガードとして仕事をすることになるのか、と、彼はひとり苦々しげに屋敷を見上げる。意を決して何故か取り付けられている、庶民的なインターフォンのボタンを押し、返答を待つ。しばらくすると、やたらと大きな門扉が開き、向こうからひとりのメイドらしき人物がやってきた。
 メガネをかけた老人、だが老人と思わせぬような背格好をしたその人は、暦を見てふっと表情を和らげる。

「お待ちしておりました。刑部暦様でいらっしゃいますね」
「ええ。はじめまして。刑部暦です」

 すでにこちらの名前を知っていたようで、メイドはうやうやしく頭を垂れた。暦もそれに習うように頭を下げる。本部の方から連絡を入れておいたのだろうか、いやそうであるに違いない。でなければここでの手続きは非常に、面倒なものとなっていただろう。

「私(わたくし)、法龍寺家メイド長を務めております、山田と申します。これからどうぞ、よろしくお願いいたします」
「(普通の名前だ…)はい、こちらこそよろしくお願いいたします」
「それではお部屋にご案内させていただきます。どうぞこちらへ」

 山田と名乗ったメイド長は、暦を背後にして歩き始めた。暦もまた、その後を追うようについていく。
 しばらく歩いていると、山田は何か思い出したように、歩きながらだが暦に聞いてくる。

「そういえば刑部様。性別は男性で宜しいでしょうか?」
「ええ。それが何か?」
「……なら、旦那様と奥様が間違えられたのかしら。それともお嬢様?」

 なにやらブツブツと独り言を話し始めた。暦はその山田に訝しげに声をかける。

「あの、山田さん」
「あ、ああ。大変失礼致しました。コホン」

 そうこうしているうちに、目的地へたどり着いたようで、山田はある扉の前で止まった。

「こちらが本日より、刑部様のお部屋となります。ご自由にお使いください。お部屋に服を用意させて頂きましたので、そちらにお着替えになりました頃を見計らって、お迎えに上がらせて頂きます」
「旦那様と奥様への謁見……でしょうか?」
「はい。間違いございません。では」

 山田は深く頭を垂れると、暦に背を向けてその場から去っていった。気になるところは数あれど、とりあえずは着替えてしまおう。そう考えた暦は自室とされた部屋の扉を開ける。
 開けた先の部屋はとてもきれいなものだった。これが使用人、ボディーガードに与えられる部屋なのかと思うほど。そして次に目に入ってきたものは。

「……はっ?」



1着の、『クラシカルタイプのメイド服』であった。



プロローグ 終


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