複雑・ファジー小説
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- ただ、それだけのこと。(短編集)
- 日時: 2019/02/18 23:40
- 名前: 麗楓 ◆F.XzXC1pug (ID: AwUzQTp7)
ただ、それだけのこと。
朝、君に何を話そうか玄関で考えて、
昼、君に見せる笑顔をトイレの鏡でつくって、
夜、君との夢を見れるように祈りながら眠る
たったこれだけのことなのに、
なぜ心が踊るのか
たったこれだけのことなのに、
わたしの心が揺さぶられるのは、
きっと貴方のせいです。
nana「三行ラブレター」において、匿名で佳作を受賞。
(一部改編)
のんびり気ままに更新する短編集です。
麗楓と言います。以後お見知りおきを。
>>1 嘘
>>2 なので私は彼を殺します。
>>3 意味合い(前)
>>4 意味合い(後)
>>5 初めてだった
>>6 交換日記(前)
- Re: ただ、それだけのこと。(短編集) ( No.1 )
- 日時: 2018/08/16 15:10
- 名前: 麗楓 ◆F.XzXC1pug (ID: 2KAtl1AZ)
久々に短編書きました。
もう夏休みが終わります......(´・ω・`)
北海道は夏休み終わるの早いです。課題が終わってないです。
辛すぎる(;つД`)
嘘
「成人式で、着て行くんです」
70%オフのシールが張られた浴衣を、一層強く握りしめた女性は、どこか焦りを感じているようだった。
今は9月中旬、花火大会や地元のお祭りは既に終わっている。本来この店で売り残った浴衣は、来年のお祭り用を見越して売っているのだが。
「……成人式に着て行くと答えた人は初めてです」
私がそう答えると、彼女は「ですよね……」と苦笑していた。
彼女は一番派手に見える、紺を基調とした白いユリが描かれた浴衣と、赤いコサージュ、そして黒の下駄をレジに置いた。
———振袖に比べたら、浴衣なんて霞んでしまうのに。
私が高校を卒業して働き始めて、成人式の為に振袖を見に行った時のこと。
華やかで可憐な振袖に私は、夜空に花火が打ち上げられる時の息をのむような美しさに衝撃を受けた。
———花弁を何枚も重ねたかのように美しい。
その振袖とこの浴衣を比べてしまうと、生地はペナペナで安っぽいし、目を奪われるようなキラキラとした装飾は無い。彼女はお金がないのだろうか、それとも予約を忘れたのだろうか。
問いかける勇気もなく、私はそっとお釣りを渡した。
2ヶ月後のこと。母が倒れたと聞いて、慌てて病院に駆けつけた日だった。
空も地面も、赤くなった手にかかる息も、全てが白かった。そんな白さも忘れてしまうぐらい、電話に出た母の声は明るかった。
『過労だったみたい〜。母さん少し働きすぎだって、お医者様に言われちゃった』
「どれだけ車走らせたと思ってんの! 滑って対向車に当たりそうになるし……。病院着いちゃったから、とりあえず向かう」
病院に入り携帯の設定を済ませてエレベーターを待っていると、後ろから小さく「あ……」と呟く声が聞こえた。
振り返るとそこには。
———あ……。
綺麗なユリが目に映える浴衣、ポニーテールを彩る真紅の薔薇のようなコサージュ。季節に似合わない服装は病院内で浮いている。成人式に着て行くと答えた女性だった。
目には真珠のように光る滴を溜めて、寒さに震える体を押さえて一礼した。
「すみません……成人式に着て行くなんて嘘……」
「え、あ……いえいえ! 嘘なんて誰でもつきますし……」
フォローにならなかっただろうか。彼女の瞳から切り離された滴は、小さな結晶のように頬へと流れる。ギョっと驚いてハンカチを渡すと、彼女はまた苦笑した。少しだけ触れた手がヒンヤリ冷たい。
「母さんに振袖姿を見せたかったんですけど……意識が朦朧としているから、これを振袖だって嘘ついてもバレないんじゃないかって……」
「え……」
彼女は震える声でこう言った。
「母さん、あと3日もしないで死ぬと思います」
———あどけない少女のようだ。
二十歳を過ぎた私と、二十歳にまだ届かない彼女。
二十歳に届かない彼女は、こんなにも私の目に幼く映る。
だけど、だけど———。
「大丈夫ですよ」
優しく、穏やかな口調で語りかける。
「ちゃんと振袖に見えます」
幼い表情とは裏腹に、派手で麗しい浴衣は少し背伸びしたコーデに見えた。
「綺麗ですよ」
とても振袖には見えない、大人びた服装。横顔も涙の筋が残る少女。
でも、私は。
「……ありがとうございます」
淡く微笑んだ彼女は先にエレベーターへ乗って消えてしまった。
でも、私は。
でも、私は、
———でも、私は、
———こう嘘をつくしかなかった。
そう自分でも思う。
- Re: ただ、それだけのこと。(短編集) ( No.2 )
- 日時: 2018/09/07 05:50
- 名前: 麗楓 ◆F.XzXC1pug (ID: u/mfVk0T)
やっと電気復旧...(北海道住み)
私は道東に住んでいるので、地震の被害はありませんでしたが、停電なので情報元はラジオのみ...。
正直まだ、どれだけ酷い地震だったのか理解出来ていない状況です。
とりあえず、過去の小説載せておきます。
なので私は彼を殺します。
彼氏が浮気をしている現場を目撃してしまいました。
なので私は彼を殺します。
「ちょ、待てよ何だよコレ?」
まだ状況を把握しきれていない彼の両手両足はガムテープでグルグルに巻き付けてあるので、暴れてガタンゴトンと電車のように左右に揺れている。
本当は口にもガムテを付けたかったのですが。
「......何って貴方を殺害する準備に決まってるでしょう?」
「へ、......殺......はぁ!!?」
「何か問題でも?」
「何でそんなすっとんきょうな顔で言うんだよ!?」
私、そんな間抜けな顔で発言していたかしら?
ここは密室で鏡が無いので、自分が彼の目にどう写っているのか、よく分からないんです。
ただ彼の瞳を覗き込むと、いつもの私が居ただけ。そして彼の手足が拘束されているだけ。体の自由が効かないだけで、いつも通りではありませんか。
「大体、何で殺されなきゃならないんだよ!」
「この期に及んで、すっとぼけるなんて」
「すっとぼけてねぇよ!」
「この写真を見ても私に口答えするつもり?」
すっと彼の目の前に現れたスマホの画面には、彼と他の女性が一緒に歩いている画像を突きつけてみた。
「あ......これ友達だよ。誕プレ買うのに付き合わされてただけで」
「じゃあこれは?」
横に画像をスライドすると、彼と女性が抱き合っている画像が表示される。さすがにこの画像は効いたのか、彼の顔がサーっと青ざめていく。この表情を見ていると、思わずプッと吹き出してしまった。
さて、彼はどう言い逃れをするのでしょう?
「いや......これは、......その」
「さっきと同じ服着てるから、同じ女性だよねぇ〜?」
「......はい......」
「へぇ〜凄いベタベタくっついてるよねぇ〜?」
「えっとぉー......」
「じゃあ殺しまーす」
「ちょっタンマァァァー!!!」
シャキーンと効果音がつきそうな、鋭い刃を彼に向ける。先程研いだばかりの包丁は、ほんの少し触れるだけで切れる。つまり、何が言いたいか分かるだろう。
「何を怖がっているの、研いだばっかりだから痛くないですよ?」
「そういう問題じゃねぇ......」
「さーんにーいーち」
「もう浮気しません女と話しません合コンとか誘われても行かないしチョコとか貰っても拒否するからぁ!!!」
彼と刃との距離、わずか1㎝。
まあ、それだけ聞けたら十分ですよね。
「2度目は許さないからね?」
「す、すみませんでした......」
背後に回り込み、彼の大きな手を見つめる。ふふふ〜♪と鼻唄を歌いながら、耳元でそっと呟いた。
「浮気も認めたし、他の女の子と話をしているのも聞けたし、合コンに行ってるのも分かったし、本命チョコも沢山貰ってるんだねぇ〜」
ニッコリ彼の前で微笑むと、彼の顔は更に血の気が引いていく。きっと私には内緒で、何か色々な事情があるようです。
しまったバレた、と顔に思いっきり書いているではありませんか。
「はい殺しまーす」
「話を聞いてェェェ!!!」
彼の手足のガムテープが取れるまで、あと何時間かかるでしょうか?
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