複雑・ファジー小説
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- ポンコツ女帝陛下と奇人変人だらけの八英雄
- 日時: 2018/09/27 17:37
- 名前: 夢里 (ID: 2cRnojto)
昔々、この星には二つの人が住んでいた。一つ、『人間』。二つ、『蝶人』だ。
平々凡々とした人間に比べ、蝶人は身体能力も遥かに高く、おまけに力を有していた。
当然、人間と蝶人の軋轢は深く、互いに国を創り、永きにわたって戦った。
——此は、人間と蝶人の、戦いと苦悩と、和解の物語。
… … … … … … … … … …
「この私、カイル三世は、今日、退位を表明する!」
その発表は唐突で、民に大きな困惑を引き招いた。「誇り高き賢帝カイル」と呼ばれた皇帝が、
皇国を挙げての祭りの最中に言った。
『何と言うことだ……』『陛下は如何して仕舞われた』『後継ぎは一体……』
等、様々な意見や思惑が飛び交う中で、当のカイル三世は颯爽と帰っていく。
濁った様な空気が漂う会場の中、何処吹く風と言わんばかりに涼しい顔をしているのは、
八英雄と謳われ、民からも絶大な支持を得ている者達だけだった。
… … … … … … … … … … … …
さわぁ、と音がたちそうな位爽やかな風が、小窓を開けた室内に入り込む。窓辺のマーガレット
とカーテンが大きく揺れ、風の強さを物語る。
散らばっている裁縫道具を纏め、エリザベッタは窓を閉めた。
「ウニャーオ」
「どうしたの? スズランカ」
足元を見ると、黒猫のスズランカが寄ってくる。スズランカを持ち上げ、少し頬擦りすると、
気に障った様で、爪をたてて逃げてしまった。
「ご機嫌ななめだったのかな? 」
スズランカの逃げた方向をぼんやりエリザベッタが見ていると、通り沿いの玄関から馬の鳴き声が
聴こえる。不思議に思ったエリザベッタは、そっと玄関のドアを開き、通りを見た。
其所には、只の一町民の住む街に似つかない、正に豪華絢爛な馬車が止まっている。馬車に掲げ
られている旗は、この皇国の国旗だ。
「エリザベッタ・ヴィルヘルム様でお間違い無いでしょうか」
「はい……」
久々に見る皇国の馬車に、私は圧倒された