複雑・ファジー小説
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- こんなーーーでも愛してくれますか
- 日時: 2018/10/17 18:10
- 名前: サブ (ID: WqZH6bso)
ねえ、私は誰?
ーーサラ・ルノアール
私は何者?
ーーただの人間
あなたは誰?
ーーお前と同じ、サラ・ルノアール
あなたは何者?
ーー考えることは諦めた、人間ではないのかもしれない
思春期を迎えた頃、自分の身の回りに起こる異変に戸惑い病院へ行ってみると異常なしの判定だった。念のため、監視カメラを設置された部屋で一日過ごしてみたところ、私は二重人格かもしれないと言われた。
なかなか納得出来ないならノートに書いてみるといい、そう言われてわざわざ誰も部屋に入れないよう外から鍵をかけられ私はノートに馬鹿馬鹿しいと思いながら医者の指示を受け質問を書いた。
翌日にはノートに私の字とは思えない丸みのない読みやすく丁寧な時で返答が書かれていた。私の寝ている間に誰かが回収して書いたのかもと監視カメラの映像を見せてもらった。
ノートに書いたのは紛れもなく私だった。
寝ている間の記憶はなくて、目が覚めると知らない場所にいたり周りに崩れた瓦礫が山のように積まれていたり、森の木々が燃えて火の海になっているのを目の前にしたこともあった。
親からは自分の力で生きていくように言われて家から、唯一の居場所から追い出された。
歩いてて途方に暮れている頃、石とレンガで造られた塔の建物の一番上の部屋で目が覚めてそこに住むことにした。お金は私が朝起きると用意されてる、それで隣町で服を買った。食事は二日に一回一食で充分だった。
それなりに生活に支障が出ることは無かったのはもう一人の私のおかげ。私の為に私に尽くしてくれるもう一人の私に感謝して、もう一人の私も私なんだと受け入れることにした。
成人を超えたぐらいの歳の頃、ある青年と出会い、私は彼に恋をした。
青年の答えとは。
- Re: こんな私でも愛してくれますか ( No.1 )
- 日時: 2018/10/05 17:41
- 名前: サブ (ID: ylDPAVSi)
ーー夜、昼間に起きている自分が眠りにつくと俺は目を覚ます。昼間の自分をサラ、夜の自分をルノアールと自分達の交換日記で伝えた。
小さい頃から太陽の登る時間帯に起きていることはあまり無くて、自分が人間とは違う力を使えることも歳を重ねる度に強くなってきた。
華奢な身体ではあるが、下半身には男性器が無い、上半身には女性特有の胸がない。まだ成長段階なのかもしれないが性別はわからない。
一つの体に二人存在している。自分は薄々気づいていた。きっと表がサラ、裏が自分だ。俺は容姿を変えることも空を飛ぶことも透明になることも火を放つことも氷だって作れる。加減を誤れば軽いため息で強風と竜巻発生、ボーッ見つめていた動物が石化する事など日常茶飯事だったから、塔の中で一人生きていくのが正解だと辿り着いた。
サラはただの人間で能力など使えない。ひ弱な人間だから、同じく弱った人間を見つけるとサラを他所から見ているようで放っておけなかった。
雲のない日に月を眺めていると人間の血の匂いがした。塔の下を見てみると大量に血の出ている片脚を引き摺り腹を抑えた青年が歩いてきたのが見えた。脚だけではない、横腹からも凄い血の匂いだ、彼は塔を背に預け座り込んだ。
耳を澄ませば聞こえる荒い呼吸が段々と掠れていくのが、青年を死へ導く合図のようで、これまで自分の力を知らず制御も出来なかったことで多くの犠牲を出した俺は人を殺さないことを目標としてきた。
窓ガラスの無い石枠から身を乗り出して青年の前に降り立つ。腹を抑えた状態で顔からは血の気が引いている。青年に近づき屈んで、青年の頬に触れたーー。
彼は一度僅かながらも目を開けて俺を見た。姿を力を使っているところを見られてはいけない俺は彼が目を瞑って気持ちよさそうに眠ったあと、彼から俺の記憶を消して、塔の自室へと戻った。
- Re: こんな私でも愛してくれますか ( No.2 )
- 日時: 2018/10/10 21:09
- 名前: サブ (ID: ylDPAVSi)
結局、彼は傷も治ったはずなのに疲労回復をしてやらなかったからか、太陽が昇っても目を覚まさなかった。
サラ・ルノアールは二人で一人。一人で暮らすようになってからそれほど困ることもなかった為、今では交換日記をやっていない。
ルノアールは彼の事を伝えるべきか少し悩んだが自分の記憶は消したのだ、次に自分を見たとしても何も思い入れはない。無駄な情報は要らない。
ルノアールは眠くなった。
そろそろサラが目を覚ます時間だ。今日もサラの身に危険が迫らないことを願いつつ瞼を閉じた。
瞬きをしたその一瞬で目を覚ましたサラは腕を高く上げて大きく伸びをした。ルノアールの意識はない。
「ふぅー、朝だー!良い天気、今日は何しようかな」
サラは暫し顎に手を置き考える素振りをして綺麗な水の流れる川に行こうと、塔の下へと伸びる階段を駆け下りる。
塔の扉を開けようと扉に手をかけたところで扉は勝手に動いて開いた。一瞬の驚きも目の前に現れた大きな影に口をあんぐりさせるものに変わった。
目の前には何年ぶりかに目にした人間だったのだ。
目の前の男はサラを見るなり、少し固まったあと口角を上げるのと同時に瞳を大きく輝かせた。
- Re: こんな私でも愛してくれますか ( No.3 )
- 日時: 2018/10/17 16:09
- 名前: サブ (ID: WqZH6bso)
ーーーーー
この国は二代目に代わった王によって平和という言葉を忘れた。
二代目の王は一代目の一人息子だが一代目と違って血の気が多い中年だった、肩慣らしだと一代目が交流を深めていた隣国に爆弾を放った。戦争になった、否、今でも戦争は続いている。二代目は国から必要のものを集め、不必要な者は国から追い出した。武器や男は戦争に駆り出され、独身の女は使い物にならないと国から追い出す。人妻やペットなるものは人質とされた。国から出ることに反論した者は殺された。
隣国の領土は広く窮地にたった二代目のザウスは技術者を求めた、隣国は資源を求めた。これにより一時休戦を宣告。ザウスは身の回りの者に使えるものを集めてこいと指示した。
フレッド・ハイド
俺には父母と妹がいた、父は出張で隣国より遠くへ出ていた。俺に何も無いが故に母と妹は人質にとられた。
単純で人の心を弄ぶ外道なザウスを騙そうと考えた、ただの野良猫を「魔術師の使いで魔法が使える」と言って目の前に出した。
ザウスは幼い頃から魔法の力やら得体の知れないものに目がないと聞いていた。簡単に騙せると思っていた、俺は馬鹿すぎた。身内を人質にとられたことで冷静に物事を考えられなくなっていた。
案の定、猫は何も出来ずに鞘から引き出した剣に腹を貫かれた。
「貴様の身内にこんなことをされたくなければ手を抜くな、責務にもどれ」
腹が立って城から出ると木影から手榴弾を投げた、城壁は無傷だったが敵のスパイ行動かと思われ弓矢が飛んできた、必死で逃げたが横腹と左太腿に刺さった。血が出るのを必死で逃げて、追手が来ないことに安堵した。きっと夜だから、太陽の出ている時刻に血の跡を追って来るだろうと予想できた。
矢を引き抜けば痛みは大きくなり赤が溢れ出てくる、眩暈もしてきて意識も朦朧としてきたころ雨が降ってきた。土や葉についた血を流してくれて俺の存在を消してくれる。
暫く歩いて大きな垂れ草をかき分けたところに石でできた塔を見つけた。もう、どこに行く力も残っていなかった。ここまで歩けたのが奇跡だと、塔を背に座り込んだ。
いつの間にか雨は止んでいたようだ、というより此処の芝や草は濡れていなかった。月明かりが俺をあの世へ導いてる気がした。
何かが頬に触れた気がする。瞼を僅かに上げれば、ぼんやりと人の顔が見えた。暖かい、身体中が温もりに包まれた。残っていたのかわからない力が抜けて俺は意識を失った。
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