複雑・ファジー小説

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今宵も月が綺麗ですね・・・・・・
日時: 2018/12/22 18:50
名前: 天月 (ID: FWNZhYRN)

満月が浮かぶ深夜、『高月 真尋(たかつき まひろ)』は残業を終え人気のない夜道を歩いていた。
空腹だった彼は遅くなった夕食を求め道沿いにあるレストランに足を踏み入れる。

レストランにいたのはシェフとして働く1人の少女『門永 零(かどなが れい)』。
彼女は閉店直前にも関わらず真尋を飲食店に招き入れる。
天使のような笑顔に真尋は零に一目惚れの感情を抱きながら席に腰かけ料理を注文する。

誰にも邪魔されず女の子と2人きりの心躍る空間。
豪華な晩餐を味わう最中、ふと零は月を見上げて言った。

「今宵も月が綺麗ですね・・・・・・」

誰でも共感を抱くただの一言・・・・・・しかし、真尋は知る由もなかった。
それがこれから起ころう悪夢の始まりだった事に・・・・・・

Re: 今宵も月が綺麗ですね・・・・・・ ( No.1 )
日時: 2018/12/22 20:52
名前: 天月 (ID: FWNZhYRN)

 時計の針が深夜の10時を指し長かった残業は待ちに待った終わりを迎えた。苦労が済んだ一時の嬉しさに一息ついた表情を浮かべ椅子に座ったまま大きく背伸びをする。朝から長時間、同じ体制で職務を全うしたせいか首や肩、特に背中が痛い。軽い運動しただけなのにボキボキと骨の音が痛々しく響く。それはまわりも同じだった。

「ふぅ・・・・・・やっと終わったな。お疲れ拓也。」

「お疲れ真尋、今日も1日大変だったな・・・・・・ったく、この仕事は疲労が溜まってしょうがない。早く家に帰って風呂上がりにビールが飲みてえよ。明日の事は考えたくねえ。」

「同感だ。仕事が山積みなのは毎日なんだから明日に備えてちゃんと英気を養わないとな。俺も今日は早く寝るよ。」

 そんな日常的に在り来たり会話が途切れる事なく弾む。

「そうだ、今日部長に頼まれた仕事の1つに分からなかった部分があるんだ。明日でいいから手伝ってくれないか?」

「オーケー、明日になったら真っ先に見てやるよ。ページを開いておいてくれ。じゃあ、俺はもう帰るよ。」

「頼みを聞いてくれて感謝する。お礼に酒をおごってやるから今度一緒に飲みに行こうぜ。あと、夜道は色々と物騒だから気をつけろよ?お前の友達、"行方不明"になったんだろ?まだ見つからないのか?」

「ああ、あいつが姿を消してからもう4年になるが今になっても安否すら分からない。お前の言う通りいつ何が起こるかわからない世の中だからな。十分気をつけるよ、また明日。」

 俺は帰りに必要な物が入った鞄を肩にぶら下げ同僚達に"お疲れ様でした、さようなら"と簡単な挨拶をして職場を後にした。


 今までいた室内の明るさで目の力は衰えていたため外は真っ暗な闇の世界が広がっていた。ここは街の中でも退廃地区のような陰気な一帯、車もほとんど走らずここを通る人は少ない。それ故に不気味なほど静かだ。更に付け足せば夜の闇に紛れて野良犬らしい獣の遠吠えが余計に不安を掻き立てるのだ。離れた距離を置き点在する外灯が唯一安堵をもたらしてくれる。

 俺はホラー映画の舞台を歩く気分で薄暗く狭い道路の脇にある歩道を通り帰宅を始めた。暗い世界に聞こえるのは自分の足音だけ、だが後ろに何かがいそうで恐くて振り返れない。口に出すのも嫌だがたまに何かの気配を感じていた。ひんやりとした空気、唸り声が聞こえてきそうな感覚、正直に言えば仕事上司に怒られるよりもこっちの方が恐い。俺はなるべく早歩きで横にある公園を見向きもしないで通り過ぎる。

 季節は9月、夏が終わりを迎え始めたばかりのこの季節は朝は残暑が残っているものの夜は雪が降る前の冬のように寒い。どれくらい寒いかって?例えば吐息をすれば白い息が空気に溶けてゆく。あと、冷たい風が肌に突き刺さり震えが止まらなる。風邪を引くのは嫌だからこの時期は常に厚着のコートを持参しているのだ。だが、こんな寒暖差の激しい環境は普段の生活に支障をきたす。仕事の調子にも差し支えるが社会人として生きているからには弱腰になってはいられない。そこは持ち前の気合で何とかしよう。


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