複雑・ファジー小説

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もっと妬み、僻み、愛
日時: 2019/01/21 22:25
名前: 木の実 (ID: Yry.8Fde)

@真咲 玲楽(まさき れいら) 23
モデル。
わがままな性格で、自分が1番じゃないと気が済まない。

@石川 眞子(いしかわ まこ) 25
中学教師。数学を教えている。
太っている見た目から卑屈な性格で、いつも誰かを僻んでいる。

@武田 ひかり(たけだ ひかり) 25
看護師。
人当たりがよく、女性らしい性格。

@千葉 愛美(ちば まなみ) 24
多大な借金を抱えるフリーター。
風俗店で働いていることは隠している。



@九条 一哉(くじょう かずや) 26
カメラマン。
冷徹な性格だが腕は確か。玲楽の撮影をすることになる。

@山岸 晶(やまぎし あきら) 27
眞子の職場の国語教師。
爽やかで誰にでも優しい性格。

@沢村 瑛二(さわむら えいじ) 20
愛美のバイト先のコンビニのアルバイト。
明るく優しい性格。

@河野 真司(こうの しんじ) 28
商社で営業主任をしている。ひかりの恋人。

Re: もっと妬み、僻み、愛 ( No.1 )
日時: 2019/01/21 22:43
名前: 木の実 (ID: Yry.8Fde)

#01 【 真咲玲楽 】



玲楽は起きると隣の男に布団を被せ、彼の腕の中へ。

この男、なかなかいい体。
寝心地は最高。
口説き方も上手かったし、顔もまあまあイケメン。
んー、付き合うにはー…って感じだけど。

嫌々行かされた合コンだったけど、合コンってのも捨てたもんじゃないかも。

その時、彼の携帯が鳴った。
つい、気になっちゃった。

画面には『みほ』という名前とメッセージが。

『一昨日はありがとっ!こうして毎月記念日祝ってくれて…』

は?記念日?

『本当にカイトは自慢の彼氏だよぉ〜〜』

自慢の彼氏?
なるほどね。

てかこいつ、カイトって言うんだっけ。
てかこいつ、あたしのこと騙したってわけか。

ふーん。

玲楽は起き上がり、ベッドから出ると自分のカバンを漁る。
携帯を出すと、カメラを開いた。

内カメにすると、玲楽は胸まで布団を被り、カイトとの2ショットを撮った。

「よし」

玲楽は鼻歌を歌いながら立ち上がり、下着を身につける。
ワンピースを着ると洗面所へ。

軽く髪の毛をとかし、手についた髪の毛を洗濯機の脇にそっと置いた。

次に洗面台に置いてある青の歯ブラシを手に取りトイレへ向かう。
玲楽は歯ブラシで便器をゴシゴシと磨くと「うえっ」と呟き、笑顔で歯ブラシを元に戻した。

部屋に戻るとカバンから自分のイヤリングを取り、片方をテレビ台の下に置いた。
見えるような、見えないようなこの位置。

玲楽は寝ているカイトの顔を見る。

「残念。あたしを騙すなんていい度胸してんじゃん。あとはみほちゃんと頑張ってねっ」

玲楽は1人そう言うと、微笑み、昨日交換したカイトのLIMEに先程の写真を送り、そのまま彼のLIMEをブロックした。

「あ〜あ、相性良かったのになあ〜」

玲楽はそう言うと、部屋を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


パシャ、パシャ、パシャ。

カメラの音が響く中、玲楽はスタジオでポーズを撮る。

「いいね玲楽ちゃん!かわいいよ〜!」

カメラマンの男は言いながら撮る。





「…お疲れ様です、玲楽さん」

そう言ってタオルを差し出すのはマネージャーの伊藤百合。

相変わらず声が小さくて腹が立つ。

「ありがと」

百合ちゃんからタオルを受け取り、汗を拭いた。

すると、プロデューサーの廣瀬が近寄ってきた。
あたしは立ち上がり、廣瀬を見る。

「いや〜玲楽ちゃん!相変わらず可愛かったよ〜」

「やだぁ〜もう!廣瀬さんお世辞ばっかりなんだから〜」

精一杯ぶりっ子。
こうでもしなきゃ仕事はとれない。

「最近色んな雑誌の表紙飾ってて、もう大スターだね!」

「そんなことないですよぉ〜。お陰様で楽しくやらせて頂いてます〜」

なんて、こんな会話するのも本当はめんどくさい。だるい。





「百合ちゃん、あたしが表紙のやつ実家に送っといて。あとさ、家見つかった?」

車の中で、玲楽が言う。
百合は運転しながら答える。

「わかりました…家はその、まだ…」

言われ、玲楽は溜息をついた。

「もう何でもいいから見つけてよ。安くて広くて可愛いところ。近所も衛生的で、嫌な奴がいないところ!…今のアパートもうウンザリ。大家はウザいしファンは押しかけてくるし、なんなのよもう」

「はあ…」

「ちょっと聞いてんの?前から言ってるよね?早くしなさいよ。ほんと使えない」

「…すいません。あ、あの」

「なによ」

「…玲楽さん、シェアハウスとかって興味ないですか?」

「は?シェアハウス?嫌よそんなの。他人と暮らすなんて無理」

「いやでも!その、掃除や洗濯、食事も付いているところでして…」

百合はそう言って信号が赤のうちに助手席にある自分のカバンから1枚目のチラシを出し、玲楽に渡した。

玲楽は「ふ〜ん」と言いながら見る。

「…玲楽さん忙しくて掃除とかする暇ないだろうし、いいんじゃないかなって思ったんですけど」

「無理。掃除とか食事なら百合ちゃんがいるじゃない。知らない人のなんて無理よ」

言われ、百合は1人俯く。

「…ファンにも、繋がると思いませんか?」

「は?」

「そこで宣伝して、インスタとかにアップして、玲楽さんがいい方であることを見せるんです。玲楽さん、最近評判を気にしていたし…」

確かに、ここ最近あたしが性格が悪いとか、顔だけとか、スタイルだけとか、人をこき使ってるとか、口が悪いとか、態度が悪いとか、そんなことをよくネットで叩かれている。

「…でも、誰かとの共同生活なんて…」

「モデルとして、これからもやっていくなら良いと思うんです。もちろん、私も時間のある時は何かお手伝いしに行きますし」

言われ、玲楽はしばしの沈黙のあとに「…嫌に決まってるでしょ、そんなの」と言って足を組んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

家に帰ると、いつも通り、ドアにはファンレターと嫌がらせの紙の山。

玲楽は溜息をつくと貼り紙をすべて取り家の中へ。

真咲玲楽うざい
ブス
しね
キモイから雑誌に載るな
反吐が出る
デブ

なんて、こんな言葉がしょっちゅう。

うざい?あたしがあんたに何したのよ。

ブス?は?こんなことするあんたはどーせ僻んでるだけでしょ。

しね?本当に死んだら驚くくせに。

キモイ?少なくともこんな嫌がらせすんなあんたよりはマシだっつーの。

反吐が出る?勝手に出せば?

デブ?あたしがデブならみんなデブよ。


なんて、心の中で言い返しても誰にも伝わらない。
かと言って、評判を考えればこんなこと世間に発する訳にもいかない。

実際、メンタル的にはこんなの全然余裕。
気にもしてない。

だけど、これを見た両親やあたしに関わる全ての人は嫌な気持ちになるに決まってる。

何より、モデルをやっていくなら世間の評判は大事。

そんなこと分かってる。
分かってるのに、どうしたらいいか分からない。
あたしは頭悪いんだから誰か考えてよ。

その時、着信が来た。
《真咲玲子》と出ている。

ママだ。

「…もしもし」

電話に出ると、玲子は嬉しそうな声で言った。

『玲楽〜!雑誌、見たわよ〜!活躍してるみたいね』

「…見てくれたんだ、ありがと」

『玲楽の活躍見ないわけないじゃないの〜!』

「ふふ、ありがとうママ…パパは?」

言うと、玲子は少しトーンを落とした。

『…パパにも見せたわよ!…まだ寝てるけど、いつか全部一気に見れる日が来るわよ!』

「…そっか」

『…玲楽、うまくやってるの?その、色々言われてるみたいだけど…そんなの、気にしちゃダメよ!ママはいつでも玲楽の味方だからね!ママが1番のファンだからね!』

「ママ…いつもありがとう。大丈夫よ、有名になるってことは批判もされるってことだから。もっと稼いで、絶対パパのこと…」

『玲楽…ありがとうね。頑張り過ぎないようにね』

「うん、ありがと!じゃあ、そろそろ寝るね」

『うん、おやすみ』

「…おやすみ」

電話はそこで切れた。


ダメだ、もっとお金がいる。
まだまだ足りない。
こんなんじゃ足りない。
もっと有名にならなきゃいけない。
もっと、もっと…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

都内某所、シェアハウス。

外観は海外のようなレンガ造り。
緑が生い茂る庭があり、レンガの通路を歩くとブラウンの両開きの扉。

「へえ、外観は結構おしゃれ…」

扉の前に立ち、玲楽は1人呟いた。




昨夜ーーー。

『えっ本当ですか?!』

百合は驚いた声で言った。
玲楽は携帯を耳から離し、嫌な表情で「うっさいわね…」と呟く。

『あ、すみません。本当にいいんですか?シェアハウス』

「良いわよ。やっぱ掃除も洗濯も百合ちゃんじゃ頼りないし?」

『あはは、すみません。でも良かったです。じゃあ住所送りますので、内見、お願いしますね』

「はいはーい」




なんて、軽いノリでシェアハウスに住むことにしちゃったけど。


まあ割と綺麗だったから外観は合格。
問題は部屋と住人よね。


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