複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Low
日時: 2019/05/22 19:27
名前: ドコサヘキサエン酸 (ID: OYJCn7rx)

気まぐれに更新
大概オチない話なので読むには足りないかも。読者に想像解釈任せます。
続き、解説欲しかったらレスにて。解説に関しては小説内に出てない単語が急に出てきたりするのでご注意をば。

1.猫>>1

猫 ( No.1 )
日時: 2019/05/22 19:28
名前: ドコサヘキサエン酸 (ID: OYJCn7rx)

 君は死とは何たるか、考えたことがあるだろうか。いいや、聞くのはあまりに愚かなこと。生きていく上で、誰しも一度は考えたことがある筈だ。
 例えば、死という概念を知ったとき。幼いながらに死を理解した瞬間に、サッと血の気が引いていくような感覚を覚える人も居るだろう。未知の未来に、足を竦ませる人も居るだろう。眠ったらこのまま、目を覚まさないかもしれない。そう考える人も居るだろう。死とはそれだけ、人を動かす概念だ。
 死は多くの人々に興味を抱かれている存在なのだ。しかし、死とは未知数のもので、人々を恐怖に陥れることもあれば、人々の好奇心を限りなく刺激することさえある。何故ならば、死の感覚は生者に伝えられないからだ。死んだ者は喋ることが出来ない。我々が考える死は、あくまで想像であり事実では無いのだ。我々が真実を知り得ることの無い死は、生きていく上で切り離せない存在でもある。

——さて、諸君よ。ここまでは良いかな?

 ここから本題に入るのだが、私は今、死にかけの猫だ。正しく言えば、死にかけの猫に憑依したおじさんだ。感覚的に、もう数分で息絶えそうな予感がするのだよ。
 体が重いが、今どんな見た目をしているのか確かめなくてはいけない。そう思って偶然あった鏡の前まで歩いてきたのだが、全く知らない猫の姿が映っていた。恐らく、これが私なのだろう。首輪が付けられていて、飼い猫らしかった。やはり、見た目からも死にそうな雰囲気だ。
 鏡で自身の姿を確認したは良いが、ここからが問題である。喋ろうにも、喋れない。鳴けるのだが、猫の状態では人間と意思疎通できない気がするのだ。猫とは、なんとか会話できるかも知れないが、ね。
 空腹感があるが、不思議と食べる気が起きない。小さい机に散らかっているカップラーメンなんかも目に入るが、食べたいと思えない。

——はぁ、しかし、猫の姿で死ぬことになるのか。

 これほど奇妙な死があっていいのだろうか。死が刻一刻と近づいてきているのは分かるのだが、不思議と死への恐怖はない。まだ、完全に受け入れられてないからなのか、それともほんとうに恐怖を失ったのかは分からないが。
 しかし、私と入れ替わったのだろう猫は、私の姿で上手くやっていけるのだろうか。少々気になる。もうすぐで給料が入るのに……。私の姿をした猫は、キャットフードを食べたりするのだろうか。それはそれで面白いが、稼いだ金をそんなものに使って欲しくは、ないのだがね。

「ピーちゃん……」
——何かね?

 これは飼い主の声か。ピーちゃんは私のことだろう。適当に短く鳴いてやる。飼い主も死期が近いのを悟っているらしかった。
 近くで袋の音みたいな音がするが、何かは分からない。だが、美味しそうな匂いが鼻を掠める。飼い主らしき人物に目を向けると、棒状の袋みたいなものを持っていた。開いた口からトロリと何かが垂れてきている。あまり分からないがこれはチャオなんとか、というやつではないか。美味しそうなのは分かるが、やはり、食べる気が起きない。

「…………要らないか」

 飼い主らしきらしき、いや、飼い主か。飼い主である女性は寂しそうな声で笑った。無理をしているように思う。
 なんだか、徐々に頭が働かなくなっている気がする。気のせいだろうか。いや、死ぬのが目の前まで迫ってきている。

——できれば人間の姿で死んでみたかった。

 掠れた声で私は鳴いた。飼い主が頭を撫でているのが分かる。飼い主が私を必死に呼んでいるのも分かる。しかし、私は目を閉じずにはいられなかった。瞼が重かった。
 飼い主の声が、撫でる手が遠くなる。
 ……死んだ。視界が暗い。死んでもしばらくは意識があるようだ。分からないので想像でしかないが未だ撫でられてるのだろうし、名前を呼ばれているのだろう。
 正真正銘、私は猫の代わりに死んだのだ。



“動物に育てられた男性、保護される。”
 ——男性の知人曰く、「数日前までは難なくコミュニケーションが取れていた」。会社を無断で休んだと聞いて、家に行くとそこには猫化した男性がいたそうだ。見た目は変化ないようだが、まともなコミュニケーションは取れず、食べるものもキャットフードになっていたという。
「いやー……怖いです。どうして急にこんなことになったのか。分かりません。動物に育てられたのを隠してたんだと社内で広まってますが、俺はそうじゃない気がしますね。猫って人間を育てること出来るんですかね、第一。できないと思いますよ、俺は」
男性の知人は、苦悩を顔に浮かべて語った。


Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。