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複雑・ファジー小説
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- 桜の如く笑えよと
- 日時: 2019/06/01 22:46
- 名前: 千葉里絵 (ID: KPixIphw)
遥か昔、未だこの地が國神様によって造られてからほんの幾百年しか経っていなかった頃、ある女が現れた。
人々からは「藤花の君」と呼ばれ、大層美しい女だったそうな。
そんな時分に、日嗣の御子が妻を取ることにした。
妻の候補には四人の姫が挙がった。勿論、藤花もその一人だった。
四人の姫君達は一年程同じ敷地で暮らした。姫は皆、御子の想いが少しでも自分に傾けばと必死であった。
しかし、日嗣の御子は藤花の元にばかり足繁く通っていた。
そんな中、遂に日嗣の御子が妃を選ぶ日が来た。
誰しもが藤花が選ばれるであろうと思っていた。
しかし、四姫が揃い、いよいよ選ばれるという段になった時、日嗣の御子は藤花に近寄り
ー懐剣で刺し貫いた。
この愚か者めが。私を欺くことが出来ると思うたか。お前が姫なんぞではないことは疾の昔にわかっておったわ
と口にされた。
すると藤花からは見る間に女らしさが消え失せていった。
そうか、わかっていたか。しかし、見ておれ。御主にはこの先、数多の試練が待ち受けているであろう。それに苦しみ藻掻くが良い。そして、辛くなったら俺の名を呼び、俺に乞い願うが良い。
藤花はそう言うと、藤の花弁と成り外へと散っていったと言う。
『東領ニテ翁ヨリ語ラレシ話集「藤花ノ話」』
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