複雑・ファジー小説
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- 今日の宿題:明日までに人間を殺してください
- 日時: 2019/06/26 18:25
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1173.png
拙作ですが優しい目で見守っていただけると幸いです。(*- -)(*_ _)ペコリ
表紙のURLを貼っています。よければ見てください。
☆粗筋
ーー「キミは、死神になる才能があるよ」
孤独な少年の前に差しのべられた救いの手は、死神のものだった。
死神の学校へと通うことになった少年は、死神になるべく日々勉学に励むがーー。
ある日、恐れていた課題が出される。
「明日までに人間を殺してください」
少年の決断はーー。
☆
中学生です。
すみませんが、テスト期間などの場合は更新が遅れがちになります。
スローペース更新ですが感想などをいただければ泣いて喜びます。
☆目次
プロローグ >>01
第1章 シニガミガッコウ
第1話 グランドピアノ >>02
第2話 黒いローブ >>03
第3話 死神の鎌 >>04
第4話 またひとつ >>05
第5話 さ迷う幽霊 >>06
第6話 デート? >>07
- Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.1 )
- 日時: 2019/06/07 17:01
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12560
☆プロローグ
俺は父親が嫌いだ。
いつも笑顔で、そのくせ平気で人を傷つけることができる父親が嫌いだ。大嫌いだ。父親の血が俺の中に半分流れているのだと思うと、自分の血管を噛みきりたくなる。
俺も母もただ黙って暴力を受けていた。母は俺を何度も庇うので、体中にあざができていた。痩せていて、それでも家事を黙々と進める母に、俺は尋ねた。
どうして、離婚しないのかと。
母は悲しそうに笑った。
とてもとても、悲しそうに笑った。
「ごめんね」
ただ、そればかりを言っていた。
その悲しそうな笑みばかりが目に浮かぶ。
ある日、酔った父がいつもより酷く母をぶった。
俺は父の前に立ちふさがった。すごく怖くて、殺されるんじゃないかと思ったけど、それでも母を守りたいと思ったのだ。
ーーしかし、酔った父が俺に向けたのは、拳でも怒りでもなく。
同情だった。
俺を哀れむ瞳に背筋が凍りつく。何故。何故俺を哀れむ。哀れむなら俺が父に、だ。暴力をふるうことしかできない父にだ。
なのにどうしてーーそんな可哀想なものを見る目で見るのだ。
俺は、ちっともーー。
可哀想なやつじゃない。
母から愛されているし、いつも怯えて生活はしているが、それでも父に可哀想だと思われる要素が見当たらない。怯える原因は父にあるのだから。
「可哀想に……誰にも必要とされずに」
心から哀れむ声に、俺はゾワゾワとしながら後ろを振り返った。
母が、狂ったように泡をふきながら俺を憎々しげに睨み付ける。
「愛してるわ。愛してるわ……××。だけど私はあなたを産まなければよかったと思うの……そうすれば、こんな風に壊れることもなかったのに。あの男の血がどうしてあなたには入ってないの?あなたの血の半分が夫のものだったらよかったのに」
ーーガキリ。
何かが壊れた。
そうか。
今まで俺の半分の血はこの父親のものだと思っていたが母の不倫相手のものらしい。それで母は父に暴力をふるわれているのかーーしかもそれを甘んじて受け入れている。
あぁ。そうか。
ーー俺は。
愛されてはいても、生きることを望まれてはいないんだな。
できるなら、今すぐ殺してしまいたいに決まっている。邪魔だ。障害だ。
「……ッ」
視界がゆらぐ。
ダメだ。
ここで泣くなんて、できないーー。
居たたまれなくなって、俺は家を飛び出した。
追いかけては来ない。
当然だ。
彼らは俺が飢え死にすることを願っているのだから。
俺は、死ぬことでようやく親孝行できるらしい。
乾いた笑みがおかしく張りつく。ねばっこい感情よりも先にどうしようもなく涙が溢れそうになる。
ーーダメだ。
夜遅いとはいえここは大通り。人前で泣くことなんてできない。
路地裏へ駆け込む。
じっとりとした空気に晒されながら、俺は頬に冷たいものが伝うのを感じた。
「そこの泣き虫さん」
「っ」
人に見られてしまったか。恥ずかしい。俺はぱっと涙をぬぐって声のしたほうを見る。
白い髪の少女が立っていた。
彼女の持つ銀色の鎌が月の光をうけて鈍く光った。
「キミは、死神になる才能があるよ」
それは、死神からの死神の世界への招待状だった。
- Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.2 )
- 日時: 2019/06/07 17:18
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1174.png
第1章開幕記念イラストをURLで貼っておきます。
よかったら見てください。
☆第1章 シニガミガッコウ 第1話
ガシャン。グシャン。ドシュアアアン。
「五月蝿いッ」
「あーごめんごめん。ちょっと練習してたんだけど、うまくいかなくって」
寝起きの頭で確認する。
広大な屋敷の中で最も大きい応接間。その中央で、白い髪の美少女がグランドピアノを弾いていた。一見、幻想的なものがあるが、音がピアノのそれではない。
「どうやって弾くんだろ、これ」
首を傾げる美少女ーーファミを軽く睨む。
一週間前、ファミの弟子にされてからというもの、俺はこの屋敷で寝起きしていた。一応健全な十二歳であるし、美少女とひとつ屋根の下、というものにドキドキしたのも事実だ。
ーーしかし。
ファミがこんなんである以上、ドキドキするようなことはおこらず、やぼったいオーバーオール姿で毎夜「ちょっくら人狩ってくるわー」なんて言いながら出かけていく彼女を見送るだけが俺の仕事である。
弟子らしいことは何もしていない。
掃除洗濯料理など、家事はファミ曰く『使用人』の幽霊たちがしてくれる。無口で無表情なため、遊び相手にはならない。
なんとなく屋敷から出るのも嫌だったし、俺は一週間ほんとうにゴロゴロと過ごしただけである。
「貸してみ」
ポロン、ポロロン。
指をはしらせ、ピアノを弾く。
普通の音が出た。やはり、ファミが悪いだけで、ピアノに異常は見られないようだった。
「すごいな」
ファミは感嘆のため息をつく。
素直な言葉に俺は居心地が悪くなって目を背けた。
「これくらい、誰でもできる」
「ピアノは習っていたのか?」
「……今思えば、俺が家にいるのが目障りだったからなんだろうが、習い事だけはたくさんさせられていたからな。ピアノもある程度は弾ける。下手だけどな」
ファミがあまりに期待のこもった目で見てくるので、試しにふと浮かんだ曲を弾いてみる。物覚えは悪い方で、長く習っていたというのに暗譜している曲は多くない。迷う時間はあまり必要としなかった。
柔らかい春のはじまりを喜ぶ曲で、温かい気持ちになれるメロディ。自然のいきいきとした姿を描いた歌詞に引き込まれたのを覚えている。
お気に入りの曲のひとつだ。
弾き終えると、ファミはパチパチと拍手を送ってくれた。
「すごい、すごいよ。キミは才能がたくさんあるんだねぇ」
照れ臭くなって顔を背ける。
褒められるのは苦手だ。
「買い物に行こうか。楽器も買ってあげるよ」
買い物。
どこからその発想が出てきたのかと問い詰めたくなるほど唐突だが、ずっと出かけていなかったため、その提案は魅力的に感じた。
「うん」
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