複雑・ファジー小説

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心の底から妹が憎い
日時: 2019/06/17 19:10
名前: みずあめ (ID: /g38w/zu)


#伊藤 咲良(いとう さくら) 21
夏芽の双子の姉。幼い頃から容姿のことでイジメを受け、夏芽のことを妬むようになる。
理央に出会い歯車が狂い出す。

#伊藤 夏芽(いとう なつめ) 20
咲良の双子の妹。容姿端麗で、優しい性格、、?

#三島 理央(みしま りお)
夏芽の彼氏。咲良に想いを寄せられてしまう。

Re: 心の底から妹が憎い ( No.1 )
日時: 2019/06/19 19:17
名前: みずあめ (ID: /g38w/zu)



シンデレラは継母から陰湿ないじめ受け、姉たちには虐げられる日々でした。

そして舞踏会の日、魔法で美しいドレスを身にまとったシンデレラは王子に見初められ、王子様と幸せになりました。

白雪姫は、魔女の毒りんごを食べてしまい眠ってしまいました。
そんな白雪姫は王子様のキスで目を覚ましました。

オーロラ姫は、魔法で眠らされ、王子の真実の愛のキスで目を覚ました。



幼い頃、こんな童話を耳にタコができるほど聞かされた記憶がある。

だけど私はその度に思っていた。

シンデレラも白雪姫もオーロラ姫も、なぜ幸せになれたのか。

それは、美しさを持っていたからだ。

心の美しさではない。
もちろんこの童話のヒロインたちは心が美しいものではあった。

だけど本質は違う。





どんなに美しい心を持っていても、美しい容姿がなければ、心を見てもらうことすら叶わないのだ。




私が幼いながらもそんな風に考えたのは、小学生の時からずっと、妹と比べられてきたからだ。


妹は姉の私から見ても美しい顔をしていた。

姉妹なのに顔がまったく似ていないと、友達にどれほど言われただろうか。
数えだしたらキリがないほどだ。

そのせいで私は昔からイジメを受けてきた。

小学生の時も、中学生の時も、高校生の時も。

クラスメイトだけではない。
それは母親も同じだった。

母はいつも、妹のことばかり自慢した。
一方、私のことは一切話そうとしなかった。

いつだってそうだった。









#01 【 きっかけ 】


「・・・今日、彼氏連れてくるね」

勇気をだして言った。

大学生にして初めてできた恋人。
母に紹介しようと、朝家を出る前に言った。

「あら、彼氏なんていたの?」

母・綾子は少し驚いた表情を浮かべて言った。

当然の反応だった。
予想していた反応だった。

「うん。いい?」

「いいわよ別に。夜ごはんは?」

「食べてから来るから大丈夫」

「あらそう。わかったわ」

そんな会話をして、咲良は家を出た。



『お母さんに許可とったよ』

LIMEを送った。

『そっか!緊張するな〜』

返信はそんな内容だった。

咲良はクスッと笑うと携帯をしまい、バスに乗った。



今日しかない。
綾子に恋人を紹介できるのなんて、今日しかないのだ。

今日は妹が友達と泊まりに行くと言っていた。

今日しかないんだ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

学校が終わると咲良は駅前の喫茶店へ。

「ごめん遅れた」

咲良はそう言いながら1人の男のテーブルへ。

「大丈夫、僕も今来たところだから」

男、石川明は言った。
彼が咲良の恋人である。

「咲良のお母さんに会うの、緊張するな〜」

明はそう言いながらソワソワして微笑んだ。

そんな彼が大好きだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ただいま、お母さん、いる?」

家に帰ると、咲良は靴を脱ぎながら言った。

すると、奥から綾子が出てきた。

「あらおかえりなさい〜・・・あ、彼?」

綾子は玄関にいる明を見るなり、茶化すように咲良に言った。

咲良は微笑みながら「うん」とこたえる。

「石川明です!」

明はそう言って頭を下げた。

「あら明くんね〜どうぞ上がって〜」

綾子はそう言ってリビングへ。

「お邪魔します」

明はそう言って靴を脱ぐ。
咲良は「あっち」と言いながら明をリビングへ連れて行った。



「初めまして〜咲良の母です〜!もう咲良が彼氏連れてくるのなんて初めてでお母さんも緊張しちゃう〜」

席につくなり、綾子は微笑みながら言った。

「いや急に来てしまってすいません」

と明。

「いいのよー」


そんなこんなで会話は弾み、明と綾子は馴染んだように見えた。

気づけば、時刻は20時を回っていた。



そんな時、玄関が開く音がした。

「ただいまー」




え、どうして?



Re: 心の底から妹が憎い ( No.2 )
日時: 2019/06/22 12:17
名前: みずあめ (ID: /g38w/zu)



・・・どうして?


「あれ、お客さん?」


リビングのドアを開け、こちらを見てそう言うのは妹だった。


「あら?夏芽ちゃん今日は帰ってこないじゃなかったの?」

綾子は途端に立ち上がり、妹・夏芽に駆け寄った。

夏芽は「あーなんかね友達の彼氏が来てさ〜帰ってきちゃったー」と言いながら綾子の席の隣に座った。

明の向かい側。

「・・・でー、お姉ちゃんのお友達?」

夏芽は微笑み、明を見て言った。

明を見ると、咲良は胸がツンとした。


明は夏芽を見て唖然としていた。

目の色が変わっていた。

口をぽかんと開け、頬を赤らめる明。





「あっいや、あの!石川と言います!え、えっと、その・・・咲良と・・・付き合ってます・・・」



ああ、嫌だ。

明は今、私のことを彼女であると夏芽に言うのが嫌だったんだろうな。

これほどまでの屈辱があるだろうか。




「へえ、お姉ちゃんの彼氏か!初めまして!妹の夏芽です!よろしくお願いします〜」

夏芽は大きな瞳を細め、さくら色の薄い唇で微笑む。

細くて白い腕で明の手を握る夏芽。



明らかに紅潮する明。






もう、嫌だ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

明が帰ったあと、咲良が部屋に戻ると夏芽が来た。

「お姉ちゃんの彼氏かっこいいじゃん〜」

夏芽はそう言って咲良のベッドに横になった。

「・・・そう?ありがとう」

「はは、正直びっくり〜」と夏芽。

なにそれ。
ばかにしてるの?

「・・・連れてきたことなんかなかったしね、夏芽と違って」

咲良が言うと、夏芽は「だね〜」と微笑んだ。

「それにいい人そうだし、いいの捕まえたじゃん〜!」

「はは、ありがと」

「で?いつから付き合ってんの?」

「まだ半年くらいだよ」

「半年か〜じゃあもうエッチしたかあ」

夏芽に言われ、咲良は思わず「してないよそんなこと!」と軽く怒鳴ってしまった。

「そんな動揺しなくてもいいじゃん〜。したんだ?」

夏芽は面白そうに言う。


逆だ。
まったくそんな雰囲気にならないことに悩んでいるんだ。

彼はキスはするし、抱きしめてもくれる。

だけど私が処女なのもあって、なかなかそういう雰囲気にはならないのだ。

それとも、私にそういう魅力がないのか。
とまで考えしまう。


「本当に、ないよ」

咲良が言うと、夏芽はつまらなそうに言う。

「ふーん、誘えばいいじゃん?あんまり我慢させてると男はすぐ逃げてくよ〜」

我慢、なのかな。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私が好きな人や彼氏を夏芽に紹介したくない理由は明白だった。

みんな、夏芽を見た瞬間夏芽を好きになる。

そして私が夏芽を嫌いな理由ーーー。







当時の私は高校生だった。
高校1年生にして、初めて恋をした。

彼は、直人くんと言った。

直人くんはかっこよくて、誰にでも優しくて、楽しくて、とてもいい人だった。

そんな人が私を好きになるはずがないのはわかっていた。

だけど、まさかのまさかで、高1の冬、直人くんに映画に誘われた。

天にも昇る想いだった。

そのデートは私の人生の中で1番と言えるほど最高の日になった。

それからも何度かデートに行った。

このまま付き合えるのかも、なんて考えた。



だけど。




5回ほどデートを重ねた頃、私は2年生に進級した。





妹が、同じ高校に入ってきたのだ。




夏芽のことはすぐに学校中に噂になった。



まるでハーフのような顔立ちをしている夏芽。

真っ白な肌に、大きな瞳。長いまつ毛。高くて小さな鼻。ほどよく薄い唇。細い手足。サラサラの髪の毛。


そんな美少女が私の妹だということも、すぐに広まった。






「全然似てなくない?」

「夏芽ちゃんはあんなに可愛いのにね」

「本当に姉妹?」



そんなことばかり言われた。



だけど、直人くんは変わらなかった。

それからも遊んでくれた。






と、思っていたんだ。






私が塾に行った日。

その日は母も父も仕事で、家で夏芽が1人留守番をしていた。

22時を過ぎる予定だった私の帰りは20時に早まり、早めに帰れることになった。

家に着いたのは20時半頃だった。

「ただいま」

私がそう言って家に入ると、玄関には見覚えのある靴があった。




どういうこと?





「・・・夏芽?」

リビングに行っても、夏芽の姿はなかった。

嫌な予感が頭をよぎる。




2階へ行き、夏芽の部屋の前で足を止めた。




「・・・ねえ・・・ふふっ・・・だーめっ・・・」

夏芽の声だった。

「・・・だめ?」

それは、直人くんの声だった。




恐る恐る、ドアの隙間を覗いた。



2人は、ベッドの上で抱き合っていた。

2人とも、服を着ていなかった。


Re: 心の底から妹が憎い ( No.3 )
日時: 2019/07/01 16:17
名前: みずあめ (ID: /g38w/zu)



私は、利用されていたんだ。



その時気づいた。

直人くんは、2年になっても私と関わり続けた。
それはきっと、夏芽に近づくためだった。

本人に確かめたわけじゃない。
でも、わかる。

私は夏芽に話していた。

直人くんのこと、私が直人くんに恋をしているということ。

デートをしていること、どんなことを言われたかということ。

夏芽はそれを、どんな気持ちで楽しそうに聞いていたのだろう。

馬鹿な姉、とでも思っていたのかな。
それとも、哀れんでいた?

分からない。分かりたくもない。



その後、夏芽と直人くんが付き合うなんてことにはならなかった。

なぜかは分からない。

夏芽と直人くんが関係を持っているのを知ってから私は、直人くんと距離を置いた。

直人くんもその頃から私には見向きもしなくなった。
夏芽が手に入ったから?かな。

だけど私がそれを目撃した日以来、夏芽が直人くんと関わっているところは見ていない。

直人くんは心無しか元気がなくなり、前のような明るさがなくなった。

これはただの予想だけど、きっとあの日以来2人は関係を持っていない。

そして夏芽が直人くんを突き放したに違いない。

なぜかって?


もう"搾取"が済んだから捨てたんだ。



あの日、2人の行為を目撃した日、なぜあの部屋のドアに隙間があったのか。

なぜあれ以来、2人は関わらなくなったのか。



すべてわかっていた。







これはすべて、夏芽の計画だったんだ。





あの日、ドアの隙間から私は、夏芽と目が合った。






ーーーーー気がしている。




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