複雑・ファジー小説
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- 吸血症状
- 日時: 2019/08/23 01:38
- 名前: 匿名 (ID: nWfEVdwx)
プロローグ 不幸程掬われるモノは無い
0
人を愛すのに見た目が一番肝心
1
「はぁはぁ……っ!」
走る。走る。走る。街の中を、商店街の中を一心不乱に走る。僕が一体何処へ向かうのか? それは僕でさえ分からないが、ただこれだけは言える。「逃げなきゃ」と。何故逃げなきゃならないのか? そんなの決まっている。『背後に居る怪物から逃げる為』である──これは僕が『僕』で無くなる、いや『人』から『人間』になる物語かもしれない──
- 吸血症状 ( No.1 )
- 日時: 2019/08/24 00:26
- 名前: 匿名 (ID: kgjUD18D)
2
「ねぇ、君は来年をどうするか、決めたの?」
ふと隣の生徒会長匡革篩が話しかけてきた。篩は僕と同じ通学路を使用していたからよく一緒に登下校をしていた。そんな篩が急に進路の事を聞いてきた。僕らはもう高校二年生だ。来月には三年生である。少しでも焦らないといけないのが普通なのだが、僕も篩も結構のんびりと今を過ごしていた。僕は三年生の間に一夜漬け──という名の詰め込み方──をして進学に向けて対策をしようとしていた。……というか個人的に篩の今後が気になるのだが? 僕は傍目で篩を確認し「そーいうお前は?」と、返答した。
「私? 私はこのまま大学に進学するよ? 東東間大学に」
「おいおい? 本当に挑戦する気か? 毎年入学者が百人も居ない超エリート大学にお前が? 僕はお勧めしないな? 幾ら生徒会会長、風紀委員会会長、美化委員会会長を務めているお前が? 設定盛り過ぎなんだよ? お前は?」
「いや? 流石に受験はしないよ、推薦だし」
「推薦か、そりゃいいってこった」
「えへへ? いいでしょー? 君もいい加減推薦なり何なりで大学進みなよー?」
篩はそう言うが僕は「大学に進む僕」という存在が考えられなかった。何といえば良いのだろうか? 簡単に言えば「白紙の未来しか思い付かない」と言った所か。そんな僕は大学に入学する事が出来るのだろうか? 不安で不安で仕方なかった──
- Re: 吸血症状 ( No.2 )
- 日時: 2019/08/25 01:26
- 名前: 匿名 (ID: BEaTCLec)
「……でも篩。僕が大学に行くとしても僕が大学に行けるとでも思っているのか? こんな優柔不断な僕を引っ張ってくれたのは他でもない、お前だぞ? 優柔不断過ぎて高校生活もあまりままならなかった僕が大学に行っても僕の大学生活がままならないぞ?」
僕が呆気からんに言うと腰を曲げ、大きな胸を揺らしながら、くの字の状態で「じゃあ私と同じ大学迄引っ張ってあげようか?」と、優しく微笑みながら僕に言う匡革。──僕は少し、「また頼ってしまうのか」と、男として少し情けなく感じた。
実際問題僕と彼女、匡革篩は完全に完璧に「性格も中身もま反対」なのだ。僕が悪い事をしている間でさえ彼女は生徒会長として、風紀委員長として、美化委員長として活動していた。僕が勉強をしていない間でさえ彼女は生徒会長として、勉強を人一倍、否人二倍、人三倍程頑張っていた。そんな彼女に対して僕は勝てる要素等、「男としての筋力」程度しかないだろう。それ程迄に彼女、匡革篩は僕にとって月と鼈と言えばいいのだろうか? それ程迄の壁、差があるのだ。そんな彼女に僕は一ミリも勝てずにいた。まぁ勝つ気は無いのだが──と、ふと匡革が言った。
「……まぁ、今はまだ時間がある。君の好きなように考えなよ? 君が本当に困ったら、私と同じ大学迄引っ張ってあげるからさ?」
匡革は僕に優しく言う。あぁ、匡革の優しさのあるこの言い方に僕は何度救われたか? 僕が何度匡革の優しさに「どんな事でも手伝う」と思ったのは。僕は口の中の唾を飲み込んで、「あぁ。有難う篩、恩に着る」と、答えた──
- Re: 吸血症状 ( No.3 )
- 日時: 2019/08/26 00:40
- 名前: 匿名 (ID: FSosQk4t)
と、匡革が立ち止まった。急にどうしたのだろう? 僕はそう考えるが、彼女が立ち止まった場所を確認し、理解した。
そこは駅だった。そう、匡革篩は電車通学をしているのだ。因みに僕の家は少し進んだ先に存在する。
「それじゃあ、また来週」
「あぁ、また来週……おい篩? 痴漢されたら「痴漢です!」って叫べよ?」
「分かってるよ? …………本当は私の家迄着いて来て欲しいけど」
僕は匡革に忠告して、静かに息を吐く。こいつ、電車内で何回か痴漢行為を受けていた。先月、匡革とバレンタインディに遊ぶ機会があったのだが、移動手段として電車を利用し、その電車で匡革は痴漢を受けた。僕がいたから何とか彼女を救う事は出来たが、その後のカラオケで「実は何回か痴漢を受けていて……」と、暴露したので、少しでも力になろうと、忠告はする事にした。お尻を、胸を触られたら触られた手を掴んで上に持ち上げて「痴漢です!」と叫ぶ事。他に触られた手を掴んで手前に引っ張るとか。出来る限り女性の力でも行えるような行為を僕は教えた。……まぁ、一緒の電車はバレンタインディ以降乗っていないから、その行為を本当に行っているかは僕には分からないが。
そして匡革は僕に手を振って、駅構内へと飲み込まれていく。僕は手を振り返し、見えなくなったのを確認して僕も帰路に着く──ここ迄が僕が『人』だった時の、最後の記憶だ。そして僕は帰宅途中、とある路地裏に向かう事で、『人間』──いや、『人の間』となるのだが……それはもう少し先だ──
- Re: 吸血症状 ( No.4 )
- 日時: 2019/08/27 02:40
- 名前: 匿名 (ID: okMbZHAS)
3
僕が家に向かっていると『急に変な風』を感じた。それは違和感のある風であった。違和感のある風とは? 僕がそんな事を思って周りを確認するが、『風が吹きそうな場所なんか前後しかなかった』、だがよくよく見れば『もう一つあった』、そこは『路地裏』だ。『路地裏からだって風の通り道はある筈』だ。まさかな? と、思い、僕はその件の路地裏へと向かう。そもそもここの路地裏を使うのは初めてだった。……何だろ? 初めてって何か嬉しく感じる。僕は息を、唾を飲み込んで、ゆっくりと、ゆっくりと前に進む。と、急に「痛い……誰か……助け……」と、か細い声が聞こえた。その声を聞いて僕は急いで走って声の許へ向かった。そして僕は『此処で引き返したら良かった』のだが、日本人の性か何か分からないが、助けようと思った。そう、『助けようと思った』のだ。此処で助けなければ、どれだけ僕は平凡に、普通に、平常に過ごせたのか? と、今でも後悔する。そして路地裏を抜け、少し広い場所へ出た。あぁ、どうしてそこで戻らなかったのだろうか? どうして引き返さなかったのだろうか? 僕はそう思いながら目の前の光景に絶句した。
「あ……あっ?」
目の前の光景、それは『巨乳の女性が両腕を捥がれ呻いている』光景だった。西洋のドレスを着た女性が周りを血だらけにしながら呻いていた。そんな光景に僕は数秒絶句した後にその光景の恐怖さを知った。
「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
僕はやっとの思いで叫んでその場から離れる、走って離れる。だが、走っているのか歩いているのかも分からない程周りの光景が何故か変わらなかった。意味が分からない。そして気がついた頃に僕は何時の間にか自宅へと帰宅していた。僕は右手で柵のドアノブを握るが、その右手は震えており、僕は「な、何なんだよ……あれ!?」と、恐怖していた。一体あれは何だったのだろうか? 分からない、でも綺麗だった、分からない、でも巨乳でエロかった、分からない、でも……でも……とても美しい人だったな。僕はそう思いながら震えた手を見、その場で大きな溜息を一回吐いた──僕はどうしてこんな目に遭わなければならないのか? どうして……どうして……? その答は、僕以外、誰も分からない──
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