複雑・ファジー小説

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ねえ、
日時: 2019/10/16 11:56
名前: しましまパンダ (ID: Oui0uBDf)

昔から、兄弟に比べて食べる量は少なかった。朝飯はほぼ毎日食べない。昼飯をちゃんと食べたら、晩飯すらいらない。そうなってしまったのは中学生の時からで、たまに倒れて点滴をするようになることもあり、高校に入るころにはさすがに両親が心配し、病院に行くことになる。
結果は神経性やせ症、つまり拒食症だ。しかし原因不明。そりゃそうだ、僕に分からないものが赤の他人である医者にわかるわけがない。そもそも原因だって、僕の問診の結果を基に作るんだから、僕が分からないって言ったらわからない。結局、精神安定剤のような薬を処方されただけだった。
そして今日、また吐いた。頑張って食べた朝飯、ひとつ上の兄に無理やり食べさせられた昼飯、両親に心配させないように詰め込んだ晩飯。吐いて、吐いて、吐く。吐くたびに気持ちは沈んだ。ごめんなさいの言葉が頭を巡った。
ああ、なんて馬鹿なんだろう。

◆◆◆

ねえ、

◆◆◆

高校に入学して、早数ヶ月。日に日に痩せていく僕をクラスメイトまでもが心配し始めてくれる。学校側にはもう拒食症だということは説明してあるので、先生はあまり心配しているようには見えない、気もした。けどきっと、心配してもらってるんだろうね。
一つ上の兄も同じ高校に通っているため、昼休みになると教室まで迎えに来て一緒に昼飯を食べている。そのあと時間が少しでも余れば、トイレに吐きに行った。時間がなければ、授業が終わった後に。こんなことをするくらいなら弁当を忘れたとでも言えばいいんだろうけど、どうせ騙されてはくれないだろう。それに、売店でパンを買う羽目になる。
ふらふらする頭で、また授業を受けた。

×××

家に帰り母親に弁当を渡す。いつものように、美味しかったと一言加えて。そうすると、心配そうな顔が少しは和らぐから。無意味だとわかっているけど、そう言わずにはいられなかった。
僕は晩飯の時間まで、ずっと布団に寝転がっている。やりたいこともないし、課題だって学校にいるうちにやってしまうし、終わらなくても晩飯後にやってしまえば問題はない。寝転がっている間は、一人だ。何を考えるわけでもなくボーっとしている時間が何よりも好きだった。たまに変なことを考えてしまうけど。
真っ暗な部屋で、ずーっと天井を見る。ああ、いったいこれはどうすれば治るんだ。

×××

いくら経っても治らず、むしろ症状は悪化するばかりだった。たまに家で倒れて、目覚めた時には病院にいたこともある。学校で倒れていないのが不思議なくらいの頻度になり、もう限界を感じた両親から病院へ入院することを勧められた。
僕は朝飯は少しずつ食べられるように頑張る、昼飯はなるべく量を少なくしてくれ、晩飯は食べられるときは食べる、と言って断った。入院なんてしていられない。僕は大丈夫。
それから数週間後、僕は昼飯の量を増やしてもらった。

×××

僕が高校二年生になるころには、拒食症の症状は治まっていた。

×××

「お母さん、今日の夜ご飯って何?」

◆◆◆

お腹空いちゃった。