複雑・ファジー小説
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- 朧月IIー天の賭けを信じてー
- 日時: 2019/12/11 16:28
- 名前: エイ (ID: Xr//JkA7)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12663
『天が賭けた道を信じて__』
戦乱の世の天下に君臨した英雄の生涯を描く
朧月の出た一夜が全てを変える
第1章 >>1-2
第2章 >>3-6
第3章
第4章
- Re: 朧月IIー天の賭けを信じてー ( No.1 )
- 日時: 2019/11/22 17:55
- 名前: エイ (ID: Xr//JkA7)
武天制度(武人を天に据える制度)を世界の中で唯一を定めた伽彌《かや》は強き者が弱者を蹂躙し命と富を奪い合う乱世である。人々が刀や銃を握り人々を殺す〈たおす〉世の中。伽彌の首都呂孤《ろこ》の様子は言葉では表すことの出来ないほどのものであった。数々の戦乱や反乱が起き将王(武天制度を定めた国の王)義信《よの》も苦悩していた。
そんな義信に苦報が入る事になる。義信に仕える官吏は『謀叛が起きた』と報達した。義信は怒りに狂い机台をひっくり返した。『鎮戦(戦乱を鎮めること)せよ。』冷静に配下の官吏に命令を下した__
約1万の軍兵を率いて伽彌最長の巨山である弥潘智山《みはんちさん》を登る叉仁《さじん》将軍。呂孤を目指し彼は歩み続けた。弥潘智山から呂孤までは近くも遠くもない。叉仁は如何にして乱を成功させようというのか__
その頃義信軍は弥潘智山の反側に位置する池曽山《ちそさん》から遠距離攻撃をする作戦で進軍していた。義信軍の先頭で馬を走らせていたのは義信が寵愛する将軍兎司《とつか》である。兎司は弓や猟銃などの飛武器に秀でており民からも慕われる伽彌一の武将である。
弥潘智山を降っていた叉仁の目にこちら側に銃口と矢先を向ける兎司の姿が映った。率いる軍兵らに''伏軍令''の旗を掲げ見せた。『伏せよ!南方に敵軍がおるぞ!南方に敵軍がおるぞ!』叉仁は喉から思いっきり声を出し率いる軍兵らに伝えた。次々と放たれる兎司軍の銃弾。叉仁は配下の将軍宇津《うつ》に尋ねた。『弓軍はまだ到着せぬのか?』しかし宇津は『まだです』と。『山を取り敢えず越え至近戦に持ち込もう。敵軍の先頭は兎司であろう。敵軍は至遠戦を得意とする兎司だ。』叉仁は走って山を降っていった。
終
- Re: 朧月IIー天の賭けを信じてー ( No.2 )
- 日時: 2019/11/22 18:13
- 名前: エイ (ID: Xr//JkA7)
叉仁の山の降った先には見た限りの数では1万。だがその奥には三万,四万と兵士が連なり戦闘態勢を整えていた。すると叉仁の周りを兎司が率いる千の兵士が包囲した。叉仁は狭間の弥潘智山で包囲され逃げ場を失い配下の軍兵らにこう伝えた。『そなたら逃げたくば逃げるがよい。この状況勝てる事はないであろう。死ぬのは私一人で十分だ!』叉仁は刀を抜いて掲げた。その後叉仁に続き宇津も刀を抜き掲げる。宇津の姿に驚く叉仁。更に叉仁の後に続く軍兵らも刀を掲げた。叉仁は軍兵らのその様子に嬉しさを隠せない。
『死ぬなら我らも一緒に死のうではないか!』
宇津のその言葉に兵士たちの士気と雄叫びが上がる。
第1章 第2部《王の決意》
弥潘智山は首都である呂孤の南方に位置した。伽彌の兵らの4分の1は弥潘智山にあった。残りの兵士は戦兵《せんへい》ではなく王宮を守る宮兵《ぐうへい》や王族や貴族を守る守兵《しゅへい》。そしてその他の兵士らを集めた六司兵《ろくしへい》。戦兵がいない首都に叉仁第二軍が進軍していた。その噂を先に耳にしていた町の民たちは荷を纏めて既に呂孤から避難していた。
その頃…弥潘智山
叉仁は残りの兵士100人以下に追い込まれ状況悪化。叉仁の腕には10本以上の矢が刺さり宇津も瀕死の状態。そして敵軍の兎司が矢先を叉仁の胸に当てて矢を放とうとした時…配下の世禍《よか》が兎司に耳打ちした。兎司はその言葉に驚き自らの弓軍らに''外軍出撃令(違う敵への出撃を命令する令称)''を下した。約1万の弓軍と騎馬兵を連れて兎司は馬に跨り走り去っていった。。約3万の兵士を連れた軍長明白《あきしろ》は兎司の退軍に戸惑いながらも約100人の叉仁軍らを''全滅令''を下して攻めようとしたその時!
叉仁らが待ち続けた弓軍1万と軍兵5000大砲軍3000騎馬兵3000がやって来た。意識が朦朧とする叉仁に光を見せたのは彼らだった。明白は驚き後退りを始めた。明白の周りには大砲の犠牲者が次々と死んでいく__それを見た軍兵らも次々と逃げていった。いつの間にか戦場に残っていたのはただ一人明白だった。弓軍指揮長兼軍長兼大砲騎馬連合軍長を兼任する楽覇《がくは》は明白に刀を向けた。『降参せよ。後に建王即位される叉仁様に。』建王即位…国王の即位 そして明白は叉仁に礼を尽くした。
その頃、呂孤宮の中に攻め入る叉仁第二軍長賀眞《かま》率いる兵士。
終了
- Re: 朧月IIー天の賭けを信じてー ( No.3 )
- 日時: 2019/11/22 17:42
- 名前: エイ (ID: Xr//JkA7)
第2章
呂孤の王宮には次々と火が放たれ宮へ参勤していた王臣(国王に仕える臣下)らは宮の財物を盗み逃亡した。そして呂孤の王宮の北門である智舎門《ちしゃもん》から逃げようとした王臣の目の前には三星の槍《みつぼしのやり》を手にした賀眞が立っていた。その王臣は目の前に立つ賀眞に膝を突き命を乞うた。『賀眞様。どうか私を見逃して下さい。賀眞様!』賀眞はその言葉にも耳を貸さず無残に刀を振り落とした。
義信の執務室。周囲は火事でありながらも義信は呑気に寝ていた。そこに義信の息子である王位継承者の義那《よな》が火を被りながら義信を助けに来た。『国王陛下!お逃げ下さい!』義信はその声で目を覚ますが火に囲まれている状況を目にした義信はまず戸惑った。その様子を見た義那は急ぎ走り義信をおぶって連れ出す。そして義那が外に出ようとしたその時義那の胸に銃弾が突き刺さった。しかしその痛みに耐えながらも兵士がいない王宮の東門である五舎門《ごしゃもん》を通過した。その後義那は義信を背中から下ろして息絶えた。『義那よ!目を覚さぬか!』義信のその泣声は火に包まれた前王宮を響く__
次日の早朝に先頭にいる叉仁が10万の兵士を連れて上京を果たした。叉仁の後方には味方の宇津、明白、楽覇、賀眞が馬に跨り上京した。
新宮の羅苑宮《らえんぐう》で叉仁の即位礼が行われる。『新国王陛下、千歳!千歳!一万歳!』賀眞が千歳一礼《せんさいいちれい》を行う。千歳一礼…千歳を生きて長寿せよと礼する事。
ー伽彌 羅苑宮ー
『王命を下す。これより三年は税金を免除せよ。そして''貴豪軍役免除法令(貴族や豪族が金品を国に納めて軍役を免除する法令)''をこれ以上一切認めない。成人した男は必ず軍役に行かねばならぬ。更に軍事科挙を来月末に行う事とする!この科挙は尊卑で区別せず能力で宮へ登用せよ!』
叉仁は王布を見に纏いその配下の重臣らに通達した。その命令に重臣らは頭を下げて言った。
『国王陛下の命令に従います!』と。
ー妃嬪宮《きひんぐう》ー
妃嬪宮から赤ちゃんの泣き声が聞こえた。赤ちゃんの背中には華麗な桜模様と朧月が刻まれた。叉仁の妃はその息子にこう名付けた''桜月《おうげつ》''
叉仁の王子である桜月は後に波乱万丈な人生を歩む事となる。
25年後…《叉仁王存位二十九年》 ー伽彌 黄鷹宮《きだかぐう》ー
筆を手にして華麗な朧月を描く男が一人いた。その男に耳打ちする宦官の衣を見に纏った男。『王子様。国王陛下が播遷をなさるそうです。』男は筆を起き王子の官服を纏った。
馬に跨り王子・桜月は砂漠を走り抜ける。桜月は刃先が鋭い槍を手にして敵軍のいる大山《テサン》に向けた。
『敵は!大山なり!』
終
次回予告
第2章 第2部《大山の戦争》
叉仁らが二度目の播遷を行う中、桜月は一つの槍を頼りに敵軍のいる大山に出陣し敵を負かし大山から退軍しようとした時…
- Re: 朧月IIー天の賭けを信じてー ( No.6 )
- 日時: 2019/12/11 16:24
- 名前: エイ (ID: Xr//JkA7)
第2章.第2部《大山の戦争》
王子である桜月《おうげつ》が伽彌に攻め入って来た四万の敵軍を千にも劣る僅かな軍兵で討たんとしている。
その意気は家臣誰一人も止められるものではない。桜月は宍間槍《ししまけん》を自らの手で握り己の部下である宇我《うが》と共に敵軍に対して言い放った。
『敵軍を全滅させよ!』
その言葉に千の兵士は雄叫びを上げた。その瞬間過酷な戦場と化した。
『皆の者よ聞け!この大山で!勝利して国王陛下の播遷を止めねばならぬ!』
桜月は宍間槍を握って千の兵士らと大山を襲撃した。宇我は五百の大砲部隊に発砲令を下す__
宇我率いる大砲部隊によって崩壊する山壁。その頃山頂で敵軍の頭と桜月は槍を交わらせていた。崩壊する山壁や次々と山間で死んでいく兵士たちの血の匂いを嗅いで狂気と化したのだろうか。興奮の絶頂へ辿り着いた敵軍の頭である島治《とうち》。島治は自らの限界を超えて桜月と紅清《べにきよ》の二人を相手に刀を振り回した。桜月は鋭い槍である宍間槍を持ったが島治のその狂気に中々苦戦した。
そうして島治が山頂で戦っている際、桜月軍は負傷兵を出さずして山頂へ千の兵士と五百の大砲部隊が登って参った。つまり島治を除いた敵軍全員が死んだと言う意味だ。負傷兵を出さずして敵軍を全滅させたのだ。
『島治。降参しなさい。そなた以外の軍兵は全滅したのだ。終わりだ。』
島治はその事実を知ると膝を落とした。
『何だと…終わりなのか…全て終わりなのか…終わってしまったのか…』
島治は現実逃避して山頂から逃げようとしたその時、足を滑らせて山頂から落ちたのだ。四万の敵軍は千の兵士を無傷で帰した。
1ヶ月後…《叉仁存位二九年四ヶ月》
百を超える上奏【大臣・議院・官庁等が君主に意見を申し述べること】が宦官によって王宮殿に慌て運ばれて来る。
叉仁はその上奏に目を通し怒りを抑えている様子でその宦官に強い口調で言った。
『桜月を呼べ。急ぐのだ!』
桜月は叉仁に呼ばれ王宮殿の中へ…その瞬間、叉仁はその上奏を桜月に投げつけた。桜月がその上奏に目を入れた瞬間桜月は表情を変えて跪いた。
『国王陛下。このような上奏決して私は知りませぬ!』
その上奏には〈国王は王子に譲位せよ〉と記されている。譲位とは…王位を譲る事
『王解伏罪〈おうかいふざい〉をせよ。』
王解伏罪…国王が許すまで跪いて許しを乞えと言う意味
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『国王陛下!何卒お許し下さいませ。私に譲位など!陰謀でございます!どうか!お許し下さいませ!』
桜月は雨中跪き薄着で震え叉仁の許しを乞うた。
その頃村中では良からぬ噂が響いていた。
『前王を殺した上に息子まで殺す気か。』『自分は命だけでも助かろうとして播遷しようとしたくせに息子は必死に千の兵士で戦勝したと言うのに…』
この噂は既に王宮殿にも伝わり宦官や女官までもが噂していた。いずれ国王は''暴君''として称され仕方なく叉仁も桜月を許す事となる。
覆面をした謎の男が矢を強く握り締めて的の真中に放ちこう言い放った。
『この矢は上物だ。幾らで売ってくれよう。』
男の質問に矢の売人は
『一本500銭(200円)だ。何本買うんだ?』
『100本4万9千銭(約2万円)で売ってくれ』
男は覆面を外すが見たところただの短い白髭を生やした老いた貧乏人の容姿である。しかしこの男は前王である義信である。
実は生きていたのだ。義信。叉仁に『殺された』前王は。
終
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