複雑・ファジー小説

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ただ、そのために生きて
日時: 2019/11/17 15:48
名前: えだまめ (ID: f2y8EREE)

「過去があるから今がある」

過去を乗り越えて未来へ行くのか、現状のまま未来を生きるのか。
強い願いを旨に青年達の生き様や葛藤を描いていくものとなっています

【注意】
※少しグロテスク表現あります
※普通よりちょっと感覚ズレている人物が多いです
※誤字脱字があったら申し訳ありません
※荒らしはやめてください
※章によって視点が変わります

【登場人物】>>1

【目次】
第一章(>>2,>>3)

Re: ただ、そのために生きて ( No.1 )
日時: 2019/11/14 12:20
名前: えだまめ (ID: 6fVwNjiI)


【登場人物】
・コウヤ
・クリオネ
・キタモロ
・シチミ
・ダイス

・ゼンガク
・シングリード

【コウヤ】
年齢:29歳
容姿:ショボショボとした開かない目が特徴の小柄な体格
関係性:宥め役、分析担当
願望:母の恨みでゼンガクへ復讐
能力:電気
【クリオネ】
年齢:22歳
容姿:スラリとした体型、美貌を纏った中性的な顔
関係性:弟担当、囮担当
願望:ゼンガクを自らの手で殺害
能力:治癒
【キタモロ】
年齢:37歳
容姿:長身で細身、肩幅の広い男前な顔
関係性:保護者兼調理担当
願望:失った記憶を取り戻したい
能力:創造
【シチミ】
年齢:22歳
容姿:華奢で細目、笑顔が場を和ませる柔らかいもの
関係性:クリオネの親友で世話係、スパイ担当
願望:偽りの愛で溺れた人間の殺害
能力:氷
【ダイス】
年齢:20歳
容姿:クリクリとした目とアヒル口の童顔、似つかわしくない肉体美
関係性:クリオネの相棒になりたいとついてきた
願望:自由
能力:物体凝固


【ゼンガク】
年齢:54歳
容姿:無精髭、丸メガネの長身痩せ身体型
関係性:コウヤの父親、クリオネの育て親
願望:クリオネを自分のものに
能力:火
【シングリード】
年齢:57歳
容姿:男らしい凛々しい眉毛、恰幅のよい姿
関係性:キタモロの父親
願望:キタモロを正しい世界へ
能力:視線を合わせたら石化させる

Re: ただ、そのために生きて ( No.2 )
日時: 2019/11/15 01:42
名前: えだまめ (ID: 6fVwNjiI)


「それで、執事が主をわざわざ呼び出した要件はなにかな?」
「坊っちゃま、ここからお逃げください」

本来ならば学習せねばいけない時間帯に呼び出されて、足を運んだ先で執事は小声でそう言うと城の地下へ通ずる扉を開ける。青年には執事の言葉の意味が理解出来ると眉間にシワを作る。

「なんのつもりだ」
「貴方様は失った記憶を取り戻すべきです、日に日に痩せていく貴方様を見るのは、とても辛い」
「お前に何がわかる……お前の方が俺より過去を忘れていそうじゃないか、随分と年老いたお前を残して俺だけここから追い出そうってのか?」
「追い出すのではございません、帰りを待っております」

幼い頃から専属でついていた執事だ。青年の本心もお見通しなのだろう。青年は扉を潜る。

「外へ出たら自由に生きて良いのですよ、記憶を取り戻したければ私のプレゼントを受け取り下さい」
「プレゼントとは、計画的だな?」

はっはっは、と軽快に笑う。
計画的に行動しなければこんなことは出来ないことは知っているし、貴族の血が流れる子供を危険な場所へ放とうとしている者を家の者が知ると、逃がした者がどうなるのかも知っている。
これが最期になるのは嫌だから和ませるようにからかった。
執事は薄く笑う。

「お帰りになられた際は、私めもプレゼント、期待しておりますゆえ、どうかお気をつけて」
「……まったく、こんな薄汚い所を歩かせる事を後悔させてやるからな」

丁寧に頭を下げてお辞儀をした執事に憎まれ口を叩きながら背を向けて暗がりを壁に手をつけて進む。背中から執事の声は聞こえず、頭もきっと下げたままなのもわかって、扉が閉まった音を聞くと我慢していた涙が目から零れ落ちた。
目頭も熱くなって足を止める。

今、引き返すことだってできる。だがそんな事をしたら永遠に暗い海を泳ぐ生活を繰り返すだけだ、それに執事の彼の苦労はどうなる。
思い出せない過去の記憶にモヤモヤする日々から抜け出したいと思ったのは自分なのだ。

待ち受ける未来に不安が募るが、行動しなければ何も始まらない。
また、足を前へ踏み込んだ。

Re: ただ、そのために生きて ( No.3 )
日時: 2019/11/15 09:40
名前: えだまめ (ID: 6fVwNjiI)


実を言うとこの地下通路は使ったことがない。
道もわからずひたすら壁伝いに歩くのみで、執事を信じていない訳では無いが暗闇というのは普段よりも一層恐怖が煽られる。地上とは違い、ひんやりとした空気に訪れる静寂、歩みを進める靴の擦れる音とどこからか水の滴るピチャンッという音が響く。
ひと一人分しか通れないような狭い通路は前と後ろから挟み撃ちされてしまえば逃げ道は無い、こんな恐怖と不安が駆られる場所を好き好んで入るものを見てみたいと投げやりに思う。

創造した物が生み出せる能力、聞くだけでは便利なものかもしれないが欠点はあるもので、例えば暗闇を照らすライトを出そうと思っても姿形そっくりなものは生み出せるが電池にエネルギーが溜まっていない為、電池切れで点かないし、火をだそうとしても火の能力など持っていない。
こういう時に最新のものばかりが身近に揃っていて自分の能力を磨く事もせずに育ったことを後悔する、といっても、本来なら出来ることなのかもしれない。
自分には過去の記憶が思い出せない、最後の記憶は五歳の頃。母が亡くなり、父が寂しい気持ちを隠しつつ「二人で強く生きような」と肩を抱いて自分の誕生日を祝ってくれた時のこと。次に目が覚めた時には母にそっくりな女性が父の側にいて、側近の執事は老けていて自分は成長した姿だった。二十年分の記憶がごっそり無くなっていて、昔聞いたことのあるおとぎ話のように眠り続けていたのかとすら思った。

だが、何かを忘れている、そういった感覚なのだ。
身の回りのものは生活する上で便利なほど馴染むし、実際に自分が使っていたようなこともなんとなく解る。自分が前の日に何をしていて、どんな経歴でどこを歩き、どのような服を好んで着るのかも憶えているのに、物凄く大切な何かを忘れている気がしていた。

歯がゆい気持ちのまま、食事は喉を通らなくなり頭を抱えて部屋に籠ることも増えていた、そんな時に執事から呼び出されたのだった。

それを思い出すと恐怖に怯えていたとて、踏みとどまることは出来なかった。

暫く歩いて薄い暗闇にも慣れた頃、目の前に壁が現れたーー突き当たりだ。

思わず駆け寄り壁一面に何か仕掛けがないか触りながら確かめる。
石と壁の隙間に挟まっていたものを引き出す、そこから外の光が見えた。引き出したものは敷物が丸められたように綺麗に畳まれた布だった。紙では水に濡れるとぐしゃぐしゃになってしまうので布にしたのだろう。表面に油性で書かれた文字は執事のものだった。

場所と軽い指示が書かれていて、それと余分な程ある硬貨が袋に包まれて壁の隅に置かれていた、それを持っていけとのことだろう。
縦長のショルダーバッグに銭を入れて斜め掛けしては厚手の手袋を生み出す。それに手を通して先程見えた隙間に指を入れ、意思を取り除く。ある程度開いたら軽いけれど大きめのハンマーを振り翳して数回、崩れて開いた出口から這い出る。

新しい服に着替えて目立たないように全身が隠れる黒いマントをつけてフードを被った、振り返ると案外遠くに来ていたようで城は小さく見えた。

執事の為にも自分は記憶を取り戻さなければならない、彼からの指示に従い街の方へ向かった。


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