複雑・ファジー小説

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ガンマン共の異世界の旅
日時: 2020/10/03 23:10
名前: 山県三平 (ID: KGoXVX/l)

こんにちは、山県三平です。

この作品が初投稿なのですが、皆さんに一つ知って貰いたい事が一つあります。

プロフィールにもあるようにタグに『不定期』とありますが、皆さんが思われている不定期投稿の更に上をいくであろう不定期投稿が生ずる場合があります。そんな時はどうか、暖かい目で見守って頂けると有り難いです。

この物語は西部開拓時代、とあるギャング一味がキャンプ中に謎の光に包まれ、気づいた時には異世界に転移していたと言う話から物語が始まります。主人公、リチャード・ジョーンズを始め、ギャングのリーダー、ヴァリ・ダ・フェリナンらが見た事も無い新たな舞台でどう立ち回り、どう生きていくのかが、この物語の内容です。徐々に明らかになる異世界、そしてギャングの熱い絆にも注目してこの物語を閲覧していただけると楽しめると思います。

それではお楽しみ下さい。

Re: ガンマン共の異世界人生 ( No.1 )
日時: 2020/10/03 23:18
名前: 山県三平 (ID: KGoXVX/l)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=12774

17世期後半、アメリカ大陸では独立戦争、南北戦争といった事が相次ぎ、大半の地域が無法地帯で、そこでは金と自由を求めた無法者やガンマンが好き放題暴れていた。

だが、徐々に国が土地の買収や割譲を行い、さらには法の制定や街、地区の整備を開始し、無法者とガンマン達の肩身は狭くなる一方だった。

そんな時代にアメリカ西部には、とあるギャングがあった。
その名は『ヴァリギャング』。

彼らもまた法執行官、ピンカートン探偵社と言った奴らに追われ、時代から排除されようとしていた。
日々いつ終わるかも分からない、どこまで逃げるかも分からない逃亡生活を続け、金を稼ぎ、いつの日かその金で土地を買い、悠々自適に暮らす為に彼らは銃を握り続けた。

リーダーであるヴァリ・ダ・フェリナンが率いる彼らと他のギャングの違う点は、全員が家族同然で私欲の為に金を稼ぐのではなく、食わせる人、守るべき人がいるから金を稼ぐのだ。
だが、いくら立派な信念だろうと法を犯す者には変わりはない。彼らも時代と言う名の波に飲み込まれ、徐々に行き場がなくなり追い込まれつつあった。

だがある日、ヴァリギャング一味は荒野で光ったとされる謎の光ともに酷然と姿を眩ましたのだった。

Re: ガンマン共の異世界の旅 ( No.2 )
日時: 2020/10/12 23:39
名前: 山県三平 (ID: KGoXVX/l)

プロローグ 『未知の世界へ』

「…あぁ…なんなんだ…今の光は…まだ目が…」

 突然、彼の者の目には今まで感じた事のない程の刺激が集中しており、前を見る事も出来ずにいた。
目が使えない事を察した彼の者は別の手段として声を出す事にした。

「誰かいるか!!ヴァリ!サイラス!誰か!!」

先程まで共にいた仲間の名前を腹から声を出して呼ぶ。すると、遠くは無い場所で声が返って来る。

「その声はリチャードか!お前こそ大丈夫か!」

声的に少し大人美のある声が彼の者の耳に届く。応答があった事に喜びを持ちつつも彼の者は声を荒げる。

「その声はヴァリか!?目の前が真っ白で何も見えない!」

「俺もだ!さっきの光はなんだ!」

どうやら、彼の者の名はリチャードで、もう一つの声の主がヴァリと言うらしい。置かれている状況は一緒なようだ。

「さぁな!俺にもわからない!…よし、だんだん見えてきたぞ!」

どうやら、名はヴァリと言う者の目が視力を取り戻しつつあるらしい。

「俺はもう少しだ!ヴァリ!みんなは無事なのか!?」

だが、ヴァリの応答はない。リチャードはもう一度先程よりも大きな声で呼んで見る。

「ヴァリ!みんなは無事なのか!?」

「リ、リチャード…」

声からしてヴァリの様子がおかしい。先程までの通る声がまるで小さな子にでもなったかのようだ。

「ヴァリ!大丈夫か!?」

「なぁ、リチャード…ここは…?」

「待てヴァリ!俺も見えてきた!!」

リチャードの目は真っ白な世界から徐々に色取りのある世界が姿を現し始めた。だが、色取りを取り戻した先にあったのは…

「…なんだ…一体…どこなんだ…?」

そこは見に覚えのない森の中であった。

Re: ガンマン共の異世界の旅 ( No.3 )
日時: 2020/10/18 00:48
名前: 山県三平 (ID: WAtHNOac)

第一章 『バレン王国』


「なんだ…一体…どこなんだ…」

 眩い光で視界を遮られていた彼らが見た光景は、数分前の光景とは180度変わっていた。
数キロも果てが続く荒野が一変して草木が生茂る深い森に変貌していた。
久しく感じる事の無かった土や森、風の匂いは、戸惑う心を落ち着かせるカンフル剤のように目覚めた二人を冷静にさせた。

「ここは森か…?俺達は荒野にいた筈だ。なのに何故…」

一瞬にして景色が一変してしまった事に未だ驚きを隠せないリチャードに、ボスであるヴァリが口を開く。

「…俺にもわからない。だが、経緯はどうあれ、今は俺の目に狂いが無ければ森の中にいる事は間違いない。それよりも今はここがどこなのかよりも、俺達以外のみんなが無事か確認しよう。」

ヴァリは冷静に状況を判断し次の行動に出る。腰のホルスターにかけていた愛銃、スミス&ウェッソンを取り出して、銃口を上に向けて二発、空に発砲した。


ダーン!ダーン!


「サイラス!!みんな!!近くにいるのか!!返事をしてくれ!!サイラス!!」

ヴァリの声と二回の銃声が辺りに響いた後、何十羽の小鳥の羽の音と鳴き声が届く。
その数十秒後、左側から方向で二回の銃声がリチャード達の耳に届く。


パァーン!パァーン!


この少し変わった銃声に聞き覚えのあるヴァリはすぐに誰の銃なのか分かった。

「よし!この音はサイラスの銃だ!近くにいるようだぞ!こっちから聞こえた!来い、リチャード!」

ヴァリは愛銃をホルスターにしまうと銃声が鳴った方向に歩きながら、リチャードに手招きをする。
リチャードもヴァリに続こうと足を踏み出す。

「リチャード!早く!」


…ガサゴソガサソゴ


だが突如、ヴァリの前方に黒い影が現れた。
明らかに人影ではない、遥かに大きい。
どうやらヴァリは気付いてないらしい。

「ヴァリ!前だ!」

「前…?」

リチャードの声に反応し、目線をリチャードから前方へと向けるとヴァリはその光景に絶句した。


シャァァァアアア!!


目の前には蛇の形をした巨大な生物がヴァリに立ち塞がっていた。

「なんだこいつは…」

体長から、九十、いや百メートルは超える巨大な蛇だ。食われれば、噛まれる事なく一瞬にして丸呑みだろう。恐らく、先程の銃声に反応して来たのだろう。これほどまで巨大な蛇はヴァリもリチャードも目にした事は無い。その為、このような危険を予想できるはずがなかった。

蛇の目線はヴァリ一点で舌舐めずりをしながら、ジワジワとヴァリに詰め寄る。
威嚇行動をする目からは生まれながらの捕食者の圧を感じる。
ヴァリは先程しまった銃に再び手を掛けながら蛇から逃げるようにゆっくりと下がる。だが、その距離は蛇がヴァリを仕留めれる射程圏内であった。
ヴァリが大きな行動をすればすぐさま襲ってくる事はヴァリにも分かっていた。
だがどの道、逃げなければヴァリは食われる。
絶対絶命の中、ヴァリはある決断した。
蛇を刺激しないようにゆっくりと手と頭を後ろに回して、リチャードに向ける。
人差し指、中指、薬指の三つをリチャードに見せ、リチャードに一度頷く。
その行動の意味を理解したリチャードはこちらもヴァリに頷きのサインをする。
それを確認したヴァリは、目線を巨大蛇に向ける。
リチャードは未だ後ろに回されたヴァリの指に注目していた。
薬指、中指とヴァリの指が降ろされていくのを確認し、そしてついに人差し指が降ろされると、

「リチャード!今だ!!」

ヴァリはその瞬間、地面にうつ伏せの状態になった。
その行動を見逃さなかった蛇は大きな口を開けてヴァリに飛びつく。
そして…


ダンダンダンダンダンダン!!!


連続六回の銃声が先程よりもさらに遠くの小鳥達を驚かせる。
リチャードが得意とする俊速の早撃ちは見事、六発とも巨大蛇に命中していた。
銃弾は頭蓋骨、口を貫通した。銃弾の一つは巨大蛇の脳に命中していたため、蛇はもがく事なくその場で息絶えたのであった。

「ヴァリ、大丈夫か?」

銃をホルスターにしまい、うつ伏せで倒れたヴァリの元へ駆け寄り、手を差し出す。

「あぁ…危なかったな。」

リチャードから差し出された手を取り、寝た体を起こす。

「まさか、こんなデカイやろうがいるとはな。なんだこいつは…」

「あぁ、流石にこんなデカブツは俺も初めて見た。だが、考えるのは後だ。まずはサイラス達と合流しよう。」

あぁ、とリチャードとヴァリは蛇の死骸を超えて銃声がした方向に向う。
少し走った時に肩に重みを感じたリチャードは足を止めた。

「なぁ、リチャード。」

重みの正体はヴァリの片手だった。リチャードが向き直すとヴァリは呼吸してリチャードに語りかけた。

「ずっと思っているが。お前がいて良かった。俺にはお前が必要だ。今までもこれからもお前を息子の様に思っている。これだけは忘れないでくれ。」

これはヴァリの口癖の様なものだ。知らない人からこの様に言われても響く事はないが、十年以上も苦楽を共にした中だからこそ、ヴァリと言う人間を知っていてこの言葉が本心である事が分かる。今までヴァリを信じ歩んできたリチャードの答えは一つだった。

「あぁ、勿論だ。」

そして、リチャードとヴァリは生茂る森の中を草木を掻き分け、駆け抜けていった。

Re: ガンマン共の異世界の旅 ( No.4 )
日時: 2020/12/06 09:46
名前: 山県三平 (ID: TKFXVRMf)


ヴァリとリチャードは銃声がした方向に向かって駆け抜けた。
木や枝、湿った泥に足を阻まれ邪魔されながらも、歩みは止めない。
早く会って皆の無事を確認したい。
俺達に残された最後の財宝を守らなければ。
そう思いながら二人はただ足を動かし続けた。
一キロ程歩くと森の奥にひらけた場所が見えるのと、空から黒煙があがるのが見えた。
二人はひらけた場所につくと、そこに広がっていた光景に驚愕した。

まるで踊るかのように揺れ動く美しい木々、透き通る水が流れる川、吹きける薫風、数えるだけ無駄と思える程の無数の小鳥と小動物。
まさに自然の楽園と呼べる場所だ。
そして、そんな自然溢れる場所のちょうど中心点に懐かしの我が家のような光景が目に入った。
そこには我らがヴァリギャングの立派なキャンプがあった。
いくつもの荷車や大きなテント、何種類もの馬も確認出来る。また数人の人影と焚き火から上がる黒煙も見えた。
我が家を見たヴァリは安心してキャンプに向かって声をあげた。

「おーい!ここだ!」

ヴァリが手を大きく振り、声をあげた数秒後、二人に気付いたのかキャンプから白髪で少々皺のある男が向かって来た。

「ヴァリ!リチャード!やっぱりお前達だったか!心配したぞ。」

男は二人の姿を確認すると走りながら、声をかけ手を横に大きく広げて向かってきた。

「サイラスか!さっきはよくやった!おかげで見つけられたぞ!」

ヴァリもそれに応じて手を広げて抱擁を交わす。
この男の名はサイラス。先程のヴァリの銃声を聞いて居場所を伝える為に打ち返した銃声の主はこの男だった。
ヴァリとの抱擁を終えたサイラスはリチャードとも抱擁を交わした。

「どうって事ないさ。何年一緒だと思ってる?お前の銃の音なんか頭に焼き付くほど何万回と聞いてきたんだ。それにお前の行動も察しがつく。何処とも分からない場所で銃を撃つ奴なんかはよほどの度胸がある奴だ。俺が知ってる奴でそんな事が出来るのはお前とリチャードしか知らんよ。」

ヴァリとサイラスはギャングができる前からの中で、リチャードと出会う前から行動を共にしている。言葉を交わさなくともお互いの考えを理解している事こそ、ヴァリとサイラスの絆を示す証拠である。

「流石だな。それで他の皆は無事か?」

目線をサイラスから後方のキャンプへと向ける。

「あぁ、全員無事だ。あの光が現れた後にいなかったのはお前達だけだ。馬も食料も武器も紛失したものも特にない。風景が枯れた荒野から自然豊かな草原に変わった事以外はな。…なぁ、ヴァリはこの現象どう思う?」

ギャングの頭脳とも呼ばれるサイラスだが、ここまでの異常事態となると、リーダーであるヴァリに判断を仰ぐのが今できる最善の方法だった。

「…さぁな、俺にも分からない。さっきから意味不明な事が起き過ぎて考えがまとまって無い。だが、今はお前達が無事な事を知れただけで十分だ。ここからどうするかはみんなの前で言いたい。サイラス、皆を集めてくれ。」

「分かった。」


___________数分後。

キャンプの中心にある焚き火にヴァリギャング一味が勢揃いするのにそんなに時間は掛からなかった。ヴァリやリチャード、サイラスのような白人も入れば、黒人にメキシコ人、インディアンに女性など、人種は問わず総勢二十三名が所属している。
ヴァリ曰く、ヴァリギャングと言う名だが、俺達はギャングでも殺人者集団でもない。
仲間が唯一の財宝なだけのファミリーだ、と。


焚き火に集まった二十三名ものヴァリギャングは静かにヴァリが口を開くのを待っていた。誰もが内心、不安に包まれているなか、ヴァリが口を開けたのは風が強くなり少し火が勇ましくなった時だった。

「…みんな、よく集まってくれた。知っての通り、俺達は未だかつて経験した事のない事態に直面している。あの荒野から見た事もない自然の奥地へと飛ばされて混乱していると思う。しかもここには見た事のない生物がいたり、初めて見る植物が多く生えている。
明らかにアメリカではない場所に俺達はいる。混乱するのは無理もない事だ。
だが、これを不運と呼ぶか、幸運と呼ぶかは受け取り方次第だと俺は思う。
見てみろ、果てしかなかった荒野が天国のような場所になったと考えれば、これはある意味、幸運と言えるだろう。例えこれが不運だったとしても心配は要らない。
たかが、場所が変わったぐらいだろ。俺達はこれよりももっと辛い状況を乗り越えて来たんだ。
俺達は何度も殴られようと必ず立ち上がり戦ってきた。
だから、心配するな。
お前達には俺がついてる。
そして俺にはお前達がついてる。
全員で力を合わせれば、この状況だって必ず良い方向に導ける筈だ。
だから今こそ。
今こそ、力を合わせよう。
俺を信じろ、俺達はヴァリギャングだ。」

ヴァリの演説に耳を傾けていた全員が個々にうなづき、ヴァリに対して歓声が所々で上がった。ヴァリ自身も安心した所で今後の行動を話し始めた。

「まずはここが一体何処なのかを知る必要がある。
俺とリチャード、サイラス、カール、マック、ダニエルの六人で馬で偵察に出る。
その間、キャンプの警備はビリーとデイビット主導の元、厳重にしろ。
人が来たらこの場所から引き離すか、敵対したら迷わず撃ち、女子供は絶対に守れ。
まだここがバレる訳には行かない。
そして、ジェイソンとモットは俺とリチャードがさっき遭遇した巨大蛇を回収して解体してくれ。食料になるかも知れないし、もしかしたら何か掴める事があるかも知れない。
そして、ワイルドは武器庫の武器で今使えそうなのを偵察班に回せ。ジェニーと他の者は自分の備品や食料、医療品を確認して、ここで十分暮らせれるように家事に勤めてくれ。恐らく、キャンプ自体は何も問題が起こらなければ数ヶ月はここにとどまる。こんなにも川や緑に囲まれて守りやすい場所は中々無いだろうからな。だが、食料に関してはここの近くに街があるのかは分からないため、狩りでしか潤えない。お互いに量を決めて食べてくれ。コーンとベルアはお荷物にはならないでくれよ。」

ヴァリが指を指す二人に視線が向けられ、少しの時間だけ全員に笑顔が戻った。

「なんじゃ、わしらだってやればでき…いてて…」

指を指された一人のコーンが胸を張るために立ち上がろうとすると持病の腰痛で前屈みになって地面に伏した。それを見たヴァリがコーンに手を出して立ち上がるのを手伝うと話を続けた。

「今は全員が各々の仕事を全うしてくれ。偵察班は今日中に出発したい。長旅になるだろうから装備と馬の調整をしておいてくれ。言いたいことは以上だ。何か異論はあるか?」

ヴァリの最後の言葉に一人だけ手を挙げた。

「あー、一ついいかヴァリ?」

手をあげたのは、ヴァリと同じガンマンである、デイビットだ。喧嘩っぱやくギャングの中でも野生的な側面から問題児とされているが、銃の腕前はリチャードに次ぐ程でヴァリに信頼されている。

「俺はあんたの指示に従いたい。だが、偵察班にいけすかなリチャードの野郎がいて俺がいないのが、どうも気に食わねえ。そりゃリチャードは戦いの腕はあるが、いざと言うときには頭が働いてねぇ。」

「お前はどっちも働いてないだろ。」

デイビットの問いに横からリチャードが突っ込む。デイビットはヴァリから自分以上に信頼され、日ごろから自分の意見とそぐわない事を言うリチャードを昔からライバル視している為、今回の待遇の差に嫌気が差していた。

「落ち着けリチャード。デイビット、お前をここに残すのは、もしピンカートンらがここを嗅ぎ付け、迫るようなことがあってもお前の腕前があれば、女子供が逃れる時間を稼いだ上で尚且つ、全員生還する事が可能だと思うからだ。お前がリチャードを嫌う理由も分かっているつもりだ。だが、今は言い争っている場合じゃないんだ。みんなで協力しなきゃならない。だから、今は俺を信じて協力してくれ。頼む。」

ヴァリの言葉にデイビットは口をモゴモゴいわせ、言いたいことを飲み込みこう言った。

「はぁ…了解だ、ボス。」

ヴァリはありがとう、と言い目線をデイビットから全体に向けた。

「さぁ、みんな。それぞれの持ち場、役割に戻ってくれ。リチャード、サイラス、来い。話がある。」

ヴァリがそういうとヴァリギャング達はリチャードとサイラス以外はちりじりになって自らの持ち場に戻った。三人は焚き火から離れて近くの木にもたれかかった。
最初に口を開いたのはヴァリだ。

「まず、お前達の銃を見てくれ。何か違和感は無いか。」

突然何を言い出すかと思った二人だが、言われた通り二人はホルスターから銃を取り出して見つめてみる。
リチャードの銃は1873年製のM1873リボルバー(ピースメーカー)で、
サイラスは1851年製のM1851だ。
ちなみにヴァリの銃は1843年製のM1848(ドラグーン・モデル)だ。
二人は銃を確認していると、確かに違和感を感じた。それを先に察したのはリチャードだった。

「これは…弾が入ったままだと…?」

リチャードは薬室に入っている弾を全て取り出して確認する。
先程、リチャードは全弾、サイラスは一発の銃弾を放ち、その後も彼らは弾のリロードは行なっていない。だが、二人の銃の薬室には一発も欠ける事なく弾が全て装填されている状態だったのだ。

「あぁ、そうだ。俺もさっき気づいたんだが、銃の弾が減らないなんてのは明らかに異常だ。リチャードと遭遇した巨大蛇もそうだったが、俺達の常識を超えた事が起きている。そこから俺が考えついた答えは一つしかない…思いたくはないが…それは…」

ヴァリが続きを言おうとした時、ヴァリの考えを理解したサイラスが言ったのは

「…俺達はいた世界とは違う世界に来た、か…。」

Re: ガンマン共の異世界の旅 ( No.5 )
日時: 2021/02/17 00:03
名前: 山形三平 (ID: WgY/GR3l)


その後、準備を整えた偵察隊が各々の馬に跨り、ギャングに別れを告げて森を駆け始めるのにそれほど時間はかからなかった。偵察隊にはリチャードをはじめとする南北戦争にも参加した軍人や祖国を追われたメキシコ人などヴァリが信頼する指折りの戦士が集められていた。

森を駆け抜け始めてから、数時間経った頃。かなり距離を走っていたが、偵察隊は未だ森を抜けられずにいてメンバーの大半は疲れの表情を見せていた。
先程から果てしなく続く木々の間に続く一本道をひたすた走っていた。

「ヴァリ、本当に出れるのか?さっきから同じ光景をずっと見てる気がするぞ。」

黒肌に紅色の立髪が目立つ愛馬のヴェロニカに跨り、並走しているヴァリに対して、リチャードは問いかけた。

「文句を言うな。俺だって早く抜けたいんだ。今はとにかく駆けるしかない。馬が持つまでな。」

自らの愛馬に目をやりながら、ヴァリは答えた。
ヴァリの愛馬は混じり気のない純白の白馬で名前はフェリカだ。

「それにここで止まるのは危険すぎる。さっきも見たことのない動物がうようよいた。あの蛇以上におっかない動物もいるかも知れん。ここで野宿するのはリスクが高い。せめてするなら辺りを見渡せる平野に構えたい。それまでは我慢してくれ。さぁ!今日中にこの森を抜けるぞ!!」

おう!、とヴァリの説明に納得し返事をした一同はただ駆けるのであった。

※※※※※※

そしてまた数時間後。
西の空は太陽が沈みつつあり光はオレンジ色に染まっていた。
夜が一刻と近く中、木々の間から草木が揺れる広原が見えた。
その風景にほっとしたヴァリは笑顔を浮かべた。

「みんな!森を抜けるぞ!!」

馬の蹄が鳴る音が徐々に早くなり、土を踏む音から草むらを踏みしめる音に変わる。
そこに広がっていたのは、一面草むらが広がる大草原だ。静まる夕日のお陰でより幻想的な風景になっている。

「みんなよくやった!今日はここで野宿としよう。テントを広げてくれ!」

彼らが馬から降り各々のテントを広げ終えると夕日は沈み、空には光輝く宝石が数えきれない程、夜の世界を照らしていた。


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