複雑・ファジー小説
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- いつかあの日の夕暮れに。
- 日時: 2020/05/18 16:33
- 名前: 咲斗さん (ID: jmxtpCAp)
あの日の夕暮れに、手が届いたなら君は今も笑ってただろうか。
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昔のことを後悔するお話です。
- Re: いつかあの日の夕暮れに。 ( No.1 )
- 日時: 2020/05/18 16:45
- 名前: 咲斗さん (ID: jmxtpCAp)
あの日の夕暮れに走っていく君の手をつかめたなら、
君は今も私の隣で笑っていたかもしれない。
ここ数日そう思うことが増えていた。
照れくさそうに笑う制服の男女や、楽しそうに小突きあいながら歩く高校生。
彼らと同じ風に生きていくことは、私にも君にもできないんだろう。
君が笑いながら私の頬を触る日々を、何度思い返したのだろう。
君が私の名前を愛らしく呼ぶその声を、何度思い返したのだろう。
もうそんな日々は戻ってこないことはわかっているけれど、どうしても願ってしまう。
君が隣にいてくれたらいいのに。
あの日、私が手をつかめれば。あの日、君が勇気を出さなければ。
私は君の隣で笑っていられたかもしれない。
「おめでとう、加奈。」
そうつぶやいて涙を流した。
周りの拍手と歓声でその声は彼女には届かない。
真っ白なドレスとベールをまとった彼女は、こちらを見て恥ずかしそうに笑った。
もしあの日の夕暮れに手が届いていたのなら、彼女はその姿で私の隣に立っていたかもしれない。
私の手がいつかあの日の夕暮れに届いたなら、幸せをつかめるのだろうか。
周りと同じように拍手をしながら涙をぬぐった。
今日のために買ったきれいなワンピースに、しみがついていく。
今日のためにおろしたハンカチに、涙がこぼれ落ちる。
私はあなたたちと同じようには笑えない。
end
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