複雑・ファジー小説

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七日間のmemorial ー余命七日ー
日時: 2020/08/22 22:08
名前: 小白 (ID: JGdWnGzk)

        0日目

「先生。こんにちは」
 八月の暑い日。私は定期検診の結果を聞きに、行きつけの病院へ来ていた。私の事を昔から診察してくれているお医者さんは、ぎこちない笑顔でこっちを向いた。
「あ、あぁ。こんにちは、如月さん」
 私は丸椅子に座って、彼を見た。「結果、どうでしたか?」。いつものように、そう聞いた。いつも通り聞いたので、いつも通りの返答が————「問題なしです」と言う返答が、来ると思っていた。
 お医者さんは深刻そうに、私に体を向けた。そして、重い口調でこう言った。
「如月さん。あなたは今、非常に危険な状態です」
「……ぇ?」
 目を丸くして、彼を見つめた。次の言葉に、私は自分の耳を疑った。
「……もって、一週間かと」
 目の前が一瞬、くらりと歪んだ。夢だと、そう思いたかった。ただ、彼を見つめることしかできなかった。
「で、でも、あくまでそれは余命ですよね? 絶対に一週間で死ぬって訳じゃ————」
 私の声は、そこで途切れた。彼が首を横に振ったからだ。それまで膝の上にあった手は、力が抜けた。そんな私をよそに、お医者さんは話を進める。
「どうしますか? 入院なさるなら、手続きを……」
「……入院なんか、しません」
「……そうですか。では、ご家族に伝えられた方が……」
「しません」
 それは、自然に出た言葉だった。彼が、驚いたように私を見た。
「で、ですが……」
「私が……嫌なんです」
 余命宣告をされたことなんか伝えたら、あの子達に心配をかけてしまう。そんなことは御免だ。それなら、伝えない方がいい。そう言うと、お医者さんは諦めたようにうなだれた。
「……わかりました。ですが、弟さんの和也さんには伝えた方がいいかと……」
「……考えておきます。ありがとうございました」
 私はそう告げて、病院を後にした。


 ————両親が死んだのは、今から四年前。私が高校三年生の時だった。
 当時両親は、結婚記念日と言うこともあり、二人で遠くへ旅行に行っていた。家にいたのは、私と、弟の和也と、陸斗。そして、妹の千尋だった。私がバイトをしていた時に、電話がきた。電話の主は、高校の先生からだった。
 ご両親が、事故に遭った。
 その時は、目の前が真っ暗になって、思考回路が停止した。店長にすぐに病院へ向かうよう言われ、私はバイトを早退し、病院へ駆け出した。大丈夫、大丈夫と、何度も自分に言い聞かせた。きっと助かる。そう思い、手術室から医者が出てくるのを待った。
 でも、駄目だった。