複雑・ファジー小説

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死願の鈴音
日時: 2020/09/01 23:29
名前: 千道千尋 (ID: IlzFUJT4)

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陽に表、夜に裏
素性不明の輩達

悲しみを背負い 憎しみを請け負う
悪を裁く極悪人達の物語

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倉庫の中で物音が鳴り響いていた。
あちこちに積まれた段ボールが転げ落ちそれらを縫いながら男が息を切らして必死に奥に進んでいる。

その後ろを別の男が追跡する。
右手には一本の刀を持ち、左腕で段ボールをかき分けてただ一点を見つめて歩いていた。
男は足を引きずりながらも最後の力で走り、倉庫の奥の裏口から外へと飛び出した。
「はぁ、もう走れねぇよ」
道路の中心にて座り込み、絶望感に浸っていた。
すると、正面にライトが現れた。
「大丈夫ですか?」
「警察!?そ、そっちに!!刀を持った男がいるんだ!!通り魔だ!!助けてくれ!!」
倉庫の方を何度も指差して現れた警官に助けを求めた。

警官は乗ってきた自転車から降りて、裏口から倉庫内を照らした。
「通り魔ですか?中には誰もいませんが…あなたを仲間だと思われたのでは?ほら、類は友を呼ぶと言います。」
「何だと!?お前、ふざけてんのか!!」

「苦しんだでしょうね。欲を抑えられない獣に刃物で何度も刺され…無念だったでしょう。」
徐々に低くなる声と何か身に覚えがあるのか、その言葉に男は警官からゆっくりと距離を置いていった。
「お前まさか……誰が鈴を鳴らしたんだ?」
警官は拳銃を取りだし、男の方に銃口を向けて言い放った。
「お前が殺した彼女の恋人だ」
銃声は無く、男は額の中心を鉛玉に貫かれて倒れた。


「誰が頼んだ。」
刀を持った中年の男が警官の前に現れた。
「刀一本じゃ限界がある。逃がすよりマシだ」


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昨夜午前2時頃、○○町の○○倉庫にて殺人事件が起きました。
被害者は拳銃で撃ロたれ、犯人は未だ逃走中です。
付近の方々は十分にご注意ください。

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山に建てられた長い階段を登った頂上にある寂れた神社
かつては様々な供養を行っていたであろう。
数十年の時がたちボロボロになった人形がまだ置かれていた。
悪戯で置かれたのか一体の日本人形が座る賽銭箱の上には錆びた大きな鈴、まだ賽銭箱の中にはお金が残っている。

「あの凉稀とか言う新入りの子は昨日で何人殺したの?」
何処からともなく現れた和装の小学生ぐらいの女の子が賽銭箱の上に座った。
「またその様な事を…ご先祖様はあの子をまだ信用できませんか?」
何処に居たのか40半ばの神主らしき人物が現れご先祖と呼んだ女の子に敬語で答えた。
「別に怨み晴らしの代行をやってくれるなら別に誰だって構わないのよ」
女の子は賽銭箱を覗き、手をいれてニコッと笑った。
「今日も依頼が来そうな予感がするわ…」




神社の下の道で、複数の小学生が上を見上げていた。
「早く行けよ。お前、怖くないんだろ?」
「嫌だ。」
「ここには俺達ぐらいの子供の幽霊が出るんだぜ」
「怖くないけど僕は先に帰る!!」
「おい、待てよ!!あいつ、足はぇぇ…」

穂野優太は11才の小学生で27歳の若い母、憂奈と二人暮らしだった。
母は昼夜共に仕事でほとんど居ないため。アパートの合鍵をもらい一人で留守番をして過ごし
ご飯はコンビニの惣菜が用意してあり、それを温めて食べる。
優太には一つ、嫌な事があった。
母親が酔っ払って男を連れてやってくること
子供の事を話してないのか大概の男は最初に驚き優太を足蹴にし邪魔者扱いして
酷いときには一晩中外に放り出された事もあった。
憂奈はフラフラになるまで泥酔し優太の事まで頭が回らず翌朝、外で眠る優太に驚いて謝るだけだった。
他人に見られれば母親が虐待していると勘違いされる。
そう思い、最近は母親が帰宅する前に押し入れに隠れ息を潜めていた。