複雑・ファジー小説

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神が愛する人外達よ
日時: 2020/10/19 10:43
名前: 望月 兎子 (ID: 50PasCpc)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12895

皆様、初めまして
望月 兎子(もちづき たまこ)と申します。
ここを使わせていただくのは始めての新人です!
本日から創作小説を描かせていただきたいと
ここに投稿させてゆく事にしました。

誤字や脱字の指摘・アドバイス・感想
辛口でも構いません。なにぶん初心なもので文章などに至らない点があると思いますので……。
アドバイスは出来るだけ参考にしようと思っています!感想はモチベーションなどに繋がりどのキャラクターが好み等と言ってもらえるとすごく嬉しいです。

荒しなどだけは止めていただきたいです。
雑談はそれようのスレを立てたのでぜひそちらに!

この小説は複雑ホラー・ファンタジーで時にシリアス
時にほのぼの(ギャグ?)とした日常的なものとなります。

皆様どうぞ温かくよろしくお願いいたします。

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Re: 神が愛する人外達よ ( No.9 )
日時: 2020/10/22 22:03
名前: 望月 兎子 (ID: 50PasCpc)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 「全く……だいたいあいつの爪はなげぇんだよ」

 一階でアシュとウィリアはソファーに座りながら夫婦喧嘩の話をしていた語り手はウィリアで聞き手はアシュ内容は今から数時間ぐらい前ウィリアが朝、機嫌が悪く些細なことで奥さんと口論になりついにぶちギレた相手に顔を引っ掻かれそれでうちに逃げてきたらしい。彼の自業自得といえばそうなのだろうが、アシュはそういったことは気にしていない様子でウィリアの話を聞いた。ウィリアの顔は会話をする少し前にアシュが手当てをしたおかげで今は大きめの絆創膏がペタペタと貼り付いていて少しはマシになっている、ウィリアは思い出すとまた少し腹立たしいのか眉間にシワを寄せ納得のいかない表情をしていた。
 ふと――彼は椅子からピッタリと座り右手しか動かない少年、オリヴを見た。アシュはウィリアが視線を向ける方向へ顔を向けるとまたウィリアに戻した。どうやら、彼はあの少年が気になるらしい。そういえばウィリアとオリヴはお互い会ったことのない初対面同士だった、オリヴの方はすでに彼をアシュの友人だと認識しているだろうがウィリアはまだ少年が何者なのか知らない。

 「――あ、会うのは初めてだったね、彼はオリヴァー・ベネット君。うちの近所に住んでる子で僕の友達だよ」

 「へぇ~お前の友達……ねぇ…………ん? オリヴァー・ベネット“君”?」

 ウィリアは名前を聞いた瞬間、子供のわりに大人びた名前だなと思ったが、それよりも彼は“君”つまり男の子を指す(たまに女の子にも使われたりする)単語に食いつきを示すと、驚いているのか目を見開かせながらオリヴを見つつアシュに少年は男なのかと聞いた。ウィリアの様子に疑問を抱いていたアシュはこの問いに納得がいき少年は男なのだと伝えた、ウィリアは出会った当初からオリヴァー・ベネット少年を女の子だと思い込んでいたようだ。

 オリヴの顔は一見すれば女の子にも見えるし、または男女どちらなのか分からない時もある。少し中性的な顔立ちなのだ間違えるのも無理もない――なぜなら、アシュも最初に少年に会った時男か女か分からなかったからだ。

 「中性ってやつか……俺はてっきりあいつは女かと……」

 「まぁ、見ようによってはそう見えるもんね」

 相手の言葉に苦笑するアシュは仕方ないと言わんばかりの口ぶりだったが、中性的なのを気にしているオリヴは二人の会話を聞いてムッとなり二人をハッ倒したくなったがそこはこらえてやった。今は絵だけに集中したい、少年は横目でチラッとアシュを見ると、アシュはウィリアを他愛のない会話を続けていた。
 ――オリヴが描いている絵はまるで病んだ人が描いたように大雑把で、どこか暗さと恐怖が入り交じったように禍々まがまがしく、まるで――何かを警告しているような恐ろしい絵だった。しかしこれはまだ完成ではないまだ下描き程度のものでこれからが本番だった、少年は絵とアシュを交互に見ながら思った。

 “役立てなきゃ殺すからな、くそ野郎”っと……オリヴは絵の続きへ戻った。



 それから二時間が経ち、ウィリアはアシュと一通り話して満足したのか「そろそろ、帰って仲直りする」っと言い出しソファーから降りると玄関へ向かった、アシュは見送りをしようと彼の後へついて行く。

 「ありがとなアシュ、俺の話聞いてくれて」

 「良いんだよウィリアまたいつでも来なよ、僕は歓迎するから」

 ドアノブに手をかけながら感謝をするウィリアにアシュは優しく言った、相変わらず優しい奴だなっとウィリアは心の中で思いつつ「じゃあまたな」と元気の良い声で言うと手を降りながら外へ出た、アシュは彼が行った事を確認すると鍵を閉めオリヴのところへ向かった。

 「オリヴ~話し込んでてごめんね」

 「……」

 話しかけてもオリヴは何も言わない、アシュはスケッチブックへ目をやるとそこにあるのは何か真っ黒なもの――下描き? それとも別のものだろうか? 分からなかったがとにかく絵が描かれている。きっと完成したら見せてくれるだろうとアシュは期待に胸を膨らませつつ今は何時だろうと時計を見た。時刻は午後一時、三時間近くウィリアと話していたのか、とアシュはそれほど少年を待たせてしまったことに罪悪感がこみ上げた。

Re: 神が愛する人外達よ ( No.10 )
日時: 2020/10/23 03:52
名前: 望月 兎子 (ID: 50PasCpc)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 「あ……あのーオリヴさん? 何か……その…………言ってくれませんかね……めちゃめちゃ寂しいというかなんというか……」

 ひたすら無視だけを決め込むオリヴにアシュは歯切れが悪い、構わなかったことを怒っているんだろうかと思いつつ何か少年を喋らせるような話題を考える。そこでふと我ながら良い話が浮かんだアシュは口だけをニッコリさせながらオリヴに話しかけた。

 「ねぇオリヴ、僕の首飾り知らない? 朝から見当たらなくて――」

 「知らない」

 声を出してくれたは良いもののその口から出たのはあまりに素っ気の無い即答な言葉。冷ややかな感情だけが込められているだけ、これはつまり今は話しかけるなという合図なのだろうかとアシュは思った――少年がそうして欲しいと願うなら仕方ないとアシュは諦めた様子でソファに座った。
 それにしても首飾りはどこへいったのだろう? 昨日は確かに身に付けていたはずなのに今日に鍵って失くなるなんて……気になることはもう一つ一旦自室へ戻った時だ、あの恐ろしい叫び声。あの時は驚いて気づかなかったがアレは霊のものではない、邪悪に満ちた神の反逆者。地獄に住まう者、地上に来ては人を苦しめる。そうアレは――。

 「悪魔あくま――」

 アシュは思わず小さく口にした。その言葉はあまりに小さすぎてオリヴの耳にも届いていない。“悪魔”それは神に仕える天使がなんらかの理由で堕天だてんしてなるもの、地獄じごくという罪を犯した人間が死んだ後堕ちる場所に住み地上に来ては人間に悪行あくぎょうを働く――しかし少なからず性格的に良い奴も居るらしい。彼はその良い悪魔とやらに会ったことが無く、これは聖書の受け売りなので本当かどうかは分からない。

 もしこれが悪魔がこの家に居るのなら早急に対処せねばならない放置しておくと命に関わる事態になるからだ、こういう時は教会に頼んだりするのが普通だがあれは悪魔が居るという証拠がなければ動いてくれない――いや、そもそも教会に頼む必要はないのだ。なぜならこの男、アシュ・ラーティオが勝手に一人で解決するからだ。
 しかし、ここでまた別の問題が浮上する。

 「悪魔の正体も名前も分からない……どーしよぉ」

 小さな声でブツブツと言うアシュ、人が悪魔を対処するには名前か正体を分かっていなければならない、でなければどうしようもない――ふとある考えが頭をよぎるが、これは一人を巻き込む事になるので止めにした。
 映画だと悪魔に名前を言えと言えば、悪魔は自らバラしてしまうのだろうが実際そう簡単にはいかない。悪魔は弱点を自分から吐いたりしない、そこまで馬鹿バカではない――。
 
 アシュが考えにふけりに耽っていると不意に固定電話が鳴った、アシュはなんだろうと思いソファから降りると受話器を手に取り耳に当てた。

 「もしもし?」

 「あ、もしもしアシュさん?」

 電話の相手は女性でアシュは誰なのかすぐに分かった、オリヴの保護者であり少年の叔父さんの奥さんだった。

 「オリヴ君の様子を伺いたくて……今どうしてます?」

 「今――楽しそうに絵描いてますよ」

 アシュは一度オリヴを見てからそう伝える、奥さんは電話越しでも分かりやすくホッと安心した様子で「なら良かった」っと言った。アシュがなぜ電話をかけてきたのか聞いてみるとただ様子が気になっただけだという、そんなにまで少年が心配なのだろうかと少し疑問に思いつつもアシュは「そうですか」と上面だけの返事をした。

 「ごめんなさい、本当……いきなりかけたりして。ただ様子が聞きたかっただけなんです」

 「良いんですよ別に――あ、帰す時間は三時頃でしたっけ?」

 「ええ、そうですよ」

 彼が時間を聞くと奥さんは少しぎこちない様子で返事を返す、どうもアシュと話すのは緊張してしまうようだ。アシュが「僕が聞きたいのはそれだけです」っと言うと奥さんは“そう”という言葉に続き「じゃあ、電話はこれで……またねアシュさん」と急ぎ気味に電話を切ると、彼は受話器を元に戻し後ろを振り返って口を開いた。

 「オリヴ! ちょっと早いけどおやつ食べよう!」

 そう言ってアシュは台所に行きお菓子を取りに行った。

Re: 神が愛する人外達よ ( No.11 )
日時: 2020/10/25 02:35
名前: 望月 兎子 (ID: 50PasCpc)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 アシュは戸棚から出したクッキーを器に入れてテーブルへ持ち出しオリヴの近くへコトッと置いた、オリヴは最初はあまり興味を示していなかったが次第に甘いものに対する欲求が湧いたのか一枚づつクッキーへ手を伸ばし頬張るようになった。それを見たアシュは嬉しそうに笑って自分も一枚だけクッキーを食べたが、口の中に広がるほんのりとした甘味がたまらなくなり結局もう一枚食べた。クッキーは悪魔の誘惑のように癖になってしまうからある意味罪な食べ物だとアシュは思った。

 「――アシュ」

 珍しくオリヴの方から話しかけてきた、アシュはすでに三枚目を食べつつオリヴの呼び掛けに「なぁに?」と返事をした。オリヴは相手の呑気な様子に気乗りしないのか「やっぱなんでもない」と言って言うのを止めた。アシュは少年が何を言おうとしたのか気になりはしたが手だけは四枚目のクッキーの方へ伸びていた、今日のオリヴはいつになく口数が少ない、一体どしたのだろうかとは思っていても歯は四枚目を噛み砕くのを止めはしなかった。
 すると。

 「……アシュ、悪いけど俺もう帰る」

 突然オリヴはそう言い出した、アシュは一瞬困惑し少年になぜなのか聞こうとしたが少年の様子からきっと答えてはくれないだろうと口を開くのをとっさに止め、隣に座らせていたリュックに筆箱などの荷物を詰める相手をただじーっと見つめた。
 オリヴは一通りのものは詰め終わり椅子から立ち上がり元の位置へ直すととリュックを背中にからみアシュの方へ歩み寄りアシュに耳を貸すように言うと、彼は頭の上に見えないハテナを浮かばせつつしゃがんで少年に耳を傾ける……。

 「明日は――ちゃんと話そうぜ。くそ野郎」

 オリヴはアシュの耳に向かってそう言った。この時アシュは思った、少年が今日口数が少なかったり急に帰ってしまうのは何か理由があってからなんだろうけど、明日はちゃんと話が出来るとそう言っているのだと。少年のアシュに対する“くそ野郎”とは親しみと皮肉を込めた呼び方でアシュはとても気に入っている。
 彼は少年の可愛らしい……のかもしれない耳打ちに笑みをこぼし「うん、約束だよクレイジーボーイ」とこちらも勝手に名付けたあだ名で少年を呼びつつお互いハイタッチをして挨拶をした。二人は満足げな顔をしオリヴは玄関へと向かった、オリヴは近くでの見送りは慣れておらず苦手なのでアシュは遠くから見つめつつ、少年に向かって手を降った。
 オリヴは彼が手を降っていても振り返そうとはせず玄関のドアを開け、そこで一旦振り返った。

 「“白い物に黒などが使われる物”はなーんだ? ヒントはお前もよく知ってるものだよ。またね――アシュ、クッキー美味しかった」

 少年は最初の謎かけのような意味深な言葉を残しつつそのまま出ていってしまった――。

 白い物に黒などが使われる物……? 一体なんのことをいっているのだろうとアシュは玄関の鍵を閉め、意味を考えた。まずあのオリヴが意味も無くこんな言葉を残して行ったりはしない、遊びにしてもヒントなんてよこしはしない。少年はそんなもの無しに人を悩ますのが好きなのだ、少年は早くアシュに気づかせるため――それもわさわざ謎かけ風に伝える必要があった、アシュは腕を組みリビング内をウロウロ歩きながらヒントも取り入れながら考え続けた。

 「僕も知っているもの……? 僕も知っていて白い物に黒などが……使われる物…………」

 彼は頭を悩ましながら、白い物に黒などが使われる物を思い浮かんでいた。同時にパッと出てこないこの頭がとても憎たらしく思えてきた――昔なら冴えていたはずの頭脳も時が経てば衰えてくるこれはマズイ、見た目だけは二十代そのものなのに頭は老化してるなんて――アシュは謎かけの他に悩みが一つ増えてしまった。

 すると、アシュはウロウロ歩きを止めその場で立ち止まるとあることを思った。オリヴのこの謎かけの物とやらは実はオリヴに自身に関係しているものなのではないか? っと、そして自分はそれが何なのか誰よりもよく知っているのでは? っと――そこでふと頭の中である物が浮かんだ。それはオリヴが棚に収納するほど大事にしているもの、スケッチブックだった。謎かけの白い物はスケッチブックで黒い物は鉛筆。

 「そういえば……オリヴのやつ、今日はずっと……何かを描いていたような……」

 アシュはオリヴが座っていた椅子の方へ目をやった、するとそこに何か白い端の部分が見えりアシュはその椅子を試しに引いてみると――半分に折り畳まれたスケッチブックのページが一枚上に乗っていた、これが答えなのだろうかとアシュはページを手に取り中を見ると……そこには、二本の大きな角に大きな羽、鋭く尖った長い爪をした真っ黒な人形ひとがた。少年にしては珍しく雑に描かれているがアシュはそれが何なのかすぐに分かった、これはずっと彼が求めていたもの――そう“悪魔の姿”であった。

 「あのクレイジーボーイ……最初から悪魔の存在に気付いていたんだな……」

 絵を見ながらポツリと呟くアシュ――少年は悪魔に悟られないようその姿の絵を描いていた、が、しかしそれも限界が来てしまったのだろう悟られそうになって危機感を感じたのだろう。だから早々と帰ってしまった……絵を彼だけに気付かせるため謎かけのような言葉を残して――。
 だんだんとオリヴの意図が分かってきてまた笑みをこぼしてしまうアシュ。

しかし、洗面所から響く何かが割れるような音はぶち壊すようにアシュの笑みを崩した。

Re: 神が愛する人外達よ ( No.12 )
日時: 2020/10/25 01:58
名前: 望月 兎子 (ID: 50PasCpc)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 「なんてことだ……」

 洗面所へ向かったアシュは目の前の光景を見てそう呟いた。
 鏡が割られ――その役目を終えた向こうには木の部分があらわになり、そこには赤い文字で大きく“死ね”とだけ書かれ破片は無惨にも流しに飛び散っていた。鏡がなければ顔を洗うときに困るなっとアシュは心の中で思いつつ破片を拾おうと手で触ったところうっかり指を切ってしまった。

 「痛っ」

 神経が集まる指は怪我をすると軽く声が出る痛みを患う、今がそうだ。
 アシュは小さく鮮やかな切り口から血が出ているのを見たが、彼は何事もなかったかのように振る舞いつつ蛇口をひねって血を水で流しタオルで適当に拭いた。一応これで大丈夫だろうと血だけは一旦止まった傷を見た後、再び破片を拾い始めた今度は怪我をしないよう用心深く――。

 「ソノママ、死ンジマエ!!」

 不意に背後から男のようなダミ声の叫びが聞こえアシュはバッとすぐに後ろを振り向いたが、そこには誰も居ない……しかし同時に大きな破片を持った右手が握ったまま放せられなくなった。彼の手はアシュの意思に反し破片の尖った先端部分を首に向けそのまま突き刺そうとしていた。アシュはまだ自由の利く左手を使い手首を掴んで、食い止めようと力を込める。
 アシュの右手はすでに自分のものという感覚は失われていた、なぜなら悪魔が操り意のままに動かしているからだ。彼を刺し殺そうと――ああ、左手も使えなくなるのは時間の問題だ。そうなれば彼は死ぬ、いつか冷たくなった彼が見つかった時はきっと自殺で片付けられるのだろう、だがそんなこと彼は許さない。

 アシュはもう死ぬ気は無い。

 「――母と祈りの御名みなにおき、神が創りし“人外じんがい”の名にかけ、お前に命ずる、悪魔よ……僕の手から退け!!」

 力強く恐れ無き声でアシュは叫んだ。
 すると、未だ眼に視えぬ悪魔の悲鳴らしきものが彼の耳をつんざいた。先程の効果が出ているだろうか右手に少し感覚が戻ってきた、が、まだ破片を放せそうにはない。アシュはもう一度あの言葉を繰り返すと悪魔はもっと大きな声で叫び散らし、アシュは死ぬ以前に鼓膜が破れるのではないかと思わず心配した。

 少しづつ右手に自由が利いてくる、耳障りな悲鳴も聞こえてこない――悪魔はようやく諦めたようだ。
 なんて利口なんだろう、きっとここは一旦退いておいて、次また機会を伺って殺しにかかってくるつもりだ。悪魔はずる賢いゆえに頭が良い。かつては天使だった者の成れの果てだからだ。アシュは完全に自分のものに戻った右手から破片を放し、そっとため息をつく。

 「災難な日……首飾りは無くすし、悪魔には殺されかけるし……」

 アシュはうんざりしたような口調で言いつつ、気を取り直して破片の片付けを続行した。



 突然の帰宅で叔母を驚かせ「自分の意思で帰ってきた」っと安直な説明で納得させた少年オリヴは、その後部屋に居た――正確にはこれだけではない、叔母にちゃんと理由も聞かれとっさに帰りたくなったからと、アシュも納得してくれたと渋々ながら答えてからようやく納得させた。
 少年は今、机に突っ伏しながらアシュがどうなったのか、自問じもん自答じとうを続けながら考えていたいた。
 やはり自分が積極的に助けるべきだったか? いや、この程度のことならちょっとした手助けだけで十分だろう、あの絵を――描いて置いて行くだけで――。

 「……あ」

 ふと、少年はあることを思い出した。パーカーの事だ、少年はアシュ宅の部屋にパーカーを置き忘れた。急いで家を出た時からすっかり頭から抜けていた。
 オリヴは“今日はもうこれでお別れね”みたいな(ただでさえいい加減過ぎる)出方をしたのに、忘れ物をしたから取りに行く――なんて角が立つのもはなはだしい。ここは向こうが気付いてくれるまで待つか、明日ちゃんと取りに行くのが理想的だろう。

 「……はぁ、本当に馬鹿」

 それは今の自分に対しての言葉か、数時間前の自分に対しての言葉か、少年にも誰にも分からなかった。

Re: 神が愛する人外達よ ( No.13 )
日時: 2020/10/26 03:24
名前: 望月 兎子 (ID: 50PasCpc)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 小さいものから大きいものまで――全ての破片を残さず片付け終え、ついでに溜めていた洗濯物を干し終わった所。気付けば時が経ち、夕方になりかけで窓から茜色の暗い光が差していた。
 夕食の買い出し、車で約十五分ほどの距離がある遠出のスーパーには行く気力が無い。たださえ控えめな食欲もより控えめになって今日はとても食べれそうにない、まぁ一日ぐらいなら平気だろうとアシュは地味に疲れた様子ながら室内の電気をつけるとドサッと音を立てソファに座った。
 今日の彼はどうもおかしい、悪魔が居るからとかそんな理由ではなく、なんというかいつになく怖がりで油断が多い、夢見の悪い朝から、首飾りを無くしてからーー。

 アシュは考えるのを止めた、これ以上はよしておきたい。彼は気分を変えるため目についたリモコンを持つとテレビをつけた、今はニュース番組が放送されているあらゆる事故や事件の事、しかし、アシュにとってそれは人間がやったものかもしれないものとそれ以外がやったものかもしれないというものに過ぎなかった。

 彼は普通ではない、人間と似ている部分はあるが違うーー。

 「……」

 アシュは洗面所に行く際、適当に置いたオリヴの絵を手に取ると絵画を見つめるように目を集中させた。
 そして、彼は真っ黒な人形ひとがたから右上に視線を移動させると、そこに何やら小さな模様のようなものが描いてあるのに気づいた、模様は丸い円に鳥の形をしている。

 アシュはこれが何なのかすぐに分かった、これは自分が常に身に付けている首飾りの模様。
 それが描かれているという事は、首飾りは悪魔が持っている……? そういう意味なのだろうかアシュは思った。

 「そうか。朝、服を着替えている時に隙を見て奪ったのか。僕の……大事な……ものを…………」

 彼の無感情だった心に悪魔に対する怒りが沸々ふつふつと湧いた、悪魔は時に人の大事なものを奪って惑わすときがある。そんな事すら忘れて呑気に「どこにいったんだろう?」なんて思っていた自分にも同じくらい腹立たしくなった。顔には出していない静かなる怒りはーーオリヴの絵を持つ手にだけ表れた、強く握りしめているせいで紙にシワが寄っている。すぐに力は緩めたが、彼の光の無い瞳はより一層暗くなり美しさの欠片も無くなっていた。

 「ーー挽回ばんかいチャンスは深夜のみ、絶対に逃すな。アシュ・ラーティオ」

 ボソボソと独り言のように呟かれたそれは、自分で自分にプレッシャーをかけている言葉だった、たまにこうすると彼の決心は更に固くなる。
 悪魔を祓う時間は深夜十二時、理由は悪魔が出現しやすいからだ、悪い子のお時間。それまで彼は一睡もせんとただ待つのみ、相当な耐久力が要る事だがアシュには関係がない。
 必ず首飾りを取り戻し“あのヒト”にきちんと祈ると誓う今の彼には無い。

 しかし、その様子を姿隠して見つめる悪魔はただーー密かに嘲笑あざわらっているみたいだが。


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