複雑・ファジー小説

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I Room
日時: 2021/03/09 11:07
名前: 摂氏九度 (ID: Sua4a79.)

皆様、初めまして。摂氏九度せっしきゅうどと申します。
拙い文章にはなってしまいますが、よろしくお願い致します。

Re: I Room ( No.1 )
日時: 2021/03/11 11:54
名前: 摂氏九度 (ID: Sua4a79.)

-Prologue-

やっぱり、俺は名前負けしていると思う。
勇敢で、仁愛に溢れるように、と親が名づけた名前だった。
申し訳ないが、親の期待には中々応えられそうにはない。

「ちょっと? 勇仁くん~?」
後ろから肩を叩かれ、ハッと我に返る。
振り返ると不機嫌そうに頬を膨らませる美女が立っていた。

「お客さんほとんど来ないからって、まだ仕事残ってるんだから。ちゃっちゃとやって早くサボるよ!」
「へいへい」

橋本勇仁はしもとゆうじん、というのが俺の名前だった。
漢字はともかく、下の名前は基本一発で読まれる事はない。大分不便な名だ。
大学2年生として今年の春を迎えた俺は、特に絵に描いた様な青春を謳歌している訳でもなく、こうしてコンビニの夜勤で働いている。
悲しい奴だと思われるかもしれないが、実はコンビニバイトというのは意外とメリットも多い。
まず一つ、廃棄を持って帰れる事。独り暮らしには相当有難い。次に、終電を過ぎれば客がほとんど来なくなる為、サボり放題という事だ。
そして何よりも……

「美香さーん、ドリンク終わりました」
「よし! それじゃサボろっか」

楠美香くすのきみかと毎週シフトが被っている事が、俺がここで働く一番の理由だ。



「今月の彼氏、見たいですか」
「美香さんまた彼氏変わったんすか……、別に見たくねえよ」
「えー、次はね、凄いよ」
「え、また芸能人すか」
「しかも超有名」

耳元で囁く彼女に動揺して、思わず前屈みになる。違う。これは仕方ない事だ。
楠美香との会話はいつもこうである。
美香さんは1ヶ月おきに、早い時は1週間おきに彼氏をコロコロ変え、しかも毎度律儀に報告してくる。
それでいて付き合う男は大体普通じゃない。どっかの社長だったり、ホームレスだったり、小学生だったり……って小学生は流石にマズイだろ、犯罪じゃねぇか……。
今回は彼女曰く超有名芸能人だった。正直クソ気になるが、聞いたら俺はどこかの週刊誌にリークしてしまいかねないので、代わりに毎度お決まりのセリフを投げかける。

「で、なんで俺とは付き合ってくれないんですか」
「うーん。本当に好きだからぁ?」

俺は飲んでいたエナジードリンクを盛大に吹き出す。彼女は「うわっ」とドン引いていた。アンタのせいだよ……

「冗談に決まってるじゃん、可愛いなぁ」
「冗談でもやめてくださいよ……」

こんな感じで、俺はいつも主導権を彼女に握られている。
だが、俺はこの時間が嫌いじゃない。寧ろ好きだ。先に言っておくがドMではない。
俺が今、まともに会話をする女性は美香さんくらいだからだ。圧倒的に俺の人生には女性が枯渇している。この時間だけが俺の生活の癒しなのだ。

「勇仁君、飢えてるんだねえ」
「飢えてなくとも美香さんとは付き合いたいでしょ」
「飢えてる勇仁君に良いもの教えたげる」
「人の話聞いてましたか?」
「良いから良いから」

美香さんはそう言って、俺に長ったらしいURLを送りつけた。


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