複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

野中
日時: 2021/01/21 22:26
名前: T (ID: 5yMLPDHi)

野中は、地べたに座った。イスが無いし、疲れていたからだ。周囲の目は気にならない。
昼食は、さっき食べた。パスタを洋食店で食べた。これがまた美味しかった。パスタ自体、長年食べていなかったので、その分美味しく感じた。
そして、野中は考えた。地べたに座りながら、誰を殺すか。
野中はスナイパーだ。いわゆる、殺し屋。依頼人の依頼をお金次第で完璧にこなす。今までも、そしてこれからも、野中はこの仕事をしていくのだ。今回の依頼は、「この通りを歩く誰か1人を殺せ」だった。野中は依頼人に「何故、特定の誰かではないのか?」と問うと、依頼人は「報酬はこれだ、ほら。だから、黙って俺の言うとおりに誰か1人殺せ」と言った。野中の前には、札束が数個置かれた。野中はすぐに「承知しました」と返事した。
そして今、その依頼を遂行すべく、その指示された市街の通りにいる。日曜日ということもあり、人がたくさん行き交う。さて、誰を殺すか。

Re: 野中 ( No.1 )
日時: 2021/01/21 22:38
名前: T (ID: 5yMLPDHi)

誰でもいい、ということだったので、適当に誰かを撃ち殺せばいい話ではあったのだが、野中はそれはしたくなかった。それは簡単ではあるが、面白くはない、そう思えた。だから、考えた。誰を殺すのが適任か。
大人はどうだろう。男女、老人、若者、皆が行き交う。やはり子供よりは大人を殺すべきだろうか。それも、人相の悪い、暴力的な振る舞いをしそうな、いかにもな人だ。その方が何かの為にはなりそうな気はする。
しかし、その考えも、野中の中では府に落ちなかった。そんなのは、そこら辺にいる雑魚な殺し屋と思考が一緒な気がして嫌だった。では、誰を殺そうか?
逆に、どこにでもいそうな、いたって平凡な通行人はどうだろうか。依頼が「誰でもいい」であるので、目にとまった人物を、それこそ適当に殺す。それはどうだろう?野中は少し考えた。そして、それがいいだろうと判断した。

Re: 野中 ( No.2 )
日時: 2021/01/21 23:10
名前: T (ID: 5yMLPDHi)

野中は地べたから立ち上がると、ビルに移動し、階段を上がった。一室に入ると、準備してあったライフル銃を手に取ると、通行人に向けて構えた。距離は数10メートルほど。やや下の方に銃口を向ける。
さて、殺そう。
野中は、1人で歩いてきた成人男性に銃口を合わせると、弾丸を放った。小さくダン、という音が鳴ると、その男性は倒れた。血が流れる。そして数人の通行人が悲鳴を上げたりしてその場はパニックになった。野中は銃を下ろすと、「任務完了」とつぶやき、その場を後にした。

翌日、野中はコーヒーを片手に新聞を読んでいた。昨日自分が殺した人物について記事になっていた。
『男性、何者かに撃たれ死亡』
コーヒーを飲む。幾度となく経験してきたことを、今回もこうして新聞を読み体感する。男性は30歳、会社員とのことだ。野中は、心の中で「依頼だったんだ、許せよ」とつぶやいた。新聞を閉じると、昼食を何にするか考えた。

1年後、野中が男性を撃った現場は過疎化して、衰退していた。誰も通らない。周囲の店も潰れ、その場所だけが閑散としている。雑草も道から伸び、緑地化が進んでいる。近くに、黒い車が止まった。運転席から、1人の男が顔を覗かせる。
「上手くいったな。人が銃殺されれば、誰もビビッて通らない。過疎化する。いい気味だ」
男は車を走らせ、その場を後にした。
-終-


Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。