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複雑・ファジー小説
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- あの柵の向こうには
- 日時: 2021/03/16 14:55
- 名前: わたあめ (ID: ec7C5mAV)
昔から言われてきた。
"あの柵の向こうには行ってはいけない"と。
あの柵の向こうに、何があるのかは誰も知らない。
誰も見ないし、誰も行こうとしない。
言い伝えとしては鬼が住んでいて、柵の向こうに行けば食い殺されると言われてきた。
この村は何かがおかしい。
ずっと思ってはいたけど知るのが怖かった。
知る術もなかった。
- Re: あの柵の向こうには ( No.1 )
- 日時: 2021/03/19 17:30
- 名前: わたあめ (ID: Mt7fI4u2)
#01
柵の向こうには、大きな建物があった。
その建物はもうかなり古そうで、壁が黒ずんでいた。
時々、その建物からは大きなトラックが出入りしているのが見えた。
「トラック?向こうに人間がいるってこと?」
航平は笑い飛ばすように言った。
「いやっ本当なんだって」
俺は必死に言った。
だが、航平はサッカーボールを手にまた笑いながら話す。
「てか楓さ、"あの柵"のこと気にしすぎじゃね?そんなに気になるか?」
「気になるよ。だっておかしいと思わない?先生たち、絶対俺らに嘘ついてるよ」
「だとしても、鬼に食われるよりここで大人しく暮らしてた方がいいじゃん?」
航平はそう言って笑った。
航平はいつだってこう言う。
笑いながら"大人しく"と。
まるで俺に、自分に言い聞かせているように。
航平はきっと気づいている。
"あの柵"の向こうには、鬼ではない何かがいることに。
鬼に食われるなんてのが、13歳ながらに大人のついた嘘だということに。
すべては俺の憶測に過ぎないことだが、なぜだか確信を持っている。
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