複雑・ファジー小説

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コマオト
日時: 2021/04/20 23:02
名前: ちぇりお (ID: UIQja7kt)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=11873

はじめまして。

ふわっと始まってふわっと終わりそうな小説を書こうと思いました。

宜しくお願いします。

話は、次のスレから書きます。

のんびり見守って下さると嬉しいです。

Re: コマオト ( No.1 )
日時: 2021/04/20 23:03
名前: ちぇりお (ID: UIQja7kt)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=11873

ウチの部室棟は、とにかくボロかった。

学校の歴史的な有形文化財とか言うけど、要するに費用が足りなかっただけなのだ。

新入生は、まず新校舎とのギャップ萌えを味わうわけ。

そんなショッキングな萌えなぞ、いらねーよ。

ちなみに、ウチは将棋部だったけど、運動部みたいに上下関係にうるさくなかったよ?

顧問いたけど、売れないお笑い芸人みたいな寒いネタばっか言うんだよね。

棟がボロいから、軽音部の練習曲が丸聞こえだったし。

タイトル回収? ちゃんとやるよぉ笑

アタシのなかで、あの楽しい日々はずっと宝物だから。

社会人になって、淡々と苦しい毎日を送るようになった。

もう、はち切れそうになるたびに部のみんなで撮った写真を見て、エネルギーをもらうんだ。

アタシたちにしか、紡げなかった物語があったってだけ。

誰もが、主人公なんだと思う。

それを、今になって痛感してる。

ありゃ、前置きが長くなっちゃった。

イヤだイヤだ、年はとりたくないねー笑

アタシの話が気になる人は、もう少し待っててね~笑

Re: コマオト ( No.2 )
日時: 2021/04/20 23:04
名前: ちぇりお (ID: UIQja7kt)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

俺の幼馴染みは、良く言えばポジティブ。

悪く言えばバカである。

身体能力にパラメーターを極振りして、陸上でインターハイまで行ったすごいヤツだ。

極振りと言った通り、頭脳労働は全くダメ。

「んにゃー! ねね、このクレープ美味しいよ! りゅうも一口どうよ?」

と、この様に間接キスという言葉が頭をよぎらないクレープバカが、幼馴染みの久留米くるめ 志乃しのだ。

バカに対して、毎回、呆れる俺もバカなのだろう。

「......間接」

「関節なら、いつも動かしてるから簡単にバキッとならないよー」

「頭にじかに栄養を送る機械とかねぇのかな」

「ロボトミー!?」

「世界史に出てくる単語はスラスラ出てくるのな」

志乃は、物語として暗記するのが得意だ。  

運動系で暗記が得意なのは、かなり珍しいと思う。

俺が世界を知らないだけか?

目の前で、クレープが志乃の栄養として吸収されていく。

「志乃、部活決めたか?」

俺は、昔から運動がダメで、頭脳労働が好きだ。

だから、志乃が羨ましかった。

率直にモノを言えて、仲間が多い。

俺は、自分の気持ちを抑えて意見することが多かったから。

中学までは。

「んーん。 まだー。 隆、見た目チャラくなったよね。 高校デビューってヤツ? ピアスまでは開けなかったか!」

コロコロと笑う志乃とは対照的に、俺はめっちゃ緊張していた。

生唾を飲んで、早口で話す。

「部活決めてねーならさ、俺と将棋部入らね?」

志乃は、高校でも運動やるだろうから、俺の提案はやんわりと断られーーーー

「うん! 良いよ、入る!」

OKが出た。

Re: コマオト ( No.3 )
日時: 2021/04/21 05:07
名前: ちぇりお (ID: UIQja7kt)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

アタシの高校生活は、隆によってワクワクなモノとなった。

将棋のゲーム性よりか、自分の気持ちと考えで無限のやり方があるっていう所に惹かれたんだと思う。

結局、自分を試す事が好きだったんだね。

とはいえ、前向きな気持ちがあってもルールをほとんど知らない初心者だったアタシと、将棋をそこそこたしなんでいた隆は部室へと足を運んだ。

「失礼しまーす......」

駒音と対局時計の秒読みが雑多に聞こえる中で、アタシは驚いた。

男子多っ!!

父親が将棋の番組をよく観ていて、女流棋士(女性の将棋プロ)が特集されていたこともあったから、ウチの将棋部は、女子部員もいるんだろうなー、くらいに軽く考えていた。

あとから隆に訊いた所によると、将棋のプロもプロの養成機関も男性が多いのだという。

そもそも、将棋というゲームが、徹底して論理的に筋道を立てて考えるのだから、集中力と忍耐力、将棋というゲームを続ける持続力が必要なのだという。

なにやら将棋の本に目を落としていた、白衣にジーパンの人が顔を上げて、アタシたちをクリッとした大きな瞳で見た。

「ん? 君たち、入部希望かな?」

「はい、清恒きよつね先生」

隆と、このいかにも科学者って感じの先生、顔見知りだったんだ!

アタシが驚いた顔をしていると、隆が教えてくれる。

「英語担当の先生なんだけど、授業終わりに質問してたら、将棋が出来るって知ったんだ」


「高坂君、強いからなー。 そんな子が、勧誘したとなれば、かなり強いんじゃない?」

清恒先生は、好奇心に満ちた表情でアタシを見てくる。

それは、純粋に欲しいモノを見つめる子供のような顔だった。

それは、陸上で自分自身と闘っていたときとは違う。

相手がいるからこその、一緒に物語(棋譜)を作れるというワクワクも混じっていた。


「久留米さん、一局指してみるかい」

Re: コマオト ( No.4 )
日時: 2021/04/21 03:24
名前: ちぇりお (ID: UIQja7kt)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

清恒先生は、見た目はカッコいいがーー

「うーん、ここは両取り(相手の駒を二つのうち、どちらかは確実に取れること)ヘップバーンなんだよなぁ」

とにかくボヤく。

俺も、最初はびっくりした。

英語の授業のときは、分かりやすくユーモアを交えて面白いのだが。

将棋を指すときは、寒いギャグしか言わない。

将棋は頭脳の格闘なので、対局が始まれば、観戦者からどんなに良い手が見えたとしても口出しは厳禁である。

言うなれば、それはテストでモロにカンニングするようなものだから。

志乃には、一通り駒の動かし方は教えたが、戦術に関しては全く口を開いていない。

将棋は、まず自分の思い付くままにやってみて、負けたとしても、勝ったとしても、勝負のノウハウを対局者と検討してゆくものだと思うからだ。

「参りました」

志乃が、投了(負けたときの宣言)を告げる。

清恒先生が、やんわりとお辞儀をした。

「久留米さんは、久留米さん自身の戦力を自陣の中で動かすことが多いね。 守りに徹したいのかな?」

「まだ戦術が分からないんです......」

シュンと肩を落とす志乃。

「将棋の負けは、対局の事でもあるけれど、将棋に対する情熱が冷めたときが、本当の意味で負けなんじゃないかな?」

清恒先生は、快活に笑った。

「おっと、もう下校時間か。 気が向いたら、またいつでも顔出してね」

対局以外の清恒先生は、優しいのだ。



体験入部の日、俺と志乃は、一緒に下校していた。

「将棋で勝ちたい! 負けっぱなしは悔しいもん!」

「ホント、負けず嫌いだよなぁ」

俺は、苦笑した。

志乃は、言う事を躊躇ためらっていたが、

「隆、本屋に行こう!」

「ティーンズ雑誌でも見繕うの? まぁ、俺も欲しい本あるから良いけど」

「初心者向けの将棋本ってないかな?」

「俺が、将棋覚えたときの、かなり分かりやすいオススメの本あるからあげようか?」

志乃が、顔を輝かせた。


「本だけじゃ分からないだろうから、隆も教えてよ」

Re: コマオト ( No.5 )
日時: 2021/05/09 22:40
名前: ちぇりお (ID: JbPm4Szp)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

昼休み、社員食堂にアタシはいた。

ラーメンを食べながら、スマホを見ている。

「頑張れ......!」

画面には、和服のりゅうと対局相手、将棋盤が映る。

お茶の間でも有名なプロの対局相手が、隆なのだ。

「先輩、座って良いですか?」

同じ部署の後輩が声を掛けてきた。

「うん、良いよ」

スマホに集中してたせいで、そっけない返しになったことを自覚する。

「て......あんた、相変わらずよく食べるね」

「先輩が少食なんですよ」

後輩の持つトレイには、サンドイッチとカレーがのっている。

「きいてくださいよ、先輩! 先日、彼氏の家に行ったら、部屋がアニメ系のグッズばっかりだったんです......ウチもアイドル好きだから人のこと言えないんだろうけど。 二次元は、中学までと思っているんですが、どう思います?」

将棋観戦を邪魔されたことで、内心、不機嫌になりながらも、後輩の相談を真剣に受け止めることにした。頼れるキャリアウーマンで通したいのだ。

「アタシも、二次元に多大な期待をするのは中学までだったから、あんたの気持ち、わかるよ」

現実にも、期待してたんだけどね。

アタシは、隆が今でも好きだ。

多分、ずっと。

イヤホンから、将棋の解説が隆の実績についてコメントするのが聞こえていた。


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