複雑・ファジー小説
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- シャルル バルーン
- 日時: 2021/06/24 16:48
- 名前: 萌 (ID: wxZ0SJGK)
今回はバルーンのシャルルを元に書いてみました!
二作目です!
一作目のベノムも読んでみてください!
頑張って作りましたが、まだまだ初心者なので、温かい目でみてください!
・坂本 晴樹(さかもとはるき)
・新谷友希(にいやゆき)
「別れよう」
泣きながら彼女が告げる。
「…なんで?」
「……」
理由を聞いても黙っている彼女をみて、責めるのは間違ってることに気がついた。
泣きたいのはこっちなのにとは思いながらも、泣きながら別れを告げる彼女を責めることは出来ない。
もういいか。どうでもいい。
「わかった。」
友希との別れ話を終えてふたりで帰ってる時、僕の心はモノクロだった。
持っていた小さな花束はこっそり道端に捨てた。
周りの物や建物はカラフルに彩られているが、僕の心は虚ろなままだった。
違うか、元からだ。僕の心が虚ろで、モノクロなのは。
今に始まったことじゃない。
もし、自分の心が鮮やかに色づくことができたのなら。
例えば、深い青色のような悲しみさや、辛さで染まる時が来たのなら。
僕との別れを涙を流して悲しむ友希のように悲しめるのか。
心をカラフルな色でいっぱいにしているあなたを目前にしても、自分の心は色の生まれる気配すらない。
友希と別れる悲しみと、自分の心に色の生まれることのない悲しみ。
後者の方が悲しいと思ってしまう自分が嫌い。
そんな自分が、自分の心はさらに虚ろにしていく。
友希と愛を確かめ合ったり、これからの未来を語り合った日々は遠く昔のこと。
まるで赤の他人のことのように、ぼんやりとしか思い出せない。
鮮やかに色付いた世界に生きる友希とと、虚ろな心を持つ事しかできなかった僕。
友希との間にできた小さな溝は今では修正の効かない大きな溝になっていた。
せめて、最後にできる思い出くらいは笑顔で。
僕と友希にできる最後の思いやりはたったそれくらいだった。
次の日、僕は起きると、昨日のことを思い出し、ベッドに寝転がっていた。
友希との別れを経験した僕。
行く先々で隣にいるはずだった人。
でも出てくる思い出は幸せなものばかりじゃない。
もし、僕と友希が一緒にいただろうと想像した未来の友希の顔。
喜ぶ顔や嬉しそうな顔だけでなく、悲しい顔や嫌そうな表情を浮かべた顔もあるだろう。
特に別れの間際には、後者のような表情も多かった。
でも時間が経つほど、そんな友希のことは記憶から薄れていく。
でもそれはきっと、友希の中の僕も同じなんだろう。
僕は友希と一緒にいた日々の中で言えなかった言葉がたくさんあった。
あの時、ああ言えば良かった。
あの時、ああすれば良かった。
そんな感情がたくさん込み上げてくる。
でも今更、そんなことを友希に言う気はない。
それを後悔する日が来たとしても構わない。
恋という言葉にはきらきらした物語が付きまとう。
でも実際の人と人との付き合いなんて、そんな嬉しい物語ばかりじゃない。
言葉にはできないような痛みや苦しみ、そして2人ではもうどうにもならないお互いへの感情。
友希が本当に好きだったのは、僕ではなく僕を好きな友希だったのか。
相手のことを思いやっているように見えて、自分のしたいことだけをしている。
僕と友希の恋も、もしかしたらそうだったのかもしれない。
それでも、そんな友希との恋で僕に何かが残るのならば、それが悲しみであろうと痛みであろうと、友希が教えてくれたものに変わりはない。
僕は友希とは住む世界が違うんだ。
でも住む世界が違うからこそぼくは友希に惹かれたんだ。
友希の世界を「わかったフリ」をしていたんだ。
騙し合うなんて馬鹿らしいよな。
だから、僕たちはどちらにも責任があるんだ。
そうだろう。互いのせいで今があるから。
友希と僕が一緒にいた日々。
その日々は、心が虚ろな僕にとっては幸せな日々だけではなかった。
心のどこかで生きる世界が違っているとわかっていた。
だからこそ、僕の世界に友希を付き合わせる毎日を心苦しく思っていたんだ。
日増しに増える僕なんかに友希を付き合わせる後悔。
こんな僕は、友希にどう見えているのだろうか。
相手のことを想うはずが、いつしか互いに自分の心配ばかり。
僕と友希の日々が薄れゆく今、僕は2人が別れてしまった訳に気づけた。
僕は哂った。
自分の愚かさに。
人間の愚かさに。
さよなら。友希。
友希と共に過ごした日々。