複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 消費期限は24時間
- 日時: 2021/07/21 20:08
- 名前: 夜踏 ◆X8aOBZob7k (ID: yrys6jLW)
人の記憶とは脆くて不確かなもので。過去に起こった事象が本当に事実なのか、なかなか確定しにくい。
そのとき感じたことなんかは、負の思い出は強くのことっても良い思い出は刻と共に崩れ落ちていく。
たとえ本人が忘れたくないと思っていても。
この世界の人間はそれがとても顕著である。
この世界の人間は、
「あなたが私のお母さんとお父さんですか?」
約一日しか記憶を保持できない。
「私、誰なんでしょうか」
生きた記憶を失い
「私とあなたは親友だったらしいんですよ」
失った記憶を手繰り寄せ
「今日のことを忘れたときのために記念写真撮りましょう!」
崩れ落ちる記憶を確固たる証拠として残し
「私そんなことしてないです! 昨日のこの写真にいる私は今の私じゃないです!」
過去の自分を拒絶する
- Re: 消費期限は24時間 ( No.1 )
- 日時: 2021/07/21 20:10
- 名前: 夜踏 ◆X8aOBZob7k (ID: yrys6jLW)
一話「消えた外線」
朝、目が覚めてまず頭にしみるのは
「なに……?」
困惑ただ一つ。
見上げれば白い天井。見回せば勉強机があって、横に黒いリュックサックが置いてある。勉強机と椅子にはゲーム機が雑に置かれている。
自分が体重を預けているのは、青いベッドで。
――ここがどこか分からない。
目下の手を見つめて、ぐっと力を入れて拳を握り、力を緩めて手を開く。自分の体の動きを確認する。
ベッドから降りて自分の着ている服を見下ろす。
勉強机にあった写真立てのガラス板に反射して人が映っていた。そいつは僕と同じ動きをしていて、中の写真に写っている男と同じ奴だった。
――自分が誰かわからない。
こいつは僕なのだろうか。
「鏡……洗面台……」
鏡に映る奴は確実に自分だ。反射して映っているあいつが僕なのかどうかは鏡を見ればすぐに分かることだ。
部屋を出ようとドアの前に行ったところ、ドア下に何かノートが落ちていた。
落ちていたというか、置かれていたというか。
確実に見られるようにドア下に挟められている、といったほうが合っている気がする。
「『懐川泉。お前の記録書』……?」
そのノートを拾って表紙を見れば、黒いペンでそう書かれていた。
――――――――
短し
Page:1