複雑・ファジー小説
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- ボディーオペレーション 短編
- 日時: 2021/08/11 00:18
- 名前: 梶原明生 (ID: iTqIkZmq)
あらすじ 新宿署管内で起こっている奇怪な連続自殺案件は、ただの偶然で片付けたい本庁側と、殺人事件ではと疑惑に思う所轄とで軋轢が生じていた。そんな中、ネットの書き込みに「まじ警察ムカつく。ボディーオペレーション様、どうか殺して。」「暴走運転の爺いマジ殺して。」と書いていたために、ボディーオペレーションと名乗る男が犯行予告を打ち出した。新宿署の寺川刑事は何としても阻止しようとするが、警察官は50人以上が拳銃自殺をはかり、犯罪者もまた、寺川の目の前で次々飛び降り、自傷自殺を図って果てる。一体なにが起こっているのか。寺川にある女性からこんな話を聞かされる。「ボディーオペレーションとは私が開発した人体操作装置のこと。その装置を奪われた。」かくして寺川は彼女と事件の真相に迫っていく。近未来に起こりうるマッドサイエンスアクション。
- Re: ボディーオペレーション 短編 ( No.1 )
- 日時: 2021/08/13 15:58
- 名前: 梶原明生 (ID: 8MLsWoCW)
「予兆」
非常線を二つ折れ手帳で入ってくるスーツの男がいた。「あ、どうもお疲れ様です。袈裟さん、またですか。」「おう寺川か。そうなんだよ。全く、これもコロナの余波かな。失望して飛び降りか。これで30件目だぞ、異常と言うか何と言うか。」老練な刑事は眉をひそめた。寺川は35才の中堅刑事で新宿署に配属になったのは5年前。袈裟に向かって鑑識官が伝える。「鑑識終わりました。どうぞ。」「あ、こりゃどうも。」「俺、上行ってきていいっすか。」「おお、何か閃いたか。」「いや、何となく。」「たしか上な階には目撃者が事情聴取受けてるはずだ。」袈裟に手を挙げてにこやかに答えつつもう向かっていた。そのマンションの階には女性警察官に支えられて刑事に話をしていた女子高生がいた。「あ、寺川さん。」「後は俺が聞くから。」「はい。」若い刑事は退散していった。「申し訳ないんだけど、さっきの刑事に話したこと、俺にも聞かせてくれないかな。」「どうして誰も信じてくれないんですか。真帆は真帆は・・・何かに操られて、助けてって廊下の向こうの踊り場まで。・・・」また泣き出す女子高生。「操られたって言ったよね。それはどういうこと。」「わかりません。でも、本当に引っ張られるように踊り場まで・・・」「わかった。信じるよ。珠田、念のためこの部屋に警察官付けるように指示してくれ。」「わかりました。」寺川は再び視線を女子高生に戻して肩を掴んで言った。「気を落とさないで。君のせいじゃない。」その頃、新宿署の記者会見では本庁の刑事も参加する異例の事態となっていた。「えー、本件に関しましては、鑑識等の結果、事件性はないものと判断いたしました。」それで納得いくはずのないブン屋陣。「既に
30人の人間がここ三日間で飛び降りしてんですよ。ありえないでしょ。」「新手のテロじゃないんですか。」「誰かが意図的に殺人事件を起こしてるんじゃないんですか。」次々野次が飛び交っても本部長の意向は変わらなかった。別室にはいった本庁の刑事が囁やく。「わかっていると思うが、くれぐれも自殺ということに。」「わかってますとも、鑑識が判断したわけですから、覆りませんよ。」そこへ刑事の一人が駆け込んでくる。「本部長、大変なことに。」「何、犯行声明だと。」「はい、しかも自殺の詳しい内容まで挙げていて、自分がやったとネット上に。」言われて早速パソコンを開いて見てみれば、確かに掲示板やYouTube等に一斉に挙げられていた。そいつの名は「ボディオペレーション」・・・「やあ、無能な警察諸君。結局自殺として片付けたね。もう少し骨があると思ったんだが。あれは紛れもなくわたしの粛清作品だよ。彼等彼女等に何の罪もないのに、と言いたいんだろ。違うね。例えばそう、最近殺したあの女子高生。彼女は清純無垢で真面目な女子高生だと周りからも親しまれていたそうだね。そうかな。実際はクラブ通いに、不純異性交友していたような阿婆擦れだった。それでも罪はないとでも?」それを署に戻っていた寺川も見ていた。手にしていた空き缶を握りつぶす。「粛正作品だと、何様のつもりだ。」しかし怒りも束の間。今度は犯行声明から、犯行予告に切り替わる。「明日、午後三時に書き込みがあったいくつかの殺してほしい罪人を処刑する。手始めは新宿で暴走運転して小学生とその父親を轢き殺した上級国民、木田魚勝80歳を粛正する。」この声明により、色めきたつ捜査本部。寺川が外に出ようとした時、美しい女性と出会った。聡明でもあることは雰囲気に出ていた。「あ、刑事さんですか。」「そうですが、何か署に御用ですか。」「今報道されている連続自殺。あれは私が開発した研究資料が原因かも知れないんです。」「何ですって。」・・・続く。
- Re: ボディーオペレーション 短編 ( No.2 )
- 日時: 2021/08/15 16:40
- 名前: 梶原明生 (ID: M.fbnnZK)
「戦慄」・・・急遽、袈裟刑事と共に事情を聞くことに。まるで最新のオフィスのような取調べ室に案内した。「申し遅れました、私は帝都大学で研究員を勤めております。加持空見と申します。」「加持さん、ですか。わたしは寺川と言います。先ほど研究資料がどうとか言われてましたが。」「はい。ボディオペレーションとは、簡単に言えば、その名の通り、体の動きを同期化して自分と同じ体の動きを他人にさせることができるんです。例えば・・・」加持はペンを握って右手を寺川達にかざした。「これを私が右にうごかしてもあなたの腕は私を真似ませんよね。」袈裟と見合わせながら答える。「ええ、まぁ普通そうですよね。」すると加持は何やらノートパソコンと健康器具のようなバンドをとりだした。「このバンドを右腕に巻いてください。」言われるまま巻いてから驚いた。意思に関係なく、寺川の右手が加持と同じ動きをするではないか。袈裟も信じられなくて試すが同じだった。「これは・・・」「人体の筋肉神経に特殊な電気信号を送り、私の動きと同期化させたんです。実はこれは私が開発したものでして、こうすることにより、本来リモートワークできない業種までできるようになり、消えゆく伝統職人の動きをデータ化すれば、誰しもがすぐ職人になって再現化が可能になる。それが目的で開発したのに。・・・」「分かりました。それでは盗んだ犯人に心当たりはありますか。」「一人だけ。かつて大学生だった頃、同じ研究をしていて実験中に被験者の7歳の男の子に死者を出す事故を起こして大学から追放された人が。」「名前は。」「祈祷境内。私と同期ですからいま29歳のはず。」この情報に色めき立つ捜査本部。早速緊急配備を敷くが、八年前に行方を眩ませてから消息は皆無だった。何の進展もないまま翌日昼三時を迎えようとしていた。これまでの被害者に共通しているのは、やはりあのバンド。前日にキャンペーンで当たったとかで送られてきたらしい。健康器具とかの名目で。それを回収し、後は犯人を待つのみ。対象者が見える位置に潜んでいるはずだ。寺川は袈裟や加持とともに固唾を飲んで待機した。が、しかし。「何・・・」次々目の前で対象者や警護の警察官まで自殺を開始した。・・・続く。
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